「胸を張り釣りの素晴らしさ伝える」日本釣振興会・髙宮俊諦会長【TOP INTERVIEW】

スペシャル ニュース
日本釣振興会会長の髙宮俊諦氏
日釣振の髙宮俊諦会長。50年以上の長い歴史を持つ日釣振。2022年にコロナ禍のため何度も延期を余儀なくされていた大きな節目となる記念事業を行う

今回のトップインタビューは、公益財団法人 日本釣振興会の髙宮俊諦会長だ。

公益財団法人日本釣振興会(にほんつりしんこうかい)は、設立から50年以上が経過し大きな節目を迎えている。2022年3月2日に開催予定だった50周年記念式典等が新型コロナウイルスの急激な感染拡大のため6月14日に延期とはなったが、改めて日本釣振興会設立の経緯や、行っている事業について、また今後の日本釣振興会についてなど様々な事を伺った。

50年以上にわたり日本の釣り振興活動に取り組む。歴代会長も2名の総理大臣経験者をはじめ錚々たる顔ぶれ

公益財団法人 日本釣振興会(以下、日釣振・にっちょうしん)は、1970年に設立され50年以上にわたり活動を続けてきた。当初は文部省、農林省、厚生省の3省管轄で始まり、役員は釣り界(釣り関係の業者や釣り人など釣りに関わる人や企業・団体)のみならず、学識経験者や政財界の有識者が集い、結成された。

歴代会長も総理大臣経験者をはじめとした錚々(そうそう)たる顔ぶれだ。初代会長は園田直氏、2代目は徳永正利氏、3代目は小渕恵三氏、4代目は鈴木健兒氏、5代目と6代目は麻生太郎氏、7代目は松井義侑氏、そして8代目が現在の会長となる髙宮俊諦氏だ。日釣振は、まさに釣り界を代表する公的な団体といえる。

50周年という大きな節目に、現会長の髙宮氏に日釣振の歴史や思いを改めて語って頂いた。

全日本釣具卸組合が旗振り役。アメリカの釣り事情の視察も影響

髙宮会長(以下、同様)
「日釣振設立以前の話ですが、私が大学1年生の時(昭和41年)に全日本釣具卸組合(ぜんにほんつりぐおろしくみあい・現在の全日本釣具組合)が設立されました。父(故髙宮義諦)に呼ばれる形で沼津や上野で行われていた食事会に私も参加する事がありました。そこでは、理事長を努められていた池永由造さんや常見保彦さんをはじめ業界の多くの先輩方に可愛がってもらいました。今でもよく覚えております。

全日本釣具卸組合設立の2年後に、常見保彦さんら業界の有志が集まって、アメリカの釣り事情を視察に行かれました。アメリカのフィッシングショーの見学をはじめ、ライセンス制度や政府が釣りを支援する仕組み等を勉強して帰国されました。

釣具新聞
1968 年(昭和43年)9月の釣具新聞。アメリカで官庁による魚族増殖や自然保護を学んだ事も日釣振を形作る参考となった

当時の日本はレジャーブームで釣り人も急増し、漁業者とのトラブルや水質汚染も広がっていました。『このままでは日本の釣りの将来が危うい。日本でも釣りを支える公的な団体が必要だ』と強く思われた釣り界の先達が協力し合って、全日本釣具卸組合が旗振り役となり、翌年、設立準備委員会が作られました。

日釣振は当初から釣り界関係者だけではなく、学識経験者や政治家など広くお声がけして、設立に協力して頂きました。また、監督官庁をお願いする省庁にも設立準備委員の方々が足繁く通い、財団を作るための勉強に励まれました。

こういった釣り界以外の様々な立場の方にも協力して頂く団体を目指したのは、アメリカの釣り事情を視察した影響が大きかったのではないかと思います。

そして、1970年(昭和45年)に念願の日本釣振興会が設立される事となりました。

釣具新聞
1970年(昭和45年)に日本釣振興会設立が設立した事を伝える釣具新聞。会長には衆議院議員の園田直氏が就任

また、日釣振設立の2年後には、超党派で釣りを支援する議員連盟が出来ました。それ以降、釣魚議員連盟の方々には日釣振や釣り界に対して、大変なご支援、ご協力を頂いております。また、国交省、水産庁とは今も共同で、地域活性化の為に釣り文化の振興や、漁港の有効活用も行わせて頂いております。改めて御礼申し上げます」。

