
日差しが強くなると、それまで外出の都度着ていたコートが邪魔になり、軽装で外出するようになります。そんな季節は心も弾み、どこか旅行に行きたい気分になりますよね。
私の自宅は公園に隣接しているので、暖かくなる季節の週末ともなると、近所の親子連れや若い人たちがたくさん集まり賑やかになります。
人ばかりではなく、お魚さんの世界でも遡上や乗っ込みといった現象が見られるようになります。厳寒期は深場で越冬していたお魚さんも日差しが長くなると、行動範囲が広がり浅場にも積極的に回遊してきて活発に餌を食べるようになるため、釣りの本格シーズン開幕となります。
陸の上が暖かくなり、お出かけ日和ともなると、お魚さんの食欲も旺盛になるため、これまで冬ごもりをしていたと思われるような釣り場でも、沢山釣れるような気持ちになります。
春先に魚が釣れ出す大きな要因は浅場への回遊と摂餌量の増加
春先にお魚さんが良く釣れるようになる一番の要因は、やはり乗っ込みで浅場に回遊してくるようになることと、変温動物であるお魚さんは水温の上昇によって摂餌量(せつじりょう)が増えるからです。
しかしながら陸の上は暖かくなっても、日本の沿岸の海水温度は、年間で最も低い季節を迎えることになります
年によって、また地域によって異なりますが、2月下旬から3月上旬までがそれに当たります。そうしたことを加味して、この時期の海釣りで釣果をアップさせるためには、まだまだ海水温が低いということから、アミノ酸など誘引成分をふんだんに含んだ釣りエサを使う事が有効ではないかと思う人も多いはずです。柔らかくて食い込みの良い釣りエサを選定することが有効になるのではないか…、かつて私はずっとそう信じていました。
実際、厳寒期の厳しい状況の下で、集魚成分を駆使して良好な釣果を得た経験が幾度となくありました。ところが私が好きなクロダイと長期にわたって現地に入ってテストしたマダイは、その概念が全く通用しないことがありました。そこでその状況と理由について考えたことをまとめてみました。
クロダイのテスト結果。名人は「ボケジャコ」を使う?

清水港のカセ釣り(船をポイントまで曳いて行って固定して釣る釣り方)は江戸時代末期から行われている伝統のある釣りです。
長年続く放流事業と関係者皆様の努力により関東屈指の魚影の濃さがあり、真冬でも多くのファンが訪れます。
私は年間水温が最も低い2月下旬は集魚剤を多く入れた撒き餌と、小粒のオキアミ、渋い時はオキアミをむき身にしてみるなど、アレコレ工夫を凝らし、それなりの自信があったのですが、それとは全く異なる釣り方で好釣果を上げている名人が多数いることが分かり、不思議でなりませんでした。
その釣り方と言うのは特別なものではなく、そこそこの撒き餌を投入するまでは私と同じなのですが、刺し餌に生きた「ボケジャコ」を使用していたのです。

生きたボケジャコはボリュームと動きの両面があるためとても優れた釣りエサであることは言うまでもないのですが、この水温が低い時に…と思われる場面で他の餌を圧倒する釣果が頻繁にあります。
私は自身が使用していたアミエビを大量に混合してオマケに液体集魚剤までも追加した撒き餌と繊細な刺し餌が全く及ばない理由を暫く理解することが出来ませんでした。それから数年後に今度は山形県でマダイのテストを行うことになりました。
マダイのテスト結果。予想に反してメタルジグにヒット

このテストは山形県漁連様の協力を得て春先から晩秋にかけて2年近くに渡り実施しました。春先に行ったテストの時ですが、流し釣りと呼ばれる釣り方で、釣り針にサルエビやホタルイカ、また試作品などを装着して投入します。
船を出してくれた漁師はこのときメタルジグを使用していて、雪代が流入する冷たい海でメタルジグに食ってくるのだろうかという予想に反して、大型のマダイが次々とメタルジグに食いついてきたのです。
一方生の餌と摂餌成分をふんだんに取り入れた試作品には殆ど反応がありません。1日目も2日目も同様の結果でした。私はその時、ふとあの清水港のボケジャコのことを思い出しました。
そしてこの時期のマダイも成分よりも餌(疑似餌)のアピールが重要であるということに気が付いたのです。
そして更に水温が上昇した季節になると、メタルジグは釣果にムラが出ることが多くなりましたが、生餌ほかはコンスタントにアタリをもらうことが出来るようになりました。

その理由について私なりに考えたことは、それまでじっと深場で越冬していたお魚さんが乗っ込みを控え、一気に食欲が増えると広範囲に渡って餌を探し求めるようになります。
そんな状況下では味や匂いに頼って餌を探すことよりも、視覚に訴えるものに興味を示すのではないかということです。短時間で空腹を満たすためには、広範囲を移動する必要に迫られ、ボリュームのある餌を求め、目立つもの、動く物が標的となるのです。私の感性が鈍くなければもっと早く気が付いていたのでしょう。
釣果を上げるための餌とルアーの選択については、まだまだ解明されていないことが沢山あると感じます。
長岡寛の記事 → 長岡寛 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト
関連記事 → 【マダイを釣りたい人必読】マダイの釣果アップのヒント。図鑑からは知り得ない!? 魚の生態を基に解説 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト