「九州リポート福岡発!」は、全九州釣ライター協会の会長・小野山康彦氏の連載です。公益財団法人日本釣振興会九州地区支部の活動ほか、九州の様々な情報を紹介します。
美味で人気のガザミ(ワタリガニ)。漁獲量は年々減少傾向だが…
今回は、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県に接する豊かな漁場・有明海のガザミ(ワタリガニ)の資源保護の取り組みについてご紹介します。
食味が良いことで人気のガザミは、蒸し料理やなべ料理などの高級食材として広く知られ、有明海の地域によっては「竹崎ガニ」などの名称でブランド化を図っています。
ガザミは波の穏やかな内湾の水深30mほどまでの砂泥域に生息し、夜行性で昼間は砂泥の中に潜っていますが、餌を取るために夕方から朝方にかけて浮上します。
そこで、玉網(たも)やその他のすくい網で漁獲されるのです。寿命は雄が1年半、雌は3年と推定されています。
農林水産統計年報によると、有明海のガザミの漁獲量は1975年以降増減を繰り返しながら1985年には最高の1781トンとなり、その後徐々に減少。2008年度から2020年度にかけて資源回復計画や広域資源管理方針に基づく取り組みが行われてきましたが、2016年には過去最低の59トンを記録しました。
資源状況は依然として低位水準であり、2021年度からも引き続き資源回復を目的に有明海に接する福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、および関係県漁業者代表、水産研究・教育機構水産技術研究所、水産庁九州漁業調整事務局を構成員として、ガザミ広域資源管理検討会議が設置されています。
ガザミの資源回復に向けて
ガザミの産卵時期は5月~10月(盛期は6月~8月)で、年に3回程度産卵するものと考えられています。
産卵からふ化するまでの期間は2~3週間で、その後2~4週間の浮遊期間を経て稚ガニに変態します。干潟域に着底した稚ガニは5㎝程度までに成長すると干潟を離れ、水深5mくらいに生息域が拡大します。水温の下降とともに摂食活動を停止して深場へ移動して越冬します。
「一番仔」と言われる春生まれのガザミは秋までには全甲幅長15㎝前後の個体となり繁殖に加わりますが、夏生まれの「二番仔」は成体になって繁殖に加わるのは翌年になります。
そこで、有明海のガザミの保護と資源の維持回復のために、①抱卵ガザミ(黒デコ)の保護、②全甲幅長12㎝以下の小型ガザミの再放流、③軟甲ガザミの再放流のほか、④採捕禁止期間として産卵期間(6月~8月)のうちの15日間を設定しています。
今年も6月1日~15日、4県の有明海全域で、玉網(たも)その他のすくい網によるガザミの採捕が禁止されました。
これは日本海・九州西広域漁業調整委員会指示による公的規制で、漁業者だけでなく遊漁船や一般人たちのプレジャーボートでの採捕も対象となり、違反した場合には罰則が適用されます。
関係県漁業者等がこれらの保護政策を実施し、さらに積極的培養処置として種苗(しゅびょう)放流などにも取り組む中、今後もわれわれは「採捕禁止期間」の詳しい内容を一般の釣り人や遊漁者に広く周知して、有明海のガザミの資源保護への理解と協力を呼びかけていきたいと思います。
〈参考資料:有明海ガザミ広域資源管理方針・令和3年3月9日〉
問い合わせ先
福岡市の水産庁九州漁業調整事務所
(☎092・273・2004)