「好釣り場は釣り人と漁協の距離が近い」。新たな名所!信州犀川隠密ハウス
犀川の河畔にある築300年の古民家が久林誠治氏の活動拠点だ。江戸時代に建てられ、明治18年に養蚕業を始めるときに2階を増築したという記録が残っている。その名は「信州犀川隠密ハウス」。ここでの久林氏の肩書は「館長」だ。
もとは造り酒屋で、酒蔵は久林氏の作業場、母屋の1階は釣り具の工房兼、釣り仲間が集うステキな社交場になっている。
初めて犀川へ出かけたときは、ぜひ隠密ハウスを訪ねて館長のアドバイスを受けることを勧めたい。
秋の恒例「信州犀川・弧月釣り大会」
昨年で第6回を迎えた「信州犀川 弧月釣り大会」の参加者は100名以上を数える。実行委員会の代表は久林氏だが、「主役は参加者」を謳い、メーカーやクラブなどの垣根を越えて全国から本流釣りファンが集まってくる。
前回のこのコーナーで紹介した安曇川廣瀬漁協しかり、釣り人から支持され、黒字運営をしている漁協は、漁協スタッフと釣り人の距離がとても近い。常に釣り人と接して情報収集、釣り人への情報発信がしっかりとできている。
漁協スタッフの高齢化が進む中、久林氏のようにベテランの釣り人が漁協スタッフを務めるケースは今後ますます増えてくることが予想される。良い仕事をする漁協スタッフが1人いるだけで釣り場環境は大きく変わる。優秀なリバーキーパー、レイクキーパーを育て、サポートしていくことを釣具業界団体に提案したい。
【産業管理外来種の考察】地域によって差があるニジマスの活用
生態系に影響を及ぼす恐れがある外来種であっても、水産分野において重要な魚種は、適切な管理をしたうえで活用が可能な「産業管理外来種」として位置付けられている。平成27年3月に国が策定した「外来種被害防止計画」等に基づき、ニジマス、ブラウントラウト、レイクトラウトの3魚種はこの産業管理外来種に指定された。
ニジマスは明治10年にアメリカから移入され、その後養殖や放流が長年行われてきた。今回取材した犀川殖産漁協のように漁業権免許を取得している釣り場は積極的にこの魚を活用しているケースが多い。
そしてニジマスが漁業権免許の対象になっていない場合は、放流を自粛するように指導している県もあれば、漁業権魚種に準ずる扱いをしている漁協もある。
ニジマスは内水面漁業の将来を左右する魚種。観光資源にもなり得る
ニジマスの価値観は釣り人によってもさまざまだが、大型になる上に養殖のコストパフォーマンスにも優れ、さらにルアーへの反応がいい。ニジマスは内水面漁業の将来を左右する魚種であり、犀川のように観光資源になり得ることも考えられる。
水産庁は産業管理外来種の管理に関するガイドラインをWeb上で公開しているが、まだまだニジマスの活用は地域差が大きい。ニジマスを放流したくてもできない河川も多く、犀川のような地域観光にも貢献できる魅力的な釣り場を作るためにも、内水面漁業関係者と釣り界は今一度「産業管理外来種の扱い」を議論すべきではないだろうか。
(了)
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