この「内水面釣り場の未来」第12回で「天然もんが内水面漁業を救う」と題し、淀川の自然再生事業を取り上げた。
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今回はその続きとして、淀川下流域における干潟再生の取り組みと、干潟を活用した有意義なイベントを紹介したい。淀川下流域における干潟再生の重要性を唱える京都大学防災研究所の竹門康弘准教授に話を伺った。
人工干潟造成がゴールではない
淀川河川事務所(国交省近畿地方整備局)は水質、景観、生態系等の整備と保全を目的に、必要な指導・助言を行う機関として平成9年に「淀川環境委員会」を設立した。竹門先生は同委員会の環境部会の会長と汽水域ワーキング・グループのリーダーを務めている。
干潟を語るうえで密接に関係するのが上流域からの土砂還元だ。上流からいかにバランスよく、システム的に土砂を動かすことがサステナブルな河川環境整備につながると竹門先生はいう。
淀川水系には多くのダムや堰堤が建設され、不自然になった土砂の動きをコントロールすることが今後の課題となる。淀川下流域には柴島や海老江など数カ所に人工干潟が造成されているが、まだまだ河口エリアへの土砂供給量は足りていないという。
令和元年には竹門先生の提案で阪神なんば線の鉄橋工事で出た浚渫土砂を最下流へ運び、初めて河口エリアに干潟が造成されたが、長柄地区から下流のほぼ全域が干潟だった戦後間もないころと比べると、まだまだその面積は少ない。
竹門先生は淀川の干潟を再生するには30年ぐらいの長期計画が必要だという。まずは干潟を造成するうえでポテンシャルが高い場所を洗い出し、今年から本格的な議論に入る。
ただ、人工干潟造成がゴールではない。
その場所は土砂を運んだだけの埋立地や人工島のようなもの。本物の干潟はその場所から土砂が自然に動いた場所にできるべくしてできる。土砂がその場所にたどり着くにはとても長い時間を要し、大阪湾の沈降もあるので土砂を継続していかなければならない。
秋になればハゼ釣りで賑わい、春になれば天然遡上アユが大挙して上流を目指し、秋になれば抱卵したモクズガニが川を下る…。そのような多様性に富んだ環境を取り戻すにためには、市民が河川環境に目を向けることも大切だと竹門先生はいう。
釣り界は釣り人に対し、「ただそこにいる魚を釣る」だけでなく、環境や生き物を観察しながら釣りを楽しむ習慣や術を提案すべきではないだろうか。
今回リポートしている石干見(いしひび)漁体験は子どもたちがワクワクするイベントであり、環境へ目を向けるとてもいい機会になっていた。
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