趣味はなんですか? と聞かれて「釣りです」と答えた時、「いい趣味ですね」と言われることが、登山やテニスなどに比べると少ないことは残念ながら事実です。
すでに釣りをしている人は、「ああ、釣りですか?」とちょっと見下したような対応を取られて、イヤな思いをしたことがある方が少なからずいると思います。
私も経験があります。釣りをしない人たちが、釣りに対して持っている悪いイメージが強いからなのだと思います。
釣り人が増えると環境が良くなって、釣り場がある地域に歓迎されるというのが理想ですが、現実は程遠いです。
釣り人が増えると良い釣り人だけでなく、悪い釣り人も発生します。駐車やゴミの問題、立ち入り禁止場所などで、マナーの悪い人やルールを守らない釣り人の割合も多くなります。
コロナ禍の反動でアウトドアブームになり、釣りをする人が増え、売上が伸びたと釣り業界、釣具店は喜んでいますが、売上の数字だけでは釣りそのものが良くなったとは言えません。
ごく一部の例では、前述の悪い釣り人が増えた地域、関東近郊で私の知る範囲では、伊豆の港では立ち入り禁止、あるいは釣り禁止になった港が数多くあります。全体からすればごく一部の悪者かも知れませんが、これは大問題です。
駐車やゴミの問題で、注意したら逆ギレされるということもあったそうです。また港内を航行中の漁船が、釣り人が投げた仕掛けを絡ませ、タックル一式が海中に没し、釣り人が文句を言ったため船長が弁償し、その後その港は釣り禁止になったという話も記憶に新しいです。
迷惑行為への対策強化が必要
釣りをするにあたって、自分のことばかり優先し、周りの迷惑を考えない不届き者が出現するので、多くの善良な釣り人も締め出しをくらうわけです。その人達が、釣りの社会的地位を落としていると考えるべきでしょう。
釣りは観光業として現地にお金を落とすので歓迎されるはずですが、そういう不届き者に限ってお金を落とさず、ゴミだけ落としていくという招かざる人なのです。
いろんな釣り関係団体が釣り教室やイベントなどでマナー、ルールの啓蒙していても、不届き者はそういうところに来ません。
唯一の接点は釣具店でしょうか?釣りをするために彼らは買い物にやってきます。釣具店での水際対策として、売るための宣伝だけではなく、釣り場を守る宣伝もして欲しいです。
店内放送などでもう既にやっているのであれば、それでは足りていないか、あるいは方法が合っていないのかもしれません。
釣りの美しい部分を語らず、あえて汚い部分を記事にしたのは、多くの人が迷惑行為をするならず者たちの存在に辟易としているにもかかわらず、対応策が乏しいということを認識して欲しいからです。
管釣りなどでは退場という強硬手段もありますし、釣り禁止になった漁港などもその強硬手段に出ただけの話です。
釣りの社会的地位を向上させるには、その様な釣り人が発生しないような対策、発生した時の対策をきちんと練るべきでしょう。釣り禁止になってから騒いでも遅いです。
バイク業界で言えば、暴走族対策のようなものですが、バイクの場合は警察の取締りもありますから、強い味方がいることになります。
「誇れる趣味」を目指して…
余談ですが、釣りが好きなセレブたちの中には釣りが趣味だということを隠す人もいます。
日本にベネトンブランドを持ち込み、ファッション業界のトップにあった元ベネトンジャパンの会長・遠藤嶂(たかし)さんは、「釣りは好きでよく行くけど、自分の業界の付き合いがある人に釣りが趣味って言ってないんだよね。だってああいう奴らと同じ目で見られたら嫌だから」と言っていました。
そう言えば、釣りバカ日誌のスーさんも社員のハマちゃんと仲良くなりますが、業界では釣りをしていることを隠していたシーンもありましたね。
釣りキチ三平も釣りをしない人たちに面白い漫画として読まれ、釣りに興味を持ち、それで育った少年や青年も多くいたはずです。マナーの悪い釣り人を三平が懲らしめるような場面もありました。今ではそういう教本もありません。
東京海洋大学の公開講座のフィッシングカレッジにて、釣りの社会的地位を向上させようとする内容も何度か盛り込みました。当時、釣人専門官だった中屋敷勇治さんも、釣りのルールとマナーという講義の最後に、「目標は釣りの社会的地位を向上させること」と明言されていました。
漁港などで清掃協力費などの名目で駐車料金や入場料を徴収して、釣り人を歓迎している港などの成功例に学ぶというのも良い方法でしょう。
淡水ではマスの放流日にこぞって釣り、必要以上に殺す人たちも人間の強欲な性が丸出しで、「ああいう人たちと一緒にしてもらっては困る」と言っている人も多くいます。それを文化だと言って、日本の釣りの質を下げている人がいることも情けないです。
今回紹介したのは、釣りの社会的イメージを下げる悪い例のごく一部です。
さあ、どうします?これは釣り業界にとって永遠のテーマなのかも知れませんね。