1990年代前半をピークに下降線をたどる内水面漁業に未来はあるのか。漁協組織の弱体化は現在も進行し、決定的な打開策を見出せないまま30年近くが経過しようとしている。
漁協の経営悪化は釣り場の荒廃を招く恐れも多分にある。漁協の活動支援は釣り界(釣具業界および釣り人)の将来へ向けて優先すべき課題といえるだろう。
一般社団法人日本釣用品工業会と公益財団法人日本釣振興会の協働による「つり環境ビジョン」においても持続可能な自然環境を築くためにさまざまな事業が行われている。今後より効果的な活動を継続していくためにも、内水面漁業の現状を知ることは大切だ。
今回取り上げた漁協経営ウエブセミナー「内水面漁場管理実態調査分析にかかる成果検討会」は、やるぞ内水面漁業活性化事業(水産庁補助事業)の一環として昨年の9月に開催された。
困窮する内水面漁業の現状について、行政や自治体、研究者、漁業関係者のさまざまな立場の方から話を聞くことができ、内水面漁業の問題と課題を共有するうえで有意義なセミナーとなった。
釣り人と連携した活動に期待する声も多く、「釣り界は内水面漁業の将来のために何ができるのか」を踏まえながら今回のセミナーを2回に分けて紹介したい。
やるぞ内水面漁業活性化事業「内水面漁場管理実態調査分析にかかる成果検討会」
このウエブセミナーには、内水面漁業関係者だけではなく、都道府県の水産関係部署や水産試験場の担当者、養殖業者、一般参加者をはじめ、170名の参加申込みがあった。
「やるぞ内水面」事業は令和元年からスタートした漁協の支援事業で、今年3月末で3期目を終えた。その事業目的は、ICT活用(電子遊漁券販売など)、ゾーニング管理、漁協と遊漁者のコラボレーションなどを促し、高効率な漁協運営モデルを模索、構築することにある。
また、令和5年は多くの都道府県で10年に一度の漁業権の切りかえの節目にあたり、将来へ向けた漁場管理や増殖のあり方を検討していくこともこのセミナーの目的の1つになった。
今回のセミナーは、内水面の資源管理に研究者の立場で取り組む坪井潤一氏(国立研究開発法人水産研究教育機構水産技術研究所環境応用部門沿岸生態システム部 主任研究員)が進行役を務めた。
セミナーのプログラム
1.基調講演「何が漁協を苦しめているか。漁協経営と増殖目標の狭間で」
〈講師〉金岩稔…三重大学大学院・生物資源学研究科准教授、三重県内水面漁場管理委員会委員(2020年12月~)、三重県内水面漁業協同組合連合会科学アドバイザー
金岩稔氏は水産資源学の研究者であり、三重県内水面漁場管理委員会委員と三重県内水面漁業協同組合連合会科学アドバイザーを務めている。内水面漁業や漁協が抱える問題を三重県下の漁協を例にして取り上げ、研究者の視点で改善策の提案が行われた。
2.関係者からの報告と提案
・「水産庁から見た漁協の現状と課題」…生駒潔(水産庁増殖推進部栽培養殖課内水面指導班)
・「県水産行政からみた漁協の現状と課題」…横塚哲也(栃木県農村振興課)
・「青森県内の内水面漁協における貧困さと危機感」…古内由美子(青森県内水面漁業協同組合連合会)
・「鳥取県日野川漁協における現状と問題点」…山根由美(日野川水系漁協事務局)
3.パネルディスカッション「漁協経営改善に向けて」
話題提供:中村智幸(国立研究開発法人水産研究教育機構水産技術研究所環境応用部 沿岸生態システム部副部長)