良い釣りを続けるための未来へ。自然にローインパクトな釣りを!【奧山文弥・理想的な釣り環境】

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釣りは自然の中で魚と対峙する遊びです。エコな考え方で釣りを存続させることは非常に大切なことです。

魚がいなければ釣りは成立しませんし、いい釣りをいつまでも続けるためには、一人一人が「釣りは自然に対してローインパクトであるべき」という前提で、「リリースする場合も、キープする魚についても魚という動物に敬意を払い、倫理的に取り扱うのは人間としての当然の責任である」という考え方を釣り人みんなが持ち、それに沿った行動をして欲しいと思います。

読者の皆さんはできているでしょうか?

釣りに限らず、人間が何かをすれば環境に負荷を与えることは間違いないので、それをいかに少なくするかということ、そしてずっと釣りが続けられるような環境が存続していけるように願い行動しているでしょうか。

ソフトルアーについて考える

膨張して乾燥したソフトルアー
膨張して乾燥したソフトルアー。こうなることを知った上で使いたいものだ

ローインパクトということでは、ソフトプラスティックワームの根掛かりに対する考え方が注目されたことがありました。

このルアーは軟質の塩化ビニールでできたルアーです。もともとはブラックバス釣り用に導入されたのが最初で、今では様々な餌料生物を模してあらゆる対象魚に対して使われています。

このルアーは単にワームと呼ばれ、釣り用語にもなっていますが、これは間違いだと私は思います。

ワームはミミズという意味ですからザリガニワームやシラスワームなどという変な言葉が生まれる表現はしないほうがいいです。

プラグなどはハードルアーと呼びますから、プラスティックワーム類はソフトルアーと呼ぶべきでしょう。未来に向けてきちんとした呼び方をすることを未来の釣り人、若者に伝えていくべきです。

さて、このソフトルアーに関して、皆さんは既にご存知でしょうけれど、生分解性プラスティックを使用した製品について「その場に放置するだけで生分解する」と受け取れる表示をしたのは景品表示法違反(優良誤認)にあたるとして、消費者庁は昨年12月25日までにプラスティック製品販売の事業者10社に、再発防止の措置命令を出しました。

玩具や、ストローやカップ、ゴミ袋、エアガン用BB弾に対してのほか、釣り用の擬似餌にも出されました。釣り用擬似餌では、マルキユー株式会社が販売している擬似餌31商品にあたるとして、パッケージやウエブサイト、カタログの表記を変更しなくてはならなくなりました。

簡単に言うと、生分解や生分解性とか、私たちがいつも口にする環境に優しい、地球に優しい、環境に配慮したというような内容で商品の説明をしてはいけないということです。

マルキユーは「この措置命令を重く受け止め、再発防止に努めます」とウエブサイトでお詫びを表明しています。

生分解性プラスチックについて

この生分解性プラスティックに関して、少々お話ししましょう。

東京海洋大学とマルキユーは学術研究をすることとして産学連携の共同研究をしてきました。私は撒き餌による海洋汚染の研究に関わってきましたが、同時に生分解性プラスティックの擬似餌への導入についての研究も、別チームで高分子科学が専門の兼広春之教授(現・名誉教授)と行われてきました。

そんな中、マルキユーは、生分解性プラスティックのPVA(ポリビニールアルコール)を素材としたソフトルアーを、根掛かりを想定して実際に海や湖、池で、カゴの中でどれだけ分解されるのかを実験してきています。今回の該当品もです。

その結果、微生物が多い海と池では分解されて無くなり、水質の良い湖では未だ完全に無くなってはいませんが、ほとんどソフトルアーであると認知できないほど小さくなっています。

興味があったので過去に私もこの調査に参加させていただき、現場でこのカゴを引き揚げ、付着生物がたくさんついた状態から中身を取り出してその分解度を見たことがありますが、元の大きさから3分の1ぐらいになっていて驚かされました。

私が聞いたところによると、措置命令が出された時、マルキユーはこれらの実験データとPVA単体の生分解評価試験データ、そして兼広先生の論文を消費者庁に提出しましたが、認められなかったということです。

ソフトルアーが無くなったということは事実ですが、それが水と二酸化炭素に分解されたことが証明できる根拠がないということらしいです。水槽実験ではなく、現場での実験ですからその溶けた(分解した)成分は流出してしまいますから、証拠として残りませんよね。

消費者庁では「これら商品を景品表示法に違反するとしたが、製品自体の生分解性を否定したわけではないと説明している」(日経新聞2022年12月26日より)ということなので、製品の能力は認められているわけです。

ですから、それまで信じて使ってきたアングラーがそのまま使っていただくことにより、マルキユーさんの努力に対する応援になると思います。

専門機関のお話では、自然界での証明実験は結果が出るのに時間がかなり掛かるそうで、マルキユーは表示を変え、該当商品の販売を継続するそうです。

塩ビ製ソフトルアーについて

一方、PVAを使っていない従来の塩ビ製ソフトルアーは根掛かりして水中に放置されると、逆の方向へ行きます。特に塩をたくさん含んだものは、吸水膨張して肥大化します。

群馬県の管理釣り場、宮城アングラーズビレッジでは夏のバス営業、冬のマス営業と2期運営していますが、その入れ替え時には池水を抜いて掃除をします。バスのストラクチャーを作ったり外したりする際には当然ゴミ掃除もするのですが、写真のように肥大化したソフトルアーが大量に回収されます。

根掛かり放置された後回収されたルアー
根掛かり放置された後回収されたルアーたち(宮城アングラーズビレッジにて)

今回は表示方法に対する指摘でした。製品そのものに害があるということではありません。

ソフトルアーが持つ数々の問題を少しでも解決しようとしているマルキユーに対して、釣り業界と釣り人全体で応援すべきではありませんか?

いつか必ず、自然の中で完全に分解されることの証明が受け入れられ、堂々とその能力の表示ができることを期待しています。

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