6月21日、「京の川の恵みを活かす会」が京都市街を流れる鴨川の丸太町落差工(落差工とは河床や河岸の洗掘《せんくつ》を防ぐために落差を設けた横断構造物)に仮設魚道の設置を行った。
「京の川の恵みを活かす会」は、鴨川、桂川、宇治川、淀川流域の自然の恵みを豊かにし、これを活かしていくことに賛同する団体や個人で組織された会だ。淀川流域のアユは、冬は大阪湾で育ち、春になると大阪の淀川をのぼり京都の鴨川や桂川まで遡上する。
仮設魚道設置の目的は、天然アユなどの遡上を手助けする事だ。
鴨川でアユの遡上を妨げている落差工は複数あり、「京の川の恵みを活かす会」(以下、活かす会)では丸太町落差工のように、遡上を大きく阻害している場所に仮設魚道の設置を行っている。
活かす会の会員・サポーター、賀茂川漁協、京都市職員、京都府職員、大学生など多彩な顔ぶれ
当日の天候は晴れ。当初の予定日が増水で延期され、平日の作業となった。午前9時半に丸太町の鴨川西岸に集合し設置作業を開始した。
参加者は活かす会の会員・サポーター、賀茂川漁業協同組合員、京都市職員、京都府職員、大学生、京都市環境保全活動の団体、木材業者など約15人。簡単な打ち合わせの後、作業に取り掛かった。
まず、魚道の設置作業をしやすくするため、落差上流側にブルーシートや土嚢を敷き、魚道設置場所に流れ込む水量を減らす。
その後、トラックで運ばれてきた木材を積み下ろし、設置場所の近くで組み立てが行われた。
木組み階段式箱型魚道。角材を組み合わせて作られる。魚道の入り口は横向き!
この魚道は「木組み階段式箱型魚道」と呼ばれる、幅は約4.0m、奥行きは約2.1m、高さは1.1mの箱型の魚道だ。北山杉の角材のパーツを組み合わせて作られる。
通常の魚道は落差に対して下流向きに設置されるが、この魚道は落差工に沿って横向きに設置される点が大きな特徴になっている。
入口が横側にある理由は、アユが魚道の入り口を見つけやすくし、遡上数を増やすためだ。
川幅の広い落差工では、魚道を下流向きに設置すると、川幅に対して狭い魚道の入り口を遡上中のアユが見つけにくい。このため、アユは落差工の下で右往左往することになり、魚道が十分に機能できない。
そこで、魚道の向きを川の流れと直角に曲げて魚道の入り口を落差工直下に横向きにすることによって、アユが魚道の入り口を見つけやすくしている。
また、魚道の内部は7段の階段状になっており、オモシとして石を敷き詰める。魚道の横側から入ったアユは魚道内部の階段状の部屋を上り、右折して落差工の上流に達する仕組みだ。
活かす会が設置する魚道は、工学的な水理計算だけに基づいて作られる魚道と異なり、魚の行動生態をしっかりと取り入れて設計されており、毎年改良も続けられている。
参加者は汗だくになりながら作業を続けた末、魚道の入った木箱を鉄骨で落差工の天端(てんば・ダムや堤防の一番高い部分)に引っ掛けて固定し完成となった。
鴨川ではこの数年、台風や大雨で何度も激しい増水に見舞われたが、同会の設置した魚道は一度も流された事がない。しっかり固定されている上に、増水時にも箱型魚道の天井を水が流れ、魚道内部に水流による力が掛からない設計になっているからだ。
最後に上流側で水流を堰止めていた土嚢やブルーシートを撤去し、魚道に水流を開通させ、正午過ぎに作業を終了した。
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