中聖牛や竹蛇籠など伝統的河川工法の長所とは?
活かす会の竹門康弘代表は、竹蛇籠や中聖牛の設置について以下のように語る。
「中聖牛や竹蛇籠など伝統的河川工法は優れている点が多々あります。まず自然素材が使われており不均一の隙間ができることが挙げられます。2015年には竹蛇籠を3本重ね、水制として設置したのですが、竹蛇籠自体が魚やエビ類の逃げ場や格好の隠れ場になりました。竹蛇籠を設置した下流のワンドには様々な稚魚やメダカ等の生息が確認されました。
また、竹蛇籠の設置により、比較的単調な砂地が多い木津川で砂利の浅場に深みや流速の速い瀬、ワンドを作る事が出来ることが実証されました。
次に中聖牛の設置も行いました。中聖牛は竹蛇籠より高さがあり、立体構造を保ちます。その結果、増水時に下流側の流速が落ちて土砂を堆積させることによって、環境をより多様化することができます。
中聖牛は河床に固定しない点も大きな特長です。中聖牛は周囲の砂が削れると自重で沈んでいき、土手を作る基盤にもなります。更にすごいのが、中聖牛は約4mの高さがありますが、上流から流れてきた竹や柳などが引っ掛かり、高さが増します。中聖牛は成長するのです。
また、流れてきた植物が根付いて成長を続けた結果、中聖牛自体が樹林化する温床にもなり、河川環境の多様化につながります。
中聖牛のこのような特性を理解すれば、河川管理に効果的に活用することができます。例えば削られると困る場所の上流に中聖牛を設置すれば、上流から流れてくる土砂や流木によって天然の防御壁が出来ます。いわば、自然に対して力づくで制御するのではなく、自然の力を借りて制御することができるのです。
このように土砂の動態を制御する役割こそ伝統的河川工法の優れている点であるといえます。土砂が新たな地形を作れば、そこが魚の繁殖場になり、また仔稚魚の生息場にもなります。
人工物によって水流をコントロールするのではなく、土砂をコントロールすることによって生息場が自然に形成されるように促す考え方。これこそが日本でもともと行われていた土木技術であり、日本の環境に適した河川管理の方法であると考えています。
中聖牛や竹蛇籠は自然素材ですから10年ほどで崩壊すると思いますが、日本では壊れることにも意味があるのです。
河川の流れは変化しますから、10年もすれば中聖牛が必要な場所も変化します。これがコンクリート等の構造物であれば、河道が変わった場合、必要でない場所にあり続ける可能性があります。むしろ、10年以内に自然に戻り、必要な場所に新たに設置することを繰り返す方が合理的であり、持続可能性が高いと言えます。
災害の多い日本のような国では、あらかじめ状況が変化する事を想定して、変化に対応しやすい対策を選ぶことが賢い国土利用の考え方だと思います。
木津川での竹蛇籠や中聖牛を使った環境改善の実験ではたいへん有意義な知見を得ることができました。治水という元来の目的に環境改善という新たな目的も付加して、今後各地の河川に伝統工法を活用する取り組みを拡げていければ良いと思っています」。
(了)
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