令和4年2月1日から、「その他小型船舶の暴露甲板に乗船している場合」(編集部注:釣り船など小型船舶の雨風にさらされる甲板上)におけるライフジャケットの着用義務違反に対し、違反点数の付与が開始された。
釣り人側も、ライフジャケットであればどれでも良いわけではなく、「国の安全基準を満たしたライフジャケット」を着用するよう注意が必要だ。今回は、国土交通省海事局に具体的な法令の内容や、施行に至った経緯を伺った。
ライフジャケットの着用義務と違反点数とは?
釣り業界では、以前よりライフジャケットの着用推進に向けて様々な取り組みを行ってきた。ライフジャケットが命を守る効果は極めて高く、海中転落時にライフジャケットを着用していた場合、非着用時と比べ、生存率が2倍以上となることも明らかになっている。
国土交通省や海上保安庁も、ライフジャケットの着用推進に向けて取り組みを進めてきた。
平成15年の制度改正により、航行中の特殊小型船舶(水上オートバイ)に乗船している場合、12歳未満の小児が航行中の小型船舶に乗船している場合及び漁船に1人で乗船して漁をしている場合については、ライフジャケットの着用が義務付けられ、違反した船長には、小型船舶操縦士免許の違反点数が付与されることとなった。
また、その他の小型船舶の暴露甲板に乗船している乗船者については、ライフジャケットの着用は「努力義務」とされていた。
しかしながら、海中転落者のライフジャケットの着用率が低い状態が続いたため、平成29年の制度改正により、新たにその他小型船舶の暴露甲板に乗船している場合についても、ライフジャケットの着用が義務付けられた。
これにより、原則、小型船舶の暴露甲板に乗船している全ての乗船者にライフジャケットの着用が義務付けられた。
この改正については、平成30年2月に施行されたが、5年間の周知期間が設けられ、違反点数の付与の開始時期は令和4年2月からとされた。つまり、制度の改正自体は平成29年にすでに行われており、今回新たに改正されたものではないということだ。
なお、「船舶職員及び小型船舶操縦者法」(以下、職員法)においては、船長に対し、乗船者にライフジャケットを着用させる等、船外への転落に備える措置を講ずる義務を課している。このため、プレジャーボートで釣りをする時、国の安全基準に適合したライフジャケットを着用していない乗船者がいた場合は、その船舶の船長が処分の対象となる。
なお、遊漁船の船長に関してもプレジャーボートの船長と同様、乗船者にライフジャケットを着用させる義務がある(遊漁船の船長に関して、詳細は最終ページに掲載)。
対象となる船舶の種類は?淡水でも違反になるの?
職員法における「小型船舶」とは、原則として、総トン数20トン未満の船舶及び、船体の長さが24m未満のプレジャーボートで、モーターボート、水上オートバイ、漁船など、操船に小型船舶操縦士免許が必要な全ての小型船舶の事を指す。
つまり、小型船舶操縦士免許を要するプレジャーボート等で釣りをする場合、船長は乗船者にライフジャケットを着用させる義務がある。
また、職員法が適用される水域は海だけではなく、日本国内の淡水エリアも含まれる。
つまり、海釣りだけでなく、琵琶湖や霞ケ浦、北浦などでも小型船舶操縦士免許を要する船舶に乗船している場合は、船長は乗船者にライフジャケットを着用させる義務がある。