【竹村勝則・釣り記者の回顧録】大阪のハス、京のハエ

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ベテラン釣り記者の竹村勝則(たけむらかつのり)氏が「昔と今の釣り」について思うままに語る、「釣り記者の回顧録」。今回は「ハス」や「ハエ」と呼ばれるオイカワ釣りについて語ってもらいました。

昭和の時代は海釣りもさることながら、川や池の釣りがなかなか盛んでした。

特に川釣りはハエ釣りが人気で、釣り雑誌には毎号ハエ釣り記事が多く載っていました。

ハエの和名はオイカワですが、オイカワ釣りとは誰も言いません。大阪ではハス釣り、京都ではハエ釣り、中京では白ハエ釣りと方言が通っていました。今も方言は使いますが、いつの間にか「ハエ釣り」に統一された感じです。

オイカワ
昭和の時代は川や池の釣りが盛んで「ハエ釣り」の人気が高かった

当時のハエ釣り竿は、和竿で小継の見るからに美しい段巻きで2間半(4.5m)、3間(5.4m)がよく使われていました。和竿は手入れも大切ですが、魚を針に掛けてからの手応えが、先調子で何とも言えない和竿独特のしなりというか、調子というか、味わい深いものがあります。

その竿も今はカーボン製で、4.5mで何と50g前後だから、4.5m竿では日本一軽い、いや世界一軽い竿ではないでしょうか。

ハエ釣りはウキ釣り、ミャク釣り、毛針釣りなどがありますが、主流はウキ釣りです。

そのウキは今はハッポウウキがよく使われていますが、当時の高級ウキは桐で作られた「馬井助」で、ウルシ塗りの見た目も美しい見事なウキで、唐辛子型、コマ型、傘型、丸型など多種類あります。

ハッポウウキ
今は「ハッポウウキ」を使用したウキ釣りが主流になっている

トロ場では細長い唐辛子型、流れにヨレや変化のある場所ではコマ型と使い分けました。

馬井助
昭和当時人気が高かった、桐で造られた高級ウキ「馬井助」

馬井助ウキを集めたマニアが居たので、雑誌のカラー面に載せたことがあります。桐の引き出しに真綿を敷き、何百本も馬井助が並んでいるのは、見事というほかありません。

ハエ釣りのエサは昔も今もサシ虫が一般的です。今は1袋200円ぐらいですが、昔はお猪口1杯で20―30円でした。

ハエ釣りのエサは種類が多く、チシャの虫、キクの虫、ヨモギの虫、クリ虫、クモ。川虫ではピンピン、ヒラタ、クロカワ虫。麺系ではウドン、スパゲッティ、ソーメン、さらにはネリエがあります。同じ魚を釣るのにこれだけ多くのエサがあるのは他の釣りには見当たりません。

ハエを集めるマキエは昔は市販品がなかったので自分で作りました。材料は米ヌカ主体にメリケン粉、サナギ粉、酒カスなどを入れて釣行前日に作りました。

京都の川へ行くと、地元の人はマキエをしません。ハエのポイントよく知っていて、3間、3間半の長竿をビューッと振って、良型のハエを釣っていました。

私などマキエを使う大阪の釣り人は、下手へ入る場合は遠慮して少々離れて入ったものです。

マキエをしないハエ釣りは、瀬をポイントにするミャク釣りがあります。瀬には川虫類が多くいるので、それをエサにするのです。

岡山県の津山ではミャク釣りを「ブラ釣り」といって、ブラ釣りの名手が何人も居ました。

ブラ釣りの竿は2間ぐらいの和竿で、他では見られない独特の軟調子。肩からブラカゴ(ビク)を下げて静かに瀬に立ち込み、ハエを入れ食いさせる釣技は見事なものでした。

野池と違って川はなくなることなく今も流れています。しかし、最近はハエ釣りをする人が大変少なくなったのが残念です。

(了)

竹村勝則氏のプロフィール

竹村勝則氏の写真
今も編集部の中で毎年トップクラスに日焼けしている竹村さん。現役バリバリの釣り記者だ

竹村勝則(たけむらかつのり)
昭和16年生まれ。
月刊雑誌「釣の友」(釣の友社)編集長を経て、週刊「釣場速報」の編集長(名光通信社)等を歴任。
釣りの記者歴だけでも軽く50年を超え、今でも釣行回数は年間120日以上!
国内で最も古い時代から活躍する釣り記者の1人だ。

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