水産庁では「漁港における釣り利用・調整ガイドライン(案)」を6月12日に公表している。
漁港では釣り人によるマナー違反等のトラブルもあるが、一方で水産庁が進める「海業(うみぎょう)」の一環として、漁業活動が優先されるとの前提を踏まえた上で、漁業との調和を図りつつ釣りを推進する事で、漁村の賑わい作りや所得向上、雇用創出に期待出来るものとしている。
このガイドライン(案)の趣旨について、水産庁では以下の通り説明している。
当然ながら漁港は漁業活動を優先。一方で釣り人が来る事でメリットも
「漁港では、岸壁を利用する一部の釣り人の垂らした釣り糸が航行する漁船に巻き付き航行の障害になったり、漁業活動への支障になっているほか、立ち入り禁止区域への侵入による危険行為、ゴミの放置、無断駐車などのマナー違反によるトラブルが発生しています。
一方で、漁港での釣りは、漁村地域への交流のきっかけとなり、家族連れで来訪することで地域水産物にふれあう機会となり消費拡大に寄与している側面もあります。
このことから、『海業』の取組として位置づけ、漁港は漁業の根拠地であり漁業活動による利用が優先されるとの前提を踏まえ、漁業活動との調和を図りつつ推進することで、漁村における賑わいや所得向上、雇用創出につながることが期待されます。
本ガイドライン(案)では、現在漁港を釣りに活用している事例の調査や、有識者や関係団体、漁港管理者等のご意見を踏まえ、漁港の利用ルール、マナー確保対策、釣り人の安全確保対策、漁港の釣り利用による所得・雇用の創出方策等について考え方を示すものです」。
ガイドライン(案)は三編で構成。漁業活動を妨げない限りにおいて、釣りなどに使用する事は可能
このガイドライン(案)は、第一編が「漁港の釣り利用のための基本的な考え方」、第二編が「漁港施設等の釣り利用検討の方法」、第三編が「漁港の釣り利用に当たっての検討事項」という三編で構成されている。
まず、第一編の基本的な考え方の中でも漁港の釣りについて、以下要旨のように説明している。
「前提として漁港は漁業の根拠地である事から漁業活動が優先される。一方で海との触れ合いの場を提供し、国民の海洋性レクリエーションの要請に対応する機能もあり、漁業以外の利用は排除されるものではなく、その用途または目的を妨げない限りにおいて、釣りなどに使用する事は可能となっている」。
漁港で漁業が優先されるのは当然だが、その目的を妨げない限り、基本的に釣り等もして良いという事が明記されている。
こういった漁港利用の基本的な考え方は、釣り界としても十分に理解しておく必要がある。
特にコロナ禍以降で増えた漁港の釣り禁止、立ち入り禁止の解除に向けた取り組みに大きな影響を与えそうだ。
漁港での釣りは漁業の支障にならない事、利用者の安全が確保されていること、公共性・公益性に反しない等の条件が必要であり、その適否については漁港管理者である都道府県・市町村が判断する事となっている。
しかし、現在、防波堤の漁港施設を釣りに利活用するに当たっての安全対策や責任分担、漁業者との利用調整等の標準的な考え方、漁港を釣りに利用する際の地域活性化等が周知されておらず、漁港を釣りに開放する事に躊躇する漁港管理者も見られる、とガイドライン(案)に書かれている。
漁港の管理者である都道府県や市町村や漁協にも、このガイドライン(案)を良く知ってもらう必要がある。
もちろん、漁港により様々な個別の事情もあると思われるが、特に釣りが望まれているような漁港については、釣り人側もルールやマナーを守った上で、ガイドライン(案)に則り、釣りが出来るように進めて行く事が必要だ。
釣り人側もルール・マナーをしっかりと守る事。その上でガイドライン(案)を参考に釣り場開放の話し合いを
この他、ガイドライン(案)では、関連する法律の紹介や用語の解説なども行われている。
また、釣り利用が増える事で、水産物の販売の拡大や魚の消費拡大につながる事も期待される。漁業への理解、沿岸地域環境への理解等も期待される。
さらに海業の展開としては、海業体験や宿泊など新たな事業展開による漁業者の収入確保にもつながる事があるとしており、その具体例も紹介されている。
また、釣りも海業の取り組みの1つとして、関係者参加の元で地域協議会による検討を行う事が望ましいとして、利害関係者や関係行政機関等の例や検討すべき内容等も書かれてある。
現在、釣り禁止になっている漁港でも、関係者を集めて話し合いの場を設けていく事が求められている。釣り場開放のために、大いに参考になるはずだ。
釣り関係者はぜひ目を通しておきたい。このガイドライン(案)は、水産庁のホームページで確認出来る。