REAYU(リアユ)に込められた思いとは?カツイチの中川社長を取材。アユ釣りが再び盛り上がる事を目指して

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鮎ルアー特集

アユルアーで漁協が成功するための5つの条件

近年ではアユルアー(ルアータックルを使った釣りを含む)を楽しめる河川が毎年10河川前後ずつ増え続けており、近いうちに全国で100河川ほどになるという見通しだ。中川社長がリアユを始めた頃から比べると、当初の20倍、隔世の感がある。「アユをルアーで釣るなんて、とんでもない」と言う声や、「アユ釣り用のルアーを出すとは、このメーカーは何を考えているんだ」と言う声は、今では聞かれなくなった。

ただ、アユルアーが出来るようになれば、どのような河川でも釣り人が簡単に増えるわけではない。今の時代は釣り場にも必要不可欠な要素が求められるのだ。次はアユルアーに取り組んできた中川社長が語る、「アユルアーで漁協が成功するための5つの条件」を紹介する。

1・放流だけではなく、天然遡上がある河川

アユルアーで多くのアユが釣れるためには、アユの生息数が多い河川である事が重要だ。中川社長も「アユルアーより活きたオトリを使った友釣りの方が良く釣れるのは当然です。アユルアーだと友釣りの3割程度の釣果が出せれば上出来。ルアーでしか釣れないアユもいますが、そもそも追いが弱いと掛かりません」と語る。放流量にもよるが、天然遡上があり、追いが強く、アユの魚影の濃い河川がアユルアーに適している。

鮎釣りの風景
アユのストック量が多い川がアユルアーでも適している(写真はイメージ)

2・遊漁規則、釣り場へのアクセスなどをホームページで発信している

条件の2つ目は漁協がネットでの情報発信等を通じて、開放的なイメージを釣り人に伝えている事だ。そもそも、アユルアーを使って釣りをしても良い河川かどうか、専用のエリアが設定されているならば、どこからどこまでなのか。掛け鈎の制限など漁場や漁法のルールがホームページに掲載されていなければ、新規の釣り人も安心して釣りをする事ができない。駐車場の設置や場所の案内しかり、特に若い世代の誘致を行うには漁協が率先して情報発信を心掛けなければならない。

「何も情報開示をしていないのに、釣りをしていたら怒られる」。こういった状態で新しい釣り人が増える時代ではない。釣り人に色々な情報を開示して、漁協自体の閉鎖的なマイナスイメージから脱却する事が必要だ。

相模川漁連のホームページ
写真は相模川漁連のHP。ネットでの情報発信は重要だ

3・地元の釣具店やコアなアングラーによるSNSでの情報発信

3つ目の条件は地元の釣具店や釣り人が一緒になってアユルアーが出来る河川を盛り上げる事だ。これについて、中川社長は次のように語る。

「相模川が大成功した大きな要因の1つとして、近くの釣具店の店員さんが熱心に周知に取り組まれたことがあげられます。店員さん自らが川に通い、良く釣れるポイントの紹介等、分かりやすい手書きの釣りマップを作ったり、お客様を勧誘したり、この成功は釣具店様の努力の賜物です。そのうえ、河川によく通っているコアなアングラーが頻繁に川の状況や釣果をSNSにアップし、情報が拡散されていきます。釣具店にも川にも人が訪れるプラスのスパイラルが生まれたのです。このように漁協、釣具店、地元の釣り人が三位一体となってうまくSNSを活用すれば釣り人が増える可能性がより高まります」。

4・渓流ルアー釣りをするお客様がいる河川

先にも述べた通り、渓流ルアーをしている人は、アユルアーをしてもらいやすい。つまり、アユルアーを楽しむ釣り人が増えやすい河川とも言える。中川社長は「同じ川で釣りをするのですから、今までの実績から漁協さんにはトラウトとアユの共通の遊漁券の提案をしています。そうすれば同じ人でも釣りをする期間が増え、さらに遊漁者は増えると思います」と話す。渓流シーズンからアユルアーの告知を行い、誘致を行えば効果が期待できるだろう。

