兵庫県神戸市東灘区の人工島・六甲アイランドの南側にある「マリンパーク」で5月3―5日まで、「海釣り」検討の実証実験が行われた。
マリンパークは海に面した長いベランダがある。沖に「7防」と呼ばれる防波堤があり、海は波も低く穏やかだ。しっかりとした手すりもあり、家族連れでも安全に釣りが楽しめる場所だ。以前は多くの釣り人が訪れていたが、現在マリンパークは釣り禁止となっている。
今回、実証実験としてマリンパークで海釣りが行われたのは、六甲アイランドのまちびらき30周年を機に策定した「六甲アイランドまちの将来の姿」で、「ウォーターフロント空間を活用した憩いと賑わいの場の創出」という項目が掲げられたからだ。
六甲アイランドは1988年3月にまちびらき。30年以上が経過
そもそも、六甲アイランドは1972年に着工され、1988年3月にまちびらき(最初の住宅地が完成し入居開始)を行った。30周年のタイミングで、今後の更なるまちの魅力向上や賑わいの創出を目指し、検討を行っていくために「六甲アイランドまちの将来像検討会」が立ち上げられた。この検討会は学識経験者や地域の代表、行政の関係者などで構成され、会議が重ねられた。
その最終報告として、2021年2月に前述の「六甲アイランドまちの将来の姿」が出される事となる。
ここで、まちづくりの方向性として「ウォーターフロント空間を活用した憩いと賑わいの場の創出」、「多様な人々の交流による賑わいの創出」、「文化、スポーツ施設を活かした地域文化の魅力発信」が掲げられる。
六甲アイランドは人工島であり、まさにウォーターフロンだが、海岸線は私有地が多いため、地域住民が海に親しめる場所は意外と限られている。
しかし、前述の通り六甲アイランドでの新たな憩いと賑わいの場の創出という点から、釣りを活用した賑わい作りは出来るのかどうか。そのニーズや導入時の課題、求められる機能等を把握するため、実証実験が行われる事となった。
実験が行われたのは5月3―5日の3日間で、時間は午前9時から午後6時まで。3日間とも絶好の釣り日和となった。参加費は無料。海岸線の350mを海釣りエリアとし、水際線から約6mの場所に柵が設けられ、一般の公園利用者と区切られるなど、安全対策が行われていた。
入場可能者数は最大150名とされており、適度な間隔が取られて、参加者はそれぞれの釣りを楽しんでいた。家族連れの参加者も多く、釣りをしながら六甲アイランドならではの海と山の景色も楽しんでいた。全体的に釣果は厳しかったが、子供も熱心に釣りを楽しんでいた。
【神戸市港湾局】海釣りの来られる方のニーズや地域の課題を把握して総合的に判断
神戸市港湾局の担当者に話を伺うと「策定された『六甲アイランドまちの将来の姿』の内容を受けて、六甲アイランドのマリンパーク全体をどのようにしていくかを今年度検討する事となりました。その一環として、今回の海釣りの実証実験を行う事となりました。
神戸市では岸から海釣りが楽しめる場所はアジュール舞子、平磯海づり公園、神戸空港の北側の一部と限られています。マリンパークは釣り禁止なのですが、実際には釣りをしている方もおられます。
そういった中で、コロナ禍で釣り人が増えたと言われています。今回、社会実験の形で一般の公園を利用される方と区切った形で海釣りをして頂き、アンケートにも協力して頂いて、海釣りに来られる方のニーズ等を知りたいと思っています。また、釣り人だけでなく地域の方々の意見も聞いて、課題などをしっかり把握して、今後どのようにしていくかを総合的に判断していく方針です」。
海釣りのニーズの高い神戸市だが釣り場は減少傾向…。釣り人のマナー向上も必要
今後、マリンパークで海釣りが再び出来るようになるかは未定だ。いずれにせよ、釣りが地域住民から理解を得られる環境作りは必要だ。ゴミの放置問題、騒音問題、事故等が起こらないよう、場所によっては有料でしっかりと管理していくという方法も有効だと思われる。そもそも、こういった問題が起こらないよう、一層の釣り人のマナー向上も必要だ。
海と山に囲まれ150万人の市民を有する神戸市では、海釣りのニーズは高いが、実際に海釣りを岸から楽しめる場所は限られている。釣りは活用方法によっては、地域の賑わい創出に大いに役立つ。地域の人にも理解される、優れた解決法が望まれる。