ルアーとエサ、本当はどっちが釣れるの?タチウオで調査すると意外な結果に!?

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釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。

今回は、ルアーとエサ、どちらの方が釣れるのかについて、実際の調査結果を基に解説して頂きました。

ルアーとエサどちらが釣れるのかと考える女の子のイラスト
ルアーと餌、どちらの方がよく釣れるのだろうか?

水槽にエサとメタルジグを同時に落とす。するとカサゴの反応は…?

お魚さん(カサゴ)が泳いでいる水槽に、フックを外したメタルジグと魚の切り身を投入すると、カサゴは迷わず沈下途中の切り身に飛びついて来ます(図1)

水槽にエサとメタルジグを同時に落とした時のカサゴの反応
(図1)魚の切り身とメタルジグを同時に投入すると、水槽のカサゴは魚の切り身にだけ食べた

しかし、一方のメタルジグはほぼ真っ直ぐ水槽の底面に沈下して、そのまま横たわったままになっていてカサゴが興味を示すことはありません(図2)

メタルジグに興味を示さないカサゴ
(図2)その直後のカサゴはメタルジグに興味を示すことは無かった

こんな様子を見てしまうと、実際の釣り場でもルアー(以下疑似餌)よりも生餌(以下生鮮釣り餌)を使った方が圧倒的に釣れるであろうと考えてしまいます。

ところが、今度はその水槽にメタルジグだけを投入すると、カサゴは水槽の底面に横たわっているメタルジグに興味を示して、幾度か口に入れようとします(図3)

メタルジグに興味を示すカサゴ
(図3)カサゴが空腹になるタイミングでメタルジグを投入すると、カサゴはそれを食べようとした

すぐに食べられるものではないと悟ると、それ以上興味を示すことは無くなりますが、味も匂いもなく動くこともない金属片を、餌と間違えて食べようとしたことに違いはありません。

これを見る限り、やはり疑似餌は生鮮釣り餌には敵わないと思えてしまいそうですが、本当にそうなのでしょうか?

ソフトルアーと釣りエサで比較!予想を覆す結果に!?

2011年から2012年にかけて、ある調査に参加させてもらいました。

場所は大分県の臼杵(うすき)市で、調査の内容は太刀魚の引き縄漁における生鮮釣り餌と疑似餌(ソフトルアー)の釣獲率の比較です。この調査は、(独)開発調査センター(当時の水産研究総合センター)と、JFおおいた(大分県漁業協同組合)、それと当時の勤務先である大手釣り餌メーカーによるものです。

調査の概要は第7回の「疑似餌のカラーとタチウオの釣果」でお話した内容と同様のため詳細は割愛しますが、実はこの時、生鮮釣り餌と疑似餌の釣果比較も実施していました。

第7回はコチラ → 【タチウオファン必見!実験で検証】「赤が釣れる」は本当?ルアーのカラーで釣果はどう変わる?

この調査に国家予算が投入された理由は、タチウオの資源保護と餌交換の省力化に疑似餌が有効であることを実証する基礎データを収集するためです。

第7回でお話した通り、引き縄には80本の針があるため、仕掛けを回収する度に餌の交換をすることが無くなれば、作業時間と漁船同士の衝突事故などを軽減させる効果も期待されています。

余談になりますが、実は私自身、疑似餌よりも生鮮釣り餌のほうが圧倒的に釣りには良いのではないかと考えていました。そして、地元漁業者からは、「こげんもので釣れるわけなかんべ」と、疑似餌に対して消極的な言葉を幾度か耳にしました。

釣獲比較の調査方法については、第7回の内容とほぼと同様になりますので、これについては割愛させていただきます。

調査に用いた疑似餌は、「プロトタイプ」と呼んでいる長さ5インチのソフトルアーで、対象として用いた生鮮釣り餌は冷凍のイワシとキビナゴです(図4)

疑似餌と生鮮釣り餌の釣獲率比較テストに用いた仕掛け
(図4)疑似餌と生鮮釣り餌の釣獲率比較テストに用いた仕掛け

結果は私を含め漁業者の予想を覆し、グラフに示しているように、イワシとキビナゴよりも疑似餌の方が釣獲率が高いという結果になりました(図5)

プロトタイプと比較対象の釣獲率
(図5)破線より実線が下側にあるため、イカナゴにおいてもマイワシにおいても、プロトタイプの方が釣獲率が高かったことが示されている

調査はこの他に条件を変えて行い、疑似餌と生鮮釣り餌のサイズの組み合わせなど条件を変えた場合、生鮮釣り餌の方が釣れたケースも確認していますが、疑似餌との釣果の違いは僅かで、思いのほかタチウオは疑似餌で良く釣れることが判明しました。

また、ほぼ全てのテスト結果に共通していたことは、疑似餌で釣れる太刀魚の方がサイズは大きいという事です(図6)

プロトタイプとイカナゴの釣獲サイズの比較
(図6)6インチプロトタイプとイカナゴの釣獲サイズの比較

疑似餌の使用が資源保護に繋がる?

補足として、JFおおいたでは太刀魚のサイズが小さいものは出荷しないことが決められています。漁業者は、太刀魚の頭の先から肛門までの長さが25㎝以下の小型魚は放流していますが、釣り針が刺さった状態で釣り上げられた太刀魚の中には、放流してもそのまま死んでしまう個体も少なくはありません。

しかしながら、この調査結果により疑似餌の使用が小型魚の保護になり、ひいては資源保護に繋がるという点が高い評価を受けることになりました。

さて、ここでお伝えしたいのは、あくまでも疑似餌と生鮮釣り餌に釣果の優劣を付けることが目的ではありません。仮に優劣を付けようとしても、限りなく複雑な要因が絡み合った釣り場では、簡単に結論を出すことも不可能でしょうし必要とも思いません。

ただ、私だけでなく地元で長年漁をしている当事者でさえも予測がつかない結果が出たということが、大変興味深いと感じています。

〈図5・図6 出典〉
平成23年度海洋水産資源調査報告書・(ひきなわ:タチウオ〈豊後水道周辺海域〉)独立行政法人水産総合研究センター開発調査センター ※一部を抜粋

◆長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」の連載記事一覧はコチラ

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