「釣具業界の法律相談所」は、釣具業界でも起こる可能性のあるトラブルについて、弁護士の先生に聞いて見解や対処方を紹介するコーナーです。
今回の相談は「SNSのなりすましアカウントで自社のファンが被害に遭ってしまった。なりすましアカウントの使用者やSNS運営会社に対して損害賠償を求める事は出来るか?」という問題です。
最近も多く見られる「なりすましアカウント」。被害に遭っている企業は、どのような対策が取れるのでしょうか? 担当者必見の内容です(※質問は全て架空の質問です。実際の企業等とは全く関係ありません)。
【質問】当社のなりすましアカウントを使っている使用者、SNS運営会社を訴えることはできますか?
当社は釣具メーカーです。ルアーの企画・製造販売を行っており、SNSを通じて釣り人(消費者)に新製品の案内やキャンペーン情報等を発信しております。
当社は特にSNSに力を入れており、フェイスブック、インタグラム、ツイッターなど様々なSNSで公式アカウントを作成し、フォロワーを増やすためにも日々情報発信をしております。おかげ様でそれぞれのフォロワーも増えて、特にインスタグラムのフォロワーは2万人を超える人気アカウントとなりました。
当社では、インスタグラム等のSNSを活用し、限定品のルアーの抽選販売を行う事もあり、大好評で毎回、即日完売します。当社としてもSNSは重要な営業ツールと認識しています。
ある日、お客さまから当社にクレームの電話がありました。そのお客様は、当社のインスタグラムのフォロワーだと言われます。内容は「限定ルアーが安く購入出来るキャンペーンに当選したという連絡がインスタグラムのダイレクトメール(DM)で届いた。誘導されたサイトで必要事項(氏名、住所、クレジット番号など)を入力し、限定品のルアーをいくつか購入した。しかし、何日経っても商品が届かない。どうなっているのか」という内容でした。
当社は困惑しました。当社ではお客様が言っておられるような「限定品を安く買えるキャンペーン」は行った事がありません。商品のネット販売は当社も行っていますが、セールや値引き販売は行った事がありません。
再度お客様にどういったサイトだったか、アドレスなどを聞くと、明らかに当社とは無関係のサイトでした。
なりすましアカウントの存在が発覚!
そもそも、DMが届いたというインスタグラムのアカウントも確認させて頂くと、当社の公式アカウントではありません。アカウント名は微妙に異なっていますが、使用されている画像などは当社のものが無断でそのまま使用されています。フォロワー数も数百人と全く異なり、完全な「なりすましアカウント」でした。
当社の「なりすましアカウント」が存在する事は、この時に初めて知りました。そのため急いでフォロワーに対して「なりすましアカウント」をフォローしない、DM等が届いても絶対に対応しないといった注意喚起を行いました。
被害に遭われたお客様には、警察に被害届けを出して頂く事を薦めました。また、正しい事かどうかは分かりませんが、当社の大切なお客様ですから、お見舞いという形で、限定のルアーを1個、無料で送付させて頂きました。ただ、お客様が被害に遭われたという金額は、それ以上の金額です。
そこで、弁護士の先生に質問です。インスタグラムに限らず最近はSNSの「なりすましアカウント」が増えていると聞きます。この「なりすましアカウント」によって、今回は当社のお客様が被害に遭われてしまいました。これは当社の営業の著しい妨害行為であると感じています。
「なりすましアカウント」によって、当社のアカウントに対して不信なイメージを抱く人も増える事が予想され、今後、フォロワー数の伸びも鈍化するかもしれません。さらに、当社自体のブランドイメージも傷ついていると感じています。この「なりすましアカウント」の使用者に対して、当社は何らかの損害賠償を求める事は出来るのでしょうか。
また、運営者であるSNS運営会社にも不信感を持っています。当然、「なりすましアカウント」の削除依頼等は事件発覚後に出しましたが、当社が調べたところ、おそらく半年以上、「なりすましアカウント」をSNS運営会社側が放置していたため、このような事件が起こったと考えています。当社に限らず、以前から問題となっていた「なりすましアカウント」に対して、SNS運営会社側が適切な対応をしてこなかった、と私は感じています。
そのため、SNSを運営する会社にも、何からの賠償を求めるつもりですが、法的な根拠は分かりません。SNSの運営会社側に何らかの賠償を請求できる可能性はあるのでしょうか?
※質問は全て架空の質問です。実在の企業、メーカー等とは一切関係ありません
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