兵庫県明石市にある5つの漁協で構成される明石市漁業組合連合会(以下、明石市漁連)では、2022年5月よりタコの資源を保護するための取り組みとして「タコマイレージ」を開始する。
兵庫県の明石沖はタコ釣りのメッカとして知られている。ここ数年、タコエギを使った船タコのジャンルも確立されており、ブランドダコである「明石ダコ」を狙い多くの釣り人がタコ釣りを楽しんでいる。
ただ、近年明石市内のタコの漁獲量は減少傾向にあり、特に昨年は記録的な不漁となっている。平成25年(2013年)から平成27年(2015年)までは1000トン以上あった漁獲量が、増減を繰り返しながらも令和3年(2021年)は133トンと、およそ10分の1まで減少した。
タコの漁獲量が減少した理由は不明だ。タコのエサとなる貝の不足や海水温の変化など環境によるものや、遊漁者の増加など様々な要因が考えられるが、いずれも明確な根拠はない。タコは「タコが湧く」と言われるように、増える年には急激に増えて豊漁となるが、ここ数年の不漁は非常に深刻であり、漁業者も頭を悩ませている。
明石市漁連では2016年から「明石沿岸のタコ釣り等のルール」を釣り界(釣りの企業や釣り人の団体等)とも協力しながら策定し、タコの資源管理に乗り出している。本来、遊漁者は共同漁業権区域内でタコを釣る事は出来ないが、ルールを守る人に限って、タコ釣りを楽しめるようにしたものだ。
「当時はタコ釣りの人気が出てきたこともあり、特にプレジャーボートが非常に増えて、漁場での操業や航行が危険な状態になっていました。そして、実際に事故も起きました。そのため、一度釣り人側と話をしようという事になり、こういうルールを設けさせてもらいました。このルールの施行後は、釣り人側もきちんとルールを守って頂いており、今では違法なボートによるタコ釣りはほぼゼロになりました。とても効果がありましたし、有難いと思っています」と明石市漁連の大西会長は語る。
釣ったタコを放流用に提供するとポイント付与。ポイントが貯まるとオリジナルステッカー(ランクあり)を進呈
このルールの策定等をキッカケとして、3年前に明石市漁連内の約40の遊漁船業者が集まり、遊漁船部会が設立された。この遊漁船部会で自主的にタコの資源保護に協力しようと考え出されたのが、今回の「タコマイレージ」だ。
この制度は、明石市漁連に所属している遊漁船業者を利用した釣り人が、マダコ(100g超)を放流用として1パイ提供すると1ポイントがもらえる(マダコの100g以下はもともと兵庫県漁業調整規則によって採捕不可)。放流用として提供されたマダコは集約され、漁業者と協議の上、保護区等にリリースされるというものだ。
ゴールドステッカーはタコ釣り名人の証!?
ポイントを貯めると遊漁船部会で作られたオリジナルステッカーが進呈される。ステッカーはランクがあり、現段階では4つのランクがある。最高ランクはゴールドステッカーとなる。
ポイントを集めてどのような特典を付けるかは、遊漁船部会の中でも議論されたが、多くの遊漁船業者が参加する取り組みでもあり、最終的には釣り人の名誉となるようなサービスが良いという事で、今回の制度でのスタートとなったが、今後、釣り界の声も聞きながら改良していきたいとの事。
このタコマイレージは、明石市漁連の遊漁船ほぼ全隻が参加いている。明石市漁連では、この取り組みは他の地域にも拡大していく事を期待している。
漁業者、遊漁船、釣り人が協力してタコの資源保護に取り組む。成功すれば全国でも画期的な取り組みに!
明石市漁連の大西会長は以下のように語る。
「この取り組みは遊漁船部会の全会一致で決まりました。そして本職と呼ばれる我々漁業者も全面的に賛同しています。漁業者は毎年タコの放流を行っています。今年も昨年の不漁を受けて、例年以上にタコつぼを沈める等、タコの増殖に取り組んでいきます。こういった資源の保護・増殖活動に、遊漁船部会としても協力したいという想いで企画されました。
釣り人の皆様も、このタコマイレージ制度を活用してもらい、自分達が食べる以上に釣れた時は、いくらかでもリリースして頂ければと思います。釣り人にタコのリリースを促す事で、今まで以上に釣り人にも資源管理に関心を持って頂きたいですし、これからタコ釣りを始められる方にも、そういった意識や習慣を持って頂けると有難いと思っています」。
明石市漁連の遊漁船業者は昨年、記録的な不漁を受け、産卵期である9月中旬から一時営業を休止した。さらに、追加措置として昨年(2021年)10月から今年4月末までタコ釣りの営業を休止するなどマダコの資源回復に向けた取り組みを行ってきた(マダイなど他の釣り物は営業)。
こういった活動に加えて、今回のタコマイレージが設けられた。漁業者も記録的な不漁を受けて、今回の遊漁船業者の取り組みを全面的に支持しており、漁業者と遊漁船業者が協力してマダコの資源保護の活動を行っていく。釣り人も積極的にこの制度を活用して協力する姿勢が求められる。
この制度が上手く機能すれば、漁業者、遊漁船業者、釣り人が協力して資源保護を行う、全国でも画期的な取り組みとなりそうだ。
「明石たこつぼ募金」も開始。集まった募金はタコの資源保護に活用
また、5月より「明石たこつぼ募金」も開始される。この募金は昨年夏に明石沖の海底から約1万6000個のタコエギが回収された事を契機に、明石市漁連と日本釣振興会、遊漁船業者が協議して始められたものだ。
募金箱は明石市漁連の遊漁船業者ほか、公共サービス施設や商業店舗等に設置される予定だ。集まった募金はタコエギの回収や処分をはじめ、タコの資源保護等に使われる。タコ釣りがこれからも楽しめるよう、募金にも協力していきたい。
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