「釣りの学校」の設立を目指す!?和歌山県・串本町が行う釣りを軸とした観光振興とは【釣りで町おこし】

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一般社団法人南紀串本観光協会の宇井晋介氏の連載「釣りで町おこし」。ここでは、釣りを通じた地域振興などについて話して頂きます。

「釣りの学校」設立に向けピックアップされた8つの事業とは?

前回は「フィッシングタウン串本プロジェクト」は、串本に「釣りの学校」を作りたいという夢から始まったことをお伝えした。

前回の記事はコチラ → 「釣りの学校」を作ろう!和歌山・串本町に「釣りの素人」が楽しめる観光・教育施設を【釣りで町おこし】

その夢の実現に向け、幸いにも全国商工会連合会からの地域おこし補助金を受けることが出来、まずは当時考えられる事業をピックアップする事から始めた。事業としてピックアップしたのは以下の8つであった。

①釣り公園の運営(町内にある岸壁などを借りて管理釣り場を運営する)

②釣り教室の開催(修学旅行や一般個人客・一般グループなどを対象とした釣りスクールの開催)

③釣り大会の開催(自主開催以外にメーカーやショップ、企業、グループなどの各種大会の運営や手配など)

④町内体験業者と連携し、釣りを絡めた体験ツアーの販売(一般以外に釣具メーカーのツアー部門や旅行業者との提携も可)

⑤釣り場保全(環境整備・啓蒙活動・釣り場&海底清掃・放流)

⑥釣り以外の海のレジャー、スポーツ、観察会などへの誘導

⑦釣りと食育(魚さばき体験や料理体験など)

⑧釣りイベント等への参加を通じての釣りの町としてのPR

考える作業自体は夢がありとても楽しい作業であったが、さて事業1つ1つを洗い出し問題点をチェックしだすと、問題が山積で、これを形にする難しさをスタート時からいきなり味わう事になった。

それから早いもので10年近い月日が流れた。

結果から言うと、残念ながら理想としていた「釣りの学校」はまだ形になっていない。

言い訳がましくて申し訳ないが、個々にはそれなりに理由があり、ここで少し分析も兼ねて披露してみようと思う。また、幾つかのプログラムはそれなりに形を整えて運用されているので、そちらも紹介する。

釣り公園の設置も検討。だが現実は甘くなく…

最初に「釣り公園の運営」であるが、当初は町内にある岸壁などを借りて管理釣り場を運営するという構想であった。

その為に、実際に運用されている熱海市や淡路島などへ視察に行った。

特に熱海市の事例は、釣り人の事故が続いて閉鎖されていた岸壁を、逆手に取って釣り人の熱意で借り受け管理する事で事故をなくし、また地域おこしにつなげた事例である。トレーラーハウスを使った管理棟などあちこちに創意工夫が溢れ、本当に素晴らしい施設であった。

熱海市での視察の様子
釣り公園の運営に向けて、先進地の視察も行われた(写真は熱海市での視察の様子)
宗像市での視察の様子
福岡県宗像市でも視察が行われた

串本でも立派な港湾施設は完成したが、漁業者の減少などで全体あるいは一部が使用されなくなっている漁港などが散見される。未利用の漁港の再生にもつながる事だし、これは意外と容易かもと思ったが、実際はそうではなかった。

漁港の整備の様に大きな公共工事には、国や県などの大きな予算が使われる。当然これは国民の税金である。よって、基本的に「漁港としてできたもの」は「漁港以外の目的で使用する事はまかりならん」となってしまう。

まあ、考えれば当たり前のことだが、漁港が足りないという事で作ったのに、出来たら、今度は漁民がいない、よって別の用途に使うというのは、無計画のそしりを免れない。

しかし、これは別に漁業者、あるいは自治体が悪い訳でもなんでもなく、日本の社会の急激な変化にハード整備が追い付いていないだけである。

港湾工事などの大きな工事は何十年という長い月日がかかる。一方で、日本社会の高齢化や一次産業離れは驚くべきスピードで進んでおり、ハードが完成したのに、肝心の使う人がないという事態は当然考えられる。

ただ目的外利用の壁によって釣り公園は今頓挫しているが、日本の中でもこうしたハードを弾力的に運用しようという動きは年々強くなってきており、将来施設転用として釣り公園の運営に取り組める下地は整いつつあると考える。

串本では一年中釣り大会が行われている!?

