アトラスジャパン設立への想い。「時代を越えて発展し続ける会社やブランドに」DUO安達政弘社長が語る

スペシャル ニュース

2021年3月に発表され、釣具業界でも大きな話題となっているアトラスジャパンホールディングス株式会社の設立。同社はデュオ、レイドジャパン、ヴァルケインの3社が経営統合する事により設立された新会社だ。新会社設立への思いや、新会社が目指すものなどについてアトラスジャパンホールディングスの代表取締役でもある、デュオの安達政弘社長に話を聞いた。

デュオの安達政弘社長
デュオの安達政弘社長。アトラスジャパンの代表取締役も務める

4月1日よりスタートしたATLAS JAPAN HOLDINGS(株)(アトラスジャパンホールディングス。以下、アトラスジャパン)を改めて説明すると、同社は安達政弘氏と金森隆志氏が50%ずつ株式を保有し、両者が代表取締役を務める持ち株会社だ。デュオレイドジャパンヴァルケインの3社はアトラスジャパンの子会社となる。

アトラスジャパンは単なる持ち株会社ではなく、子会社が別々に行っていた営業、物流、事務、知的財産権の管理等を行う。企画、開発、広報等は従来通り子会社の3社が個別に行う。3社が経営統合を行った事により、グループ全体の売上高は45億円に迫る規模となる。国内最大規模のルアーメーカーグループの誕生に、釣具業界でも大きな話題となっている。

経営統合の経緯や目的については2021年3月8日にデュオ本社で開かれた記者会見でも発表された。

アトラスジャパンの記者会見の様子。金森隆志社長、安達政弘社長、菊地栄一社長の3名
記者会見の様子。釣具業界でも大きな話題となった

3社が共同でビジネスを行っていく上で最もシナジー効果が発揮できる形として、持ち株会社のアトラスジャパンが設立されている。今回の新会社設立について、安達社長に詳しい背景や目的等を聞いた。

変化し続けるルアービジネス。避けられない国内外のメーカーとの競争

―以下、安達政弘社長
アトラスジャパンを設立した背景ですが、記者会見でも述べた通り、ルアービジネスを取り巻く環境の変化というのが大きな理由の1つです。

一般的にルアーメーカーが自社で生産設備を持つ事は、大きな強みになります。しかし、時代やビジネスを取り巻く環境によっては、強みばかりではなくなる場合もあります。何故なら、生産設備の維持や拡大には、企業が持つリソースの多くを、常に割いていく必要があるからです。

例えば2018年に竣工した当社(デュオ)の新工場ですが、すでに手狭になりつつあると感じています。旧社屋の6倍の容積を持つ新社屋ですが、会社の成長スピードが想定より速いこともあり、予定よりも早くに生産キャパシティを超えてしまう事も考えられます。

デュオの新社屋
2018年に竣工したデュオの新工場と新社屋。国内最大級のルアーの生産設備を備える

工場ではプラグで年間約400万個を生産できる想定で作りましたが、これが将来、年間800万個、1000万個と増産が必要になった場合、新たな生産設備が必ず必要になります。では、その工場をどこに建てるのか。必要な人材確保はどうするのか。費用はどうするのか。こういった問題を、生産設備を持つメーカーは必ず解決していかなければならないのです。

デュオの工場内にある巨大水槽
デュオの新工場内にある巨大水槽。様々な水深でルアーの動きの解析ができる

一方で欧米のルアーメーカーの多くは、自社で生産設備を持つ事を最初から想定していないように見えるやり方で、商品企画、デザイン、プロモーション等に特化する経営手法を取られています。

我々も世界中に事業を拡大していく上で、必然的にこういったデザイン等にフォーカスしている企業と競合する状態になります。 

ただし、ファブレスの企業は、信頼できる生産拠点の担保が必ず必要となります。自社で生産をしないため身軽な部分もありますが、生産を他社に依存するのですから、その担保が揺らげば経営上重大な危機に陥る可能性があります。