卸、小売業、製造、釣り人等、釣り関係者が一致団結して日本釣振興会を生み出す

「日釣振を生み出した全日本釣具卸組合が出来た後に、全日本釣具小売商組合連合会や、日本釣具製造組合、全日本釣り団体協議会が作られました。当時、日本釣振興会のような財団法人を作ろうという気運が相当に高まっていたと思うのですが、卸、小売業、製造、釣り人等、まさに釣り界が一致団結して日釣振は生み出されました。

日釣振が設立されて、今では50年以上経ちます。他の業界でもいろいろな団体があると思いますが、日釣振のようにこれだけ多くの方々から協力を得られ、団結している業界は少ないと思います。

現在の日釣振を見ますと、自らの業界で日本フィッシング会館を所有しており、日釣振の基本財産も4億円を超えています。会費の集まりも良く、毎年1億6000万円超の事業を行うことが出来ており、その活動は年々活発になっています。

日本フィッシング会館
東京都中央区八丁堀にある日本フィッシング会館。釣り振興の基地にもなっている

普段は利害関係のある製造、卸、小売業者の大半が集って、こういった組織が出来ている事は、世の中からしても稀な事だと思います。業界に皆で協力していくという雰囲気があるのは、現在の日本釣用品工業会や釣り団体の協力はもちろんですが、やはり創設時の釣り界の先達のおかげだと思います。大変ありがたい事だと感じています」。 

放流、清掃、釣り普及等を実施。立ち入り禁止や釣り禁止問題にも積極的に対応

「事業を詳細に説明していくと多岐にわたりますので要点だけをお話しますが、日釣振の事業の大きな柱の1つである放流事業は、この50年間で金額的には恐らく15億円以上、尾数で言えば8000万尾以上は放流してきたと思われます。日釣振は設立当初から魚族資源の保護・増殖に取り組んでおり、50年以上にわたり全国各地の海水面・内水面で放流活動を続けてきました。

また、釣り場の清掃活動も設立当初から行われており、釣り場をキレイにするだけでなく、釣り場周辺の地域や行政、漁業者との協議やコミュニケーションの場にもなってきました。

これは今もそうなのですが、日釣振等が清掃活動を定期的に行っている地域では、立ち入り禁止や釣り禁止等の問題はほとんど起きていません。全国各地で釣り場の清掃や釣り教室、釣り大会等を通じて、漁協や地元行政としっかりパイプ作りを行っていく事、またそのための体制作りが大切だと思っています」。

髙宮会長が特に印象に残っている「外来魚問題」。厳しい3年間を振り返る

外来魚問題のシンポジウムで話す髙宮会長
外来魚対策委員長として各地でシンポジウム等を開催。矢面に立ち意見交換等を行ってきた

「私にとって強烈に印象に残っているのは、外来魚問題です。1997年に釣り界は釣り人口2000万人、釣り具の小売市場規模も3000億円以上になり、ブラックバスブームや釣りブームとなっていました。その1年後に、一部の魚類学者やマスコミが『外来種によって日本の在来種は絶滅してしまう』、『外来種(ブラックバスやブルーギル)が増えたのは釣り人や業界ぐるみの密放流のせいだ』と言い出されました。

こういった意見の中で、私は特に『釣具業界が業界ぐるみで密放流を行っている』といった事は絶対にあり得ないと思い、憤りを感じました。そして、日釣振の外来魚対策委員会の委員長を拝命し、外来魚問題の対策に当たる事となりました。

当時、3年の間に、東京を中心に釣り界代表として全国各地で80回あまりシンポジウムや協議会等に出掛け、様々な活動を行いました。主には環境省や魚類学者との折衝が中心的な仕事となりました。