次に「釣り教室の開催」である。

学校である以上、授業がないと不自然である(笑)、という訳ではないが、計画では釣りに関する様々な知識を教える場所として「釣り教室」を考えた。

釣り教室は様々な団体があちこちで同様の教室と称するものを開催しており、目新しいものではない。ただ、きちんとした「学校」、「教室」を構えてそれを行えば、観光施設としての一定の役割は果たせそうであると考えている。

「釣り大会の開催」は、一定の結果を収めている。

現在、継続的に開催している釣り大会は、「潮岬オフショアトーナメント」、「珍魚釣り選手権」、「ラブ太平洋エギング大会」、「串本ビルフィッシュトーナメント」等数多く、さらに様々な有志やメーカーの方々が串本を舞台に開く「全日本カヤックフィッシング大会」など多岐に及び、一年中釣り大会が開かれている町というイメージはすっかり定着した。

今後も大会の誘致には開催場所の提供等知恵を絞りたい。

潮岬オフショアトーナメントの様子
串本で継続して開催されている「潮岬オフショアトーナメント」
ラブ太平洋エギング大会の様子
「ラブ太平洋エギング大会」
串本ビルフィッシュトーナメントの様子
「串本ビルフィッシュトーナメント」

「釣り以外も楽しめる旅」が釣りの隆盛につながる

「釣りツアーの開発」については、まだ開発途上である。現在行っている唯一の事例は「珍魚釣り体験」で、これについては次回ご紹介したい。

「釣りツアーはすでにいっぱい行われているよ」と思われる方も多いと思うがその通りで、釣りを目的としたツアーは、ショップ等ではすでに数多く行われている。ただそれは全てスペシャリストの釣りである。

このプロジェクトが目指すのは、「釣りビギナー」の為の「釣りツアー」である。インバウンド客も含めこれは将来性があると考えている。

「釣り場保全」では、公益財団法人日本釣振興会など様々な釣り関連団体も活動されていて枚挙にいとまがない。

現在はコロナで休んでいるが、コロナ前は串本も様々なクリーン活動が行われており、釣りの有志によるクリーン活動も頻繁に行われていた。

有志の釣り人によって行われる海岸清掃の様子
有志の釣り人により海岸清掃も行われている

コロナが収まればこうした活動もまた復活すると思うが、正直、海洋ゴミとの戦いは、終わりのない戦いである。今後は、少なくとも釣り場での排出ゴミ削減、すなわちマナー向上に力を入れる必要がある。

「釣り以外のレジャーへの誘導」については、この取り組みの目的の最大目標でありこれからもそうである。

「釣りだけしてそのまま帰る人」がほとんどである中の何割かに、串本での他の楽しみも知って欲しい。

釣りだけで終わる旅も良いが、その他の楽しみも合わせて楽しめる旅。それが未来の釣りの隆盛につながると、私は確信する。

食育などもその中の1つとなる釣りの活用事例であり、将来性のある取り組みである。

こうして列挙してみると、ある程度出来ているもの、全く出来ていないもの、様々である。しかしながら、「学校」という形はとらなくても、「釣りを軸としての観光振興」に1つの形が見えてきたと確信する。

連載第1回の記事はコチラ → 観光客10人に1人が釣り人!?串本町が行う「釣りを通じた地域振興」【釣りで町おこし】

連載第2回の記事はコチラ → 「釣り大会」で町おこし。串本で30年続く釣り大会、地域活性化に貢献【釣りで町おこし】

連載第3回の記事はコチラ → 「釣りの学校」を作ろう!和歌山・串本町に「釣りの素人」が楽しめる観光・教育施設を【釣りで町おこし】

◆「釣りで町おこし」の連載記事一覧はコチラ

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