フリマに出品した「新品とほぼ同様」のリールに「傷があった。返金しろ!」とクレームが!【弁護士に聞く】

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「釣具業界の法律相談所」は、釣具業界でも起こる可能性のあるトラブルについて、弁護士の先生に聞いて見解や対処方法を紹介するコーナーです。

今回は新品同様と表記して出品した釣り具に「傷があるじゃないか!」とクレームと返金を要求された件について、弁護士の先生にお聞きしました【※質問は架空の質問です】

新品同様の「同様」とは、どの程度なのか?

弊社は実店舗の釣具店の運営と、フリマサイトにも出店している会社です。先日、弊社が出店しているフリマサイトで商品を購入されたお客様とトラブルになってしまいました。

弊社は大手フリマサイトに、実店舗で展示に使用していた商品や、売れ残った商品の一部を出品しています。フリマサイトには、商品の状態を示す項目があり「新品」、「新品とほぼ同様、目立った傷などなし」、「多少の傷や汚れ、使用感あり」、「傷や使用感あり」、「ジャンク品」等があり、それぞれ出品する際に、出品者が状態を選んで出品します。ここで選ばれた商品の状態は、当然、商品ページに表示されますので、お客様が購入される基準の1つになっています。

フリマで購入してもらったお客さんとトラブルに…

弊社は実店舗で長らく展示していたリールを、このフリマサイトに出品しました。実際に釣り場で使った事はありませんが、多くのお客様が店頭で触っており、細かな傷もありましたので、商品の状態を「新品とほぼ同様、目立った傷などなし」を選択し、出品しました。

後日、このリールをフリマサイトで購入されたお客様からクレームが入りました。その内容は「商品の状態が『新品とほぼ同様、目立った傷などなし』と書かれていたが、リールの下部に目立つ傷があった。新品同様では全くない。騙された。返金して欲しい」というものでした。

さらに、このお客様は、弊社が出店しているフリマサイトの運営事業者に「消費者を騙す悪質な出店者だ」と通報。またフリマサイトの当店の評価にも「ネットでお客さんに悪い商品を買わせて儲けている最悪な店」と、事実と異なる悪評価を書き込んでいる事が分かりました。

商品の写真は、商品の紹介ページに複数枚掲載していたのですが、リール下部が写ったものはありませんでした。ただ、商品の状態は弊社も出品前に必ず確認しています。目立った傷があれば、当然、そのように表記します。そのリールに細かな傷はありましたが、目立つ傷はありませんでした。恐らくほとんどの人が見て、目立つ傷はないと判断されると思います。

そこで、弁護士の先生に相談です。

まず、弊社はこのリールの購入者の要求通り、返金に応じなければならないのでしょうか。また、「目立つ傷」の基準は人によってある程度変わる事もあると思いますが、どのように判断すれば良いのでしょうか。

もう1つ、「ネットでお客さんに悪い商品を買わせて儲けている最悪な店」というのは事実と異なりますから、当店への悪い評価の書き込みも削除して欲しいと思っています。フリマ運営事業者に相談しても「購入者の方が納得しなければ対応は難しい」と言われてしまいました。お客様に削除してもらうには、どのように対応すれば良いでしょうか。回答をお願いします。

※質問は架空の質問です。実際の業者等とは一切関係ありません

【弁護士の回答】返金する義務を負わない可能性が高い

フリマサイト。出品する側も注意が必要だ(写真と本文は関係ありません)

御社は、フリマサイトで出品していたリール下部に傷があったとして、リールの購入者(以下「顧客」といいます。)から代金返金を求められています。御社は返金する義務を負うでしょうか。結論として、御社は返金する法的義務を負わない可能性が高いでしょう。順にご説明します。

フリマサイトでの商品の売買は、民法上の売買契約(民法555条)にあたります。そして、もし売った商品に不備があったとして売買契約が解除されると、出品者は顧客から受け取った代金を返金する義務を負います(民法545条1項)。 ここでの「不備」とは、「売った商品が契約で合意された品質と異なっていること」をいいます。そこで、商品がどのような品質のものとして出品されていたかが問題となります。

この点については、①商品説明文、②商品写真、③中古品であることなどを基準にして総合的に判断されます。参考になる裁判例として、ネットオークションでバッグを買った人が、バッグに汚れがあったとして返金を求めた事案があります(東京地方裁判所平成27年12月11日判決)。このケースでは、商品説明欄に「新品同様・展示品」「使用感見られず新品同様です。状態は写真を見てご確認ください。」との記載がありました。裁判所は、①商品説明文、②商品写真、③中古品であったことを踏まえて、商品に不備がなかったと判断しました。そこで、本件でも同様に検討します。

新品同様→よく見ないと分からない程度の傷や汚れがある状態

まず、御社は、「新品とほぼ同様、目立った傷などなし」という項目を選んでリールを出品していました。ご質問のフリマサイトには、「新品とほぼ同様、目立った傷などなし:よく見ないとわからない程度の傷や汚れがある」などの説明文があると考えられます。

