もし遊漁船でライフジャケットを着用していなかったら…?
遊漁船の船長もプレジャーボートの船長同様、乗船者にライフジャケットを着用させる義務がある。しかし、着用義務を規定しているのは「職員法」ではなく「遊漁船業の適正化に関する法律」(以下、遊適法)である。
「遊適法」において、遊漁船業者は、利用者の安全の確保や、利益の保護、漁場の安定的な利用関係の確保に関する事項等を定めた「業務規程」を定め、都道府県知事に届け出なければならない。遊漁船業者は、その「業務規程」の中でライフジャケットの着用について規定することとなっている。
「遊適法」に定める「業務規程」を届け出た遊漁船業者が、その規程に従い運航している場合、「職員法」に基づくライフジャケットの着用義務は適用外とされる。すなわち、「業務規程」を守って運航している遊漁船業者には、「職員法」に基づくライフジャケットの着用義務は適用されないということだ。
しかし、もし、遊漁船の船長が乗船者に、業務規程において定められたライフジャケットを着用させていなかった場合、その船舶は「業務規程に従って運航する船舶」には該当しないため、「職員法」に基づくライフジャケットの着用義務の対象となる。この場合、「職員法」違反となるため、遊漁船の船長に違反点数が付与される。
また、「遊適法」の業務規程に従い遊漁船業を営まないことにより、利用者の安全を害する事実があると認める時は、利用者の保護のため、都道府県知事は当該遊漁船業者に対して業務改善命令を発出する場合がある。それでも改善されない場合は最悪、遊漁船業者の登録の取消しもありえる。
以上のように、釣り人が思っている以上に厳しい処分になる可能性がある。
非着用は船長の責任。釣り人も安全基準を満たしたライフジャケットを着用しよう!
船外への転落に備える義務は乗船者ではなく船長の義務であり、違反した場合は船長の責任となる。
自動車の同乗者がシートベルトをしていなかった場合、本人ではなく運転者が違反者となるのと同じ理屈であるが、乗船する釣り人側も、これを機に、「国の安全基準を満たしたライフジャケット」の着用を改めて意識する必要がある。また、釣り業界でも改めて周知に努めていくべきだ。
特に、GWや夏休みは海難事故が多い時期である。自分や家族の命を守るため、改めてライフジャケットのタイプの確認や定期点検を適切に行い、レジャーシーズンに備えておきたい。
ライフジャケットの着用義務拡大についての情報は、国土交通省公式ホームページまで。
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