ただ、ビジネスのボーダレス化は進み続けています。ネットの普及もますます加速しています。世界の釣り具の工場とも呼ばれる中国においても、知的財産権の保護等の意識も昔に比べると高くなっています。こういった背景もあり、自社で生産設備を持たずとも、安定した生産拠点の担保を得る事が、昔と比べると容易になってきたと思われます。

我々が成長していく限り、特別に意識はしなくても、国内外問わず、そういった商品開発やデザイン等に特化している企業と、競争を強いられる状況になります。

このような状況で、我々が今後も発展していくためには、デザインやプロモーション等に特化したファブレスメーカーの手法も取り込んでいく必要があると以前から考えていました。

レイドジャパン、ヴァルケインも絶対的に信頼できる生産拠点を確保。今まで以上に強みを強化

当グループ(アトラスジャパン)で言えば、レイドジャパンはもともとプロモーションスキルの高い会社です。ヴァルケインもそうですが、アトラスジャパンを設立し、グループ会社になる事で、両社とも絶対的に信頼できる生産拠点を得られる事になります。

更に営業インフラ、物流インフラもアトラスジャパンが担いますから、今まで以上に商品開発やプロモーション等に専念する事が出来ます。これは今後の成長を考える上でも、非常に大きな強みになります。

シナジー効果を語る安達政弘社長。釣具業界ではあまり見られない経営統合だがメリットは大きい

デュオについても、製造は引き続きデュオで行いますが、営業や物流はアトラスジャパンが行いますので、デザインやプロモーションに今まで以上に多くのリソースを割くことが出来ます。

新会社設立で、シナジー効果がすぐにあらわれるのは物流経費です。これまで別々に行っていた物流を1つにまとめるのですから、物流経費は大幅に削減できます。

また、具体的な動きはこれからになりますが、海外展開についても大きなシナジー効果が見込めます。

例えば、デュオの場合、現状は海外から注文のあった商品を発送しているだけの状態です。メーカーというより問屋的な動きしか出来ていなかったのが現状です。しかし、3社が集まる事によって、例えば国によってはデュオの商品よりレイドジャパンの商品が市場に合うと判断すれば、そちらを営業できますし、特定の地域や国についてはアトラスジャパンとして動く事も可能です。

さらに、海外への発送業務や諸手続き、集金リスク等を考えると小規模な企業が個別に輸出業務を行っていては非効率です。これも集約する事によって効率を高め、海外展開を加速させる事も出来ると考えています。

経営者である以上、会社を伸ばす、内容を良くしていく事に挑戦し続けていく

そもそも、今回の新会社設立は会社を継続して伸ばしていくという使命感があるからです。例えば世界ではルアーを中心に展開しているトップメーカーは、日本円で350億円前後の売上高があります。理論上は、現実にそれだけのマーケットがあるのですから、我々もそのレベルまで行くことは出来るはずです。

私は経営者である以上、会社を伸ばす、会社の内容を良くしていく事に挑戦し続けていきたいと考えています。アトラスジャパンの設立は、それぞれの会社やブランドが、時代を越えて、継続して発展し続けていく会社にしたいという思いが根底にあるからです。そうでなければ、自分の議決権を半分にしてまで新会社を作りません。

経営統合をせずとも、3社とも多くの方から支持されているブランドですし、財務内容も全く問題ありません。それでも、経営統合して更に競争力を高めるために新会社を設立し、経営者としては今まで以上に甘えの許されない体制にしたのです。

そもそも、自分が引退する時に誰からも支持されないブランドに落ちぶれているなんて、絶対にイヤじゃないですか。私も今50歳ですが、企業を存続して発展させる覚悟がないのなら、若い人を雇うのは無責任だと思っています。自分が元気な間はいいのですが、「それ以降は分かりません」では、夢を持って入社してくれた若い人がかわいそうだと思っています。

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