実際、「メルカリ」でも、出品者が商品状態を設定することになっており、「新品、未使用:購入してからあまり時間が経っておらず、一度も使用していない」や「目立った傷や汚れなし:よく見ないとわからない程度の傷や汚れがある」といった説明文があります(令和7年3月現在)。

ご質問のケースでも、フリマサイトの説明文を基準にして、「新品とほぼ同様、目立った傷などなし」とは「よく見ないとわからない程度の傷や汚れがある」状態と考えるのが通常です。

次に、御社は、商品紹介ページに複数の商品写真も掲載していました。フリマサイトの商品写真は、出品されている商品の品質や状態を視覚的に伝えるためのものです。そのため、商品写真も基準となります。

この点、御社が掲載していた商品写真にはリール下部が写っていなかったとのことです。しかし、リールが長らく実店舗で展示されていたことがわかるような写真であれば、写真では見えない部分も含めて小さな傷などがあると考えるのが通常でしょう。

さらに、出品者自身による商品説明として、「このリールは実店舗で長らく展示していたものです。実際に釣り場で使ったことはありませんが、多くのお客様が店頭で触っており、細かな傷もあります。」などの記載があるかもしれません。こうした記載も基準となります。なぜなら、「実店舗の展示品であれば、どこかに傷がついているかもしれない」と考えるのが通常だからです。

以上の基準を踏まえると、「新品とほぼ同様、目立った傷などなし」とは、「一般的な展示品と同様、よく見ないとわからない程度の傷や汚れがある」状態であるといえます。そのため、御社が出品したリールも、「一般的な展示品と同様、よく見ないとわからない程度の傷や汚れがある」商品として販売されていたといえるでしょう。したがって、「一般的な展示品と同様、よく見ないとわからない程度の傷や汚れ」があるだけであれば、不備には当たりません。

そして、御社が販売したリール下部には、ほとんどの人が見ても目立つ傷はないと判断するような傷しかなかったとのことです。そうであれば、御社が販売した商品には不備があるとはいえないでしょう。

よって、顧客はリールの不備を理由にして売買契約を解除することはできないため、御社は、顧客の返金要求に応じる義務はありません。

なお、詳細は省略しますが、顧客は、リールを受け取った時点でリール下部に目立つ傷が入っていたことを証明しなければなりません。もし顧客がリールを受け取った時点でリール下部に目立つ傷があったことを証明できない場合は、やはり顧客の返金要求に応じる必要はありません。

返金要求のクレーム対応についての判断基準と対処法は以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。

参照:返金要求のクレーム対応について判断基準と対処法を解説

口コミ削除を求めるためには「名誉権の侵害」である必要がある

次に、顧客は、フリマサイトに「ネットでお客さんに悪い商品を買わせて儲けている最悪な店」との口コミを投稿しました。悪評価の口コミ削除を求めるためには、問題となっている口コミが、御社に対する「名誉権の侵害」である必要があります。

では、どのような投稿が「名誉権の侵害」にあたるのでしょうか。結論から申し上げると、口コミに書かれている事実が御社の社会的評価を下げる虚偽の内容であれば、「名誉権の侵害」にあたります。過去の裁判例では、商品レビューに「有名ブロガーに効果がない良くない製品を自分達の私利私欲の為だけで宣伝させているのでは!?」などと投稿された事案で、不当な宣伝手法で内容虚偽の宣伝を行って顧客を騙すような企業であるとの印象を与えるから、名誉権を侵害すると判断されています(東京地方裁判所令和2年11月5日判決)。

ご質問のケースについて検討すると、「ネットでお客さんに悪い商品を買わせて儲けている最悪な店」という口コミを一般の人が読めば、「出品情報を偽るなどして顧客を騙して、粗悪な商品を売りつけている悪質な業者である」と考えるでしょう。このような印象を持たれると、御社の社会的な評価は下がります。

また、御社は出品情報を偽るなどして顧客を騙しているわけではありません。御社が出品情報を偽っていないことは、フリマサイトでの出品状況や実際に販売した商品状態などから証明可能でしょう。このように、ご質問のケースの悪評価の口コミは、御社の社会的な評価を低下させる虚偽の内容といえます。よって、御社は「名誉権の侵害」を理由に口コミの削除を求めることができるでしょう。

次に、削除を求める方法としては、①顧客に直接内容証明郵便等を送って削除を求める、②口コミ削除を求めて訴訟を起こす、などが考えられます。顧客が自主的に投稿を削除する可能性もあることから、まずは口コミが御社の名誉権を違法に侵害しており、顧客が口コミの削除義務を負うことを書面で説明すべきでしょう。そのような書面を送っても顧客が削除に応じない場合は、裁判所に口コミ削除を求めて訴訟を起こすことも可能です。

口コミ削除の方法については以下のページで詳しく解説していますのでご参照ください。

参考:ネットの誹謗中傷や名誉毀損記事を削除依頼する方法

【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・小林 允紀】

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