また、渓流の釣り人は、通常、釣った魚はキャッチ&リリースして食べる人は少ないが、アユは年魚なので食べる人が多い。食べる楽しみを多くの人に知ってもらえれば、アユ釣りの魅力がさらに高まり、渓流釣りの人にも更に喜ばれるはずだ。

5・必要であればゾーニング(釣りのエリア分け)が出来る河川

例えば手始めの試験運用や、友釣り師とのトラブルが起きて、良い解決の方法がなかなか見当たらない場合など、ゾーニングで漁協内の反対意見の調整やエリアの釣り分けができる。

よく誤解されているが、アユルアーのキャスティングはロングキャストの必要は全くないので、段階的に周りの釣り人とトラブルが起きにくい釣り方を伝えていく事も重要だ。

条件は全部クリアしていなくても、3つ出来ていれば成功する確率はかなり高い

中川社長は次のように語る。「今まで挙げた5つの条件のうち、3つでも該当し数年間活動すれば、アユルアーで多くの釣り人に来てもらえる確率は非常に高いと思います。5つとも全部出来ていれば、成功しない漁協はないと思います。

そしてこれが一番重要な事ですが、アユルアーを成功させるには、古い考えのままの漁協さんには意識改革をしてもらう必要があると思うのです。私が昔、漁協さんに説得に行った際も『アユルアーをやったら客が増えるのか? あんたが客を連れてきてくれるのか?』といった他力本願なやりとりが多かったです。

誤解を無くすため、あえてお伝えしますが、今までアユルアー講習会等は当社が主催で行ったことはございません。すべて漁協の皆様に主催・運営はお願いし、私どもは後ろ盾、アドバイスする立場をとってきました。理由は漁協の方々にもお客様商売だということを理解して頂くためです。『ウチの川で釣らしたる』ではなく、自ら参画し、釣り人へのサービスのノウハウを学び、漁協さん自身が環境改善を行わなければ釣り人は戻って来てくれません。あくまでアユルアーはキッカケです。

例えばスキー業界でも同じ事があったと思います。バブル時代はスキー場のサービスが悪くても、スノーボード等を禁止しても、次々とお客さんが来てくれた時代もありました。最近のスキー場はどうでしょうか? スノーボードやクロカン、ソリエリア等ゲレンデは多様化したスポーツを受け入れ、もはやスキー場という名前自体に違和感さえ覚えるのが現状です。

漁協の皆様が多様化に対応し、良いサービスを提供するという意志を持ってアユルアーに取り組まないと、成功しにくいと思いますし、最終的にアユの友釣りの再興にも繋がっていかないと思います」。

アユルアーもトラブルになりにくい釣り方を広める必要がある

今後、アユルアーがさらに拡大していくかどうかは、漁協にかかっている部分も大きい。ただ、多くの内水面漁協は厳しい状況にあり、アユルアーはその打開策の1つとなり得ている事を根気よく伝えていく事も釣具業界としては必要だ。若い釣り人に川に来てもらう施策が上手くいかなければ、漁協の減少も止まらず、良い釣り場は更に減っていくのではないだろうか。

また、ルアーロッドによるキャスティングスタイルのアユルアーの釣り方についてもまだまだ発展途上の段階だ。ルアーのロングキャストが友釣り師とトラブルになっているケースもある。

カツイチでは「へチング」という、ピッチングのスタイルを推奨している。バスフィッシングのように、ブッシュ際などのへチをピッチングで攻める接近戦スタイルだ。障害物際や木の枝が張り出しているポイントは、友釣り師は竿も長く、根掛かりするので攻めるのを避けるため、竿抜けポイントとなりルアーロッドスタイルのアユルアーの独壇場といえるだろう。フィールドで共存共栄できる釣り方の一つであるのでぜひ、動画も見て欲しい。

 

3代にわたりアユと向き合い続ける。今後もアユ釣りが発展するために

最後に中川社長に今後の方針について伺った。

「そもそも、カツイチはアユにゆかりのある会社です。曾祖父が前身の中川製針所を創業し、祖父の昭和時代はアユのドブ釣り(毛鉤釣り)の商売をしていました。父の平成時代では友釣りが大ブームとなり、友釣り用品を拡充させました。私の令和時代ではアユルアーと、3代にわたってそれぞれの時代でアユと向き合ってきています。魚は一緒ですが、釣り方は時代によって全く違います。ですから、私は釣り方が変わるのは、自然な事だと思っています。

