【弁護士の回答】ボウズでも支払い義務あり
お客様は、魚が釣れなかったのだから代金を全額払う必要はないと述べているようです。このような言い分が認められる可能性はあるのでしょうか。
結論から言えば、ご質問のケースでお客様の要求内容が法的に認められる可能性は低いでしょう。
つまり、御社はお客様に対して、船のチャーター代金5万円、タックルのレンタル代計1万円、合計6万円を請求することができ、お客様は支払いを拒むことができません。その理由をご説明します。
今回お客様は、期待したとおりに魚が釣れなかったことに不満を持ち、代金を払わなくてよいはずだと言っているようです。しかし、魚が釣れなかった場合に代金を支払わなければならないかどうかは、御社とお客様がどのような内容の契約(約束)をしたのかによって決まります。結果的に釣れなかったからといって代金を全額支払わなくてよいわけではありません。
そして、ご質問のケースでは、「結果的に魚が釣れなかったお客様も、代金全額を支払わなければならない」という約束があったと考えられます。
お客様が事前にどのような内容で御社に問い合わせ、御社が予約を取る際にどのような説明をしたかなどの事情は明らかではありません。
しかし、御社のホームページの記載などからすれば、レンタルタックル代は、御社がお客様に釣具を使用させる代わりに、1人当たり2000円を支払うというものと考えられます。つまり、御社が釣具を貸し出し、お客様に使用させた以上、お客様はその代金を支払わなければなりません。
また、チャーター代は、御社がお客様に釣り船を貸し切りで使用させ、釣りポイントで釣りをしてもらう代わりに、お客様が5万円を支払うというものです。実際に魚を釣ったことに対して代金を払うと約束したわけではないでしょう。
つまり、チャーター代5万円は、お客様が貸し切りの釣り船で釣り行為を行うというレジャー体験それ自体への対価です。そのため、お客様は、釣り船をチャーターして、レジャーを行えた以上、魚が釣れなかったとしてもその代金を支払う必要があります。
たしかにお客様は、実際には魚を釣って楽しむことができず、しんどい思いをしたのかもしれません。しかし、法的には、「魚が釣れなかったから釣りをしたことにはならない」という言い分は認められないでしょう。結局、お客様は6万円の支払いを拒むことはできないことになります。
ただし、ご質問のケースとは異なり、船やタックルの故障など、釣りというレジャー体験ができるように、御社が最低限整えておくべき部分に不備があったために魚が釣れなかったという事態も考えられます。この場合、御社はお客様にレジャー体験の機会を提供できなかったとして、代金を請求できない可能性があります。
トラブルを防ぐためにも対策を!
では、ご質問のケースのようなトラブルを防ぐために、どのような工夫をすることが考えられるでしょうか。
ホームページ上のレジャー内容を説明する欄などに「魚が釣れるかどうかは季節や天候、海の状況によって異なります。魚が必ず釣れることを保証するものではありません」、「季節や天候、海の状況等の影響で魚が釣れなかった場合も、チャーター代やタックルのレンタル代の返金はいたしかねます」と記載しておくことが考えられます。
ただし、「いかなる理由があっても返金できません」という記載は消費者契約法という法律に違反するため無効です。
なお、御社では代金を後払いとされているようです。しかし、後払いにすると、帰港した後に代金を支払ってもらえないというリスクを御社が負うことになります。
そこで、代金を前払いにして、お客様から不当な言いがかりを付けられたときに代金だけは回収出来るようにしておくことも考えられます。
【回答者:弁護士法人咲くやこの花法律事務所 弁護士・小林允紀】
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