魚の視覚の特性を活かしたアイテム、「オキアミブラック」の原理
魚類の視覚特性は人よりも明暗、すなわち物体のトーンに対して敏感であると言われている。
表層付近に群れているエサ取りは、その多くが嗅覚よりも視覚を頼りに餌を発見し、すぐに食いついてくる。
視覚に頼っている例として、紀州釣り(刺し餌をヌカと砂を混ぜたダンゴに包んで海底近くに到達させるクロダイの釣り方の一方法)に用いるダンゴを投入しようとすると海面に着水する前の時点で、ボラが水面下でダンゴのシルエットを目がけて集まってくる。
下図は色彩を感知する錐体細胞の感度を1とした場合の明暗を感知する桿体細胞の感度を示したもの。魚類の桿体細胞は人よりも高感度となっている。
通常の配合餌にオキアミを混合し刺し餌もオキアミにした場合、両者の色彩のトーンは同じとなるため、撒き餌に混合したオキアミも釣り針に装着された刺し餌にもエサ取りはあっという間に群がって食べつくしてしまう。
その時、刺し餌だけトーンを暗くすると、エサ取りに対して刺し餌は目立たなくなるため下層へと沈下する確率が格段に高くなる。
エサ取りは投入され沈下していくオキアミを横方向あるいは下方向に見るため、オキアミは上からの太陽光によって非常によく目立ってしまう。
一方、下層にいる警戒心の強い本命は沈下してくる撒き餌に混合されたオキアミを下方向から上方向に見るため、通常のオキアミもブラックオキアミを添加したトーンの暗いオキアミもシルエットとして見ているため色彩の大きな違いは認識していない。
それを示した画像がある。
それぞれのカラーに着色したプラチューブを上から見た状態と水中から見た状態を比較すると、以下のようになる。
さらにその水を少し濁らせると、どのカラーのチューブもただの黒いシルエットにしか見えない。
オキアミを黒くしても本命の食いつきが劣ることが無いということは、こうした理由からも裏付けられている。
さらに、即席で黒くしたオキアミは水中を沈下すると徐々に色素が抜けて通常のオキアミに近いカラーになる。そのため、すぐに本命が食いついてこない場合でも下層に到達した刺し餌は通常のオキアミと同様の機能を発揮するようになるので、アタリが出るまで待つことが出来る。
「オキアミブラック」の使用方法
餌バケットに小分けにしたオキアミ全体が浸る程度に振りかけて5~10分以上経過すると着色する。
長時間浸漬するとさらに黒くなるため、エサ取りが極端に多い場合は30分以上浸漬すると効果的。
釣り方は従来と特に変える必要はなく、撒き餌の量もこれまで通りかやや少なめでも効果を得られる。特に水温が高い季節に開催されるトーナメントでは必須のアイテムになるだろう。
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