魚が多く、釣り人少ないのに釣れない…。いったいなぜ?人気釣り場には魚がが集まる!?釣り人の行動で変わる魚の食性

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釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。

今回は、釣り人が使うエサによって魚の食性がどう変わるのかについて解説して頂きました。

    

釣り人の多くが良く知っているバチ抜けというのは、普段海底の砂や泥の中に身を潜めている環虫類が、交尾のために海面近くまで大挙して浮上してくる現象を指しています。

幸か不幸か釣り場に出かけた時にバチ抜けの最中に当たってしまうと、そこにいるお魚さんは、バチ抜けしているものと同様の虫エサか、それによく似た疑似餌以外には全く見向きもしなくなってしまいます。

悲惨なのは、前日など釣行直近にそれが起きたことを知らずに、タイプの異なる餌やルアーを使ってしまうとアタリが来ないことが多くあります。

お魚さんは、ひとたび食事を始めると、同じ餌を食べ続けようとする傾向があります。

これを人に置き換えるなら、暑い季節にかき氷を食べている最中、いきなり焼肉を出されても食べようという気にはならないことと共通しているように感じます(図1)。

暑い中かき氷を食べる少女のイラスト
(図1)お魚さんは、食事を始めると同じ餌を食べ続ける傾向がある。人で例えるなら、暑い中かき氷を食べている時に、いきなり焼肉を出されても食べる気にならないという現象と似ている

クロダイ釣り、アタリ全くなし。周囲を観察すると驚きの事実が…

実は、バチ抜けでなくても人為的な要因でそれに近い状態になることが頻繁にあります。

随分前の話になりますが、ある漁港でクロダイ釣りをしていた時のことです。朝から釣りをしているものの、その日は全くアタリが無いばかりでなく、お魚さんらしき反応さえも無いという状況でした。

仕方なく周囲を偵察することにしましたが、50mほど離れた場所で、海中から引き揚げた定置網を高圧洗浄機で掃除をしていたのです。網に向かって勢いよく噴射された海水は、地面を伝って港の中に流れ込んで行きます。そしてその流れ込む先を見ると、信じられないような現象が起きていました。

流れ込んだ海水に混ざっている小型の甲殻類らしきものや、海藻の破片など海中を漂っているその濁りの中心目がけて、大型のクロダイやフッコなど多くのお魚さんが、狂ったようにヒラを打って群がっているのです。

こんな場所によくもこれだけ多くの大物がいるものだと感心しながらも、すぐに作業の邪魔にならない場所に移動して釣りを始めたのですが、オキアミの刺し餌はおろか、撒き餌を投入しても全く反応がありません。結局その日は諦めて帰ることにしました。

魚の食性は人為的に変えられる!?

クロダイの産卵が終わりに近づく5月下旬になると、岸壁や岩肌に無数のカラス貝などの貝類が付着します(図2)。

岩肌に密生するカラス貝
(図2)岩肌に密生するカラス貝

そんな季節を選んで、クロダイのウキ釣りに出かけたことがあります。その場所は、寒い季節には多くのクロダイファンが訪れる釣り場です。

しかしながら、5月になると時折落とし込みの釣り師を見かける程度になってしまいます。

その釣り場の周囲の岩場にもカラス貝などの貝類がびっしり付着していて、朝方それを啄(ついば)んでいるクロダイの姿を確認しているので、間違いなくクロダイはいるはずです。

ところが、予想通りオキアミの入った撒き餌を投入し続けていくら待っても、クロダイの反応は全くありません。

5時間、6時間と経過しても反応は無かったのですが、干潮を挟んで8時間ほど経過すると、突然ウキが海中に消えていきました。

その後は立て続けに3枚ほどゲットすることが出来ました。持ち帰っても、産卵後のクロダイなので食味は今一つであることは承知していましたが、その中の1尾だけを持ち帰り、消化管の内容物を観察すると案の定、胃袋から肛門にかけてぎっしりカラス貝が詰まっていました(図3)。

そして、口に近い食道付近に2~3個のオキアミが入っていることを確認できました。

ほとんどが貝類で満たされたクロダイの消化管
(図3)ほとんどが貝類で満たされたクロダイの消化管

このことから、辛抱強さがあれば、人為的にそこにいるお魚さんの食性を(一時的に)変えてしまうことが可能なのではないかと考えるようになりました。

浅場に集まる多数のクロダイを発見!早速オキアミを投入するが…

また、釣り上げたクロダイやメジナの消化管を観察すると、例えば海藻類ばかり入っている個体と、人為的に投入したサナギばかりという個体に明確に分かれていることがよくあります。

ある日、三重県にある某漁港に出かけたところ、漁港の脇にある水路に無数の大型クロダイが泳いでいるのを発見しました(図4)。

浅場に見える多数のクロダイ
(図4)浅場に見える多数のクロダイ

「これはチャンス!」と思い、すぐに仕掛けをセットしてオキアミを投入したところ、何と泳いでいたクロダイ達は、沈下するオキアミの撒き餌を見るや否や一目散に逃げてしまいました。

その時、以前に経験したカラス貝のことを思い出し、しつこく攻めたのですがその日は全くアタリを得ることは出来ません。そこで、翌日も同じ場所で同じようにオキアミを投入して釣りをしましたがやはり前日同様、クロダイの反応は全くありません。

こうなるとこちらも意地が出て来ます。3日目も同じ場所に通うことにしました。するとどうでしょう。その日は朝一番からクロダイはオキアミに強い反応を示し、数多く釣り上げることが出来たのです。

考えてみると、その場所はとても浅くて普段とても釣れるような感じの場所ではありません。通った限りでは釣りをしている人を見たことが無い場所です。

この結果から、釣り人が少なくお魚さんが多いという釣り人にとって理想的な釣り場だからといって、必ずしも(どの釣り餌でも)簡単に釣れるわけではないということが言えそうです。

また、他の釣り場にも通った経験を総合して考えるなら、お魚さんの食性は人為的な要因によって変えることが出来ることが伺えます。

それともう1つ、普段人為的な影響が及ばない場所ほど、お魚さんが釣り人の餌に訓化(くんか)するのに時間を要することが分かります。

私自身もそうですが、可能な限り釣り人が少ない釣り場に行きたがってしまいます。しかしながら、撒き餌が多く入っている人気釣り場はそれなりにお魚さんが多く集っていますから、使う餌に悩まなくていいというメリットがありそうです。

◆長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」の連載記事一覧はコチラ

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