アオリイカの卵は数より質!? 親イカの産卵生態とイカシバ(人工産卵床)等を活用した資源保護【海野徹也・魚に愛、自然に感謝、釣り人に幸】

スペシャル ニュース

イカシバ(人工産卵床)は有効か?

イカシバの投入風景
イカシバの投入風景。上方に向けて解放的な枝ぶりをもつイカシバ(ウバメガシ)

アオリイカの産卵基質となっている海藻類は冬期に繁茂するが、近年の温暖化による冬期の水温上昇によって、アイゴ、イスズミ、ブダイ、ウニ等の藻食性動物の摂餌が活発になることがある。

結果、アオリイカの産卵シーズンが到来しても、産卵基質である海藻類が喪失していることもある。また、春からの水温の急激な上昇によって海藻が枯死することで、アオリイカの産卵場が消失したり、海藻に付着した卵塊が沖へと流されることもある。

最近、アオリイカの資源保護や増殖を目的として、間伐材などを束ねたイカシバと呼ばれる人工産卵床の設置が日本各地で行われている。

私の研究室ではイカシバの有効性を調べるため、親イカに超音波発信器を装着し、産卵期の行動を追跡したことがある。

研究は三重県尾鷲湾の奥に位置する引本湾がフィールドで、毎年、春になると漁業者と遊漁者らが協力しイカシバの設置と禁漁をセットとしたアオリイカパラダイスプロジェクトが開催されている。

引本湾のアオリイカパラダイスプロジェクトを主催する中井敏秀氏と研究を担当した吉田悠馬氏
引本湾のアオリイカパラダイスプロジェクトを主催する中井敏秀氏と研究を担当した吉田悠馬氏

許可を頂いて、イカシバ周辺で7個体メスの親イカを釣獲し、1週間前後の追跡を行った。

その結果、追跡した7個体のうち5個体は引本湾内に留まっていた。引本湾内に留まった5個体はイカシバやガラモ場(天然産卵床)の他、筏や養殖イケスの係留ようのロープなどへの移動がみられた。

また、3個体は複数回、イカシバへの滞留が認められた。これらイカシバに移動した個体は、日中、あまり動かず、遊泳水深もイカシバ設置水深と同じで、変化はなかった。

恐らく、イカシバに定位し、産卵していたと考えられる。

アオリイカの天然産卵基質が安定しない今日において、イカシバの設置はアオリイカの資源増殖にとって有効だろう。

調査の様子
調査の様子。イカシバ(人工産卵床)の設置はアオリイカの資源増殖にとって有効だということが分かった

釣り人へのお願い。産卵期の親イカに配慮を!

親のアオリイカは産卵場を求めて移動回遊するが、産卵期に一つの産卵場(湾)だけを利用するのか、それとも複数の産卵場を利用するかは不明だ。

私たちの引本湾の研究では、発信器を装着した7個体のうち5個体が同湾内に留まっていたことが確認された。

オーストラリアアオリイカの産卵回遊の研究でも、湾内の産卵場に来遊した親イカのほとんどは湾内に留まることが明らかにされている。

産卵場へと回遊してきたメスのアオリイカの多くは、産卵期間中、一つの産卵場に留まっている可能性がある。一方、春アオリの好ポイントは湾内であり、親イカの繁殖行動が観察できることもある。

すなわち、アオリイカの産卵場が春アオリの好ポイントになっている場合が多い。産卵期の親イカに配慮し、釣りを楽しんでもらいたい。

(了)

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(了)

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