埼玉県飯能市の入間(いるま)漁業協同組合(古島照夫組合長)は今、埼玉県水産研究所(加須市北小浜)との共同で、入間漁協管内河川で釣り上げたアユの買い取り事業を実施している。
釣り人から買い取ったアユは、県が11月頃に開催予定している農林業イベントで塩焼きなどに調理され、来場者に提供されるという。
管内の清流で育ったアユへの関心を高めてもらうとともに、釣り人の来訪を促し、漁協を元気にするのが狙いだ。アユの買い取り期限は9月15日までとしている。
清らかな「入間川」。アクセスも良く1年中レジャー客が来訪
入間漁協は、埼玉県南西部の飯能市、入間市、狭山市を流れ、蔵づくりのまちとして全国的に知られる川越市の荒川に合流する、一級河川の入間川本流と各支流(一部支流)及び成木川を管轄する組合。
釣り場の中心となる入間川の所管する流程は、約56㎞。
首都50㎞圏に位置する入間川は、関越道や圏央道といった高速道路、主要幹線に近接するなど恵まれたアクセスと水質の良さから、1年を通して川遊び客が多数来訪する。特に大型連休頃から晩秋までの河原は毎年、レジャー客で賑わいを見せる。
とりわけ、上流自治体に位置する飯能市の入間川は、市が「緑と清流のまち」を標榜するだけあって流下する水は清らかで、水遊びに最適なスポットが随所に点在する。
河床に生息する水生昆虫の種類から、水がどれだけ綺麗かを判断できる同市の底生生物調査結果(令和3年度)を見ても、代表種としてコカゲロウ類が上げられ、一帯が「清冽な水域」であることを示している。
また、水質汚濁の指標の一つとなるBOD(生物化学的酸素要求量)測定結果(令和3年度)も、ほとんどの測定地点で1ℓ中0.5㎎(平均値)と、環境基準値の2㎎以下となっている。
アユ釣りも人気の入間川。しかし、釣り人は減少傾向…
この時期、そんな上質の環境に引き寄せられるのは、家族連れや若者らの川遊び客だけではない。清流に身を翻す旬のアユを釣ろうとする釣り人たちも、日参する。
ただ、昭和後半から平成初期頃と比べ、入間川を始めとした管内河川でのアユの友釣り人気は下り坂だ。
令和4年度、入間漁協が入間川で実施したアユの放流量は、いずれも静岡産で海産400㎏、人工産650㎏の合計1050㎏。前年度の1166㎏と著しい変化はなく、ほぼ同水準の放流量を維持してアユ釣り客を受け入れている。しかし、これに呼応して訪れる釣り人は期待するほど多くはなく、全体的に減少傾向にあるのが実情だ。
平成13年度、管内河川でアユ釣りをするために遊漁券を買い求めた人数は、組合員を除いて1313人。内訳は年券使用者が575人、日釣り券使用者が738人。20年後の令和3年度になると年券、日釣り券使用者については365人と大きく減った。