最終的には、マスコミや害魚派から『外来魚によって在来種が危機的状況にあり、ブラックバスによってお濠が埋め尽くされている』とされた皇居外苑牛ヶ淵濠のかいぼり調査で、ブラックバスがわずか0.59%とほとんどいなかった事が明らかとなりました。

当時、世間を大いに騒がせた皇居のかいぼり調査。予想に反してオオクチバスはほとんどいなかった

この結果を受けて、ブラックバスの位置付けをどうするのか、環境省で再度議論が行われ、半年ないし1年待って再検討すると決まりました。ところが、当時の小池環境大臣の意向でそれまでの議論は覆され、ブラックバスは特定外来生物に指定される事となりました。今思い返しても、本当に厳しい3年間でした。

小池環境大臣(当時)と面会する髙宮会長
小池環境大臣(当時)と面会の様子。外来魚対策に当たった3年間は厳しい時間だったと語る

ただ、その時に戦ってきた行政や環境省、また魚類学者の方々も『日本釣振興会というのは、いい加減な団体ではない』という事を認めて頂いた事もありますし、こういった活動を続けた事で、最も危惧していたバスフィッシングの全面禁止には至りませんでした。一部地域ではキャッチ&リリースは制限されましたが、キャッチ&リリースは合法という事で、今もバスフィッシングが安定して楽しまれているという点では、活動を行って良かったのではないかと思っています」。

今後の日釣振について。釣り禁止の阻止、日釣振各支部の組織強化、身近に釣れる魚が減った原因など調査研究事業を拡充

「日釣振にもいくつか課題があります。1つは高齢化など様々な問題によって組織が弱体化している地域があります。特にここ数年、釣り禁止の場所が増えていますが、先にも述べましたように、定期的に清掃活動を行うなど、地元や漁協、行政と普段からの交流が出来ていれば、漁港等も簡単に釣り禁止にはなりません。今後は各地域のメーカーさんや、意識の高い釣り人とも連携を強め、日釣振の各支部の人材強化や組織強化を行っていく必要があると考えています。

もう1つは、身近にある川や池、沼などでハヤやヤマベなど手軽に釣れる魚が昔と比べて本当に釣れなくなりました。私も釣り好きの孫と一緒に、海だけではなく河川にもよく釣りに出掛けるのですが、20年前、30年前に比べると水は大変キレイになっているのですが、手軽に釣れるはずの魚がほとんど釣れません。有名な愛唱歌ふるさとの中にある『小鮒釣りしかの川』等は、今の子供達にはあまり体験できないと思います。

魚が減った原因として、川の生物に影響のある河川工事や、禁止されているはずの農薬の使用等が言われておりますが、やはり何等かの原因があるはずです。日釣振も今後、今まで以上に調査研究事業に力を入れていく必要があります。身近な場所で手軽に魚が良く釣れる事は、子供達に自然体験をさせ、自然の摂理を学ばせる事となり、ひいては釣り人拡大にも繋がりますし、日本の教育上にも良い事だと思います」

釣り人や日本釣振興会に関わる人へのメッセージ

日本釣振興会の釣り人宣言
釣り人宣言は釣り人として必要な事が良くまとめられている。再度、積極的にPRすべきだ

「日本釣振興会が出している『釣り人宣言』は、非常に良く出来ていると思います。釣り人の義務や責任など様々な項目を網羅しています。釣り人や世間に対して日釣振は今まで以上に『釣り人宣言』のPRを行う必要があると思います。

日本釣振興会のイベント
釣りは社会的にも意義がある楽しみあり、より多くの人に楽しんで欲しい

また、釣りは社会的にも意義のあるスポーツ・レジャーです。その主な4つが以下の通りです。

釣りの社会的意義と健全性

釣りには多くの効用があり、この事をもっと世間に広めるべきです。

今後も釣りの楽しさ、素晴らしさを世の中に堂々と胸を張って伝えて欲しいと思っています。

そのために釣り人や日釣振側もやるべき事をしっかり行い、今までに増して、釣り人としてのマナー・モラルの向上を図ると共に、健全な釣りを広めていって欲しいと思っています」。

(了)

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