カツイチの昔の写真
現社長の曾祖父・中川孝之助氏が1920年に中川製針所を設立。その後、中川行一商店に改称し、1983年に株式会社カツイチとなる。およそ100年にわたりアユと関わり続けている

友釣りは釣具業界でもそれまでにない大きなブームになりましたし、大きなお金も動きました。従来のオトリ屋さんと、漁協の努力で遊漁が成り立っている河川は持続できると思いますし、アユルアーや他の釣法を頼る必要もないでしょう。とは言え、令和の時代にそういった漁協は極めて少なく、ほとんどが漁協存続の危機に瀕しておられます。 

前述の通り、当社の歴史も振り返れば分かる事ですが、友釣りだけがアユの正当な釣り方という考えは、令和に入り時代錯誤なのかもしれません。私の先代も友釣りの仕事に移行した時には、ドブ釣りの方々から非難はあっただろうと今になって感じます。もちろんアユの友釣りは日本を代表する伝統の釣りですし、多くの方が切磋琢磨して磨き上げてきた非常に魅力のある釣りで、私も好きな釣りなので、何とか再び盛り上げていくために、若い世代のスタイルに呼応したアユルアーというツールが必要不可欠なのです。

アユの市場が減少するなか、メーカーや漁協、釣り人同士でいがみあっている場合ではないですし、アユルアーには賛否がありますが、結果として若い釣り人が川に戻ってきてくれて、ようやくアユという魚や友釣りにも興味を持たれ始めています。イベント等でお客様とお話すると『数年前、ルアーから始めたけど次は友釣りをやってみます』という方が年々増えています。アユルアーはコツをつかむまで簡単には釣れません。その近くで友釣りの方が釣りまくっていたら、さすがに友釣りをやってみたくなるのが釣り人の性、どの世代でも同じなのです。

また漁協の遊漁券の販売も、嬉しいことにアユルアーが起点となり売り上げがV字回復している河川の報告も増えてきて、ようやく漁協の運営にも明るい見通しがたってきました。

カツイチの中川社長
協力してもらった全ての関係者に感謝していると話す中川社長。今後も釣り場の持続や釣り人を増やす事なら手伝っていきたいと語る

アユの友釣りを若い世代がされなくなり、途方に暮れていた15年前、私はルアーから始めるアユ釣りというかすかな光を見出しました。まさに沈む瀬あれば浮かぶ瀬ありで、ようやくブランド発足時に想像していた未来のアユ釣りが実現しているフェーズに入ったのです。 

ここまで市場が成長したのは、当時の破壊的なブランドコンセプトを受け入れていただき、ご協力いただいた皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

今年も元気なアユが遡上してきます! アユは自然の恵みであり、ご存じの通り1年で30㎝にも成長する類を見ない魚で、大きな資源となり得る魚です。漁協さん、釣具店さん、メーカーさん関係者問わず、アユという資源で釣り場を持続させ、釣り人を増やす事にプラスになる事でしたら、今後もアドバイスやお手伝いさせて頂きますので是非お声がけください」。

アユルアーが出来る河川は増加中。興味のある漁協はぜひ問い合わせを!

下記では、カツイチ社が調査したアユルアーのキャスティングゲームが楽しめる全国の河川が紹介されている(ルール変更もあるため、釣行前に必ず各管理漁協に問い合わせを)。この表の他にも、アユルアーのキャスティングゲームが可能な河川や、関心や理解のある漁協担当者がいれば、(株)カツイチのアユルアー担当までぜひ連絡を。

※アユのキャスティングゲーム可能河川一覧(カツイチHPより)

カツイチのメールアドレス info@katsuichi.co.jp

アユルアー特集 → 鮎ルアー特集 | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

関連記事 → アユルアーのベストセラー「REAYU(リアユ)」。アユが掛かる要素が詰まったルアー、4種類の使い分けも紹介! | 釣具新聞 | 釣具業界の業界紙 | 公式ニュースサイト (tsurigu-np.jp)

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