【第12回】「天然もん」が内水面漁協を救う!~淀川水系・都会の川の自然再生(2)~

スペシャル ニュース

京の川の恵みを活かす会とは?

鴨川や桂川など淀川流域の自然の恵みを豊かにし、これを活かしていくことに賛同する関係団体・個人で構成された連携組織(ネットワーク)。

会の活動は年を追うごとに幅を広げ、たくさんの仲間と一緒に「見て楽しい、遊んで楽しい、食べて楽しい」を未来へつなげていく活動を目指している。平成23年(2011年)3月に設立され、ちょうど10周年を迎える。

主な活動内容

•天然アユ等を遡上させるための魚道設置、遡上観察、遡上数調査
•アユの産卵場調査と整備
•ゴリやハエの産卵場造成や仔稚魚の分布調査
•魚のすみかづくりのための竹蛇籠や聖牛などの伝統河川工法製作設置講習会
•川の恵みを活かすフォーラムや報告会などの開催
•川の恵みの食味体験会や環境イベントによる普及啓発活動
•学校の総合学習や課外活動などのお手伝いなど

竹蛇籠(たけじゃかご)の設置風景。大きな竹籠に石を詰めた竹蛇籠は中聖牛の重石であり、魚たちの着き場や隠れ家にもなるという
中聖牛(ちゅうせいぎゅう)の試験施行。河床低下現象で流れが単調になり、水際とヨシ原の乖離が見られるようになっている。増水してもヨシ原まで水が届かず、ワンド消滅の要因にもなっている。日本の伝統的河川工法である聖牛は、土砂の堆積を促進する透過型水制の一種。河床低下問題を解決すべく、静岡県大井川でこの工法を継承する原小組の指導の下、NPO法人やましろ里山の会(農業関連の団体)と、活かす会が中心になって2017年から木津川の玉水橋下流に合計12基の中聖牛を設置した。まだ試験施工の段階だが、中聖牛の後ろ側には土砂が堆積し、増水時にワンドやヨシ原への導流が期待されている
活かす会の活動はすべてイベント形式であり、興味がある人は自由に参加できる。計画、告知、報告が行われ、活動リポートをまとめた冊子も発行している。活動内容や目的が明確で、河川環境や川魚に興味がある人には活動全体がカリキュラムとなっている。今回はスペースの都合上で紹介できなかったが、京おばんざい研究会の藤掛進代表は活かす会の副代表も務め、食の面から川魚の魅力を発信している。川魚を食すことは川魚の価値を高めることに繋がり、京都に根付いた川魚の食文化をテーマにまた別の機会に取材する予定だ

京の恵みを活かす会は、漁協の存続危機からスタート

賀茂川漁協が解散を検討していたとき、竹門先生は「天然もんを増やす」ことを漁協や京都府へ提案した。解散の理由が義務放流経費の負担による赤字経営にあったからだ。放流で資源を確保するのも自然再生産で魚を増やすことも保護増殖義務を果たすことにおいては同じと考えた。

ただ、天然魚を増やす努力量を数値で表すことは難しい。魚道の設置や整備を行うだけではなく、アユの遡上数調査を実施しなければならなかった。桂川水系の最下流にある龍門堰を管轄する京淀川漁協にも遡上数調査に協力してもらえ、「天然もんを増やす」プロジェクトは同水系の保津川漁協、宇治川漁協にも賛同してもらえた。

「天然もん」が賀茂川漁協を解散の危機から救い、同水系の近隣4漁協は活かす会の主要メンバーになっている。河川環境に関心がある人にとって、「天然もん」というキーワードは大きな価値を意味するといえるだろう。

(了)

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