・内部標識
外部標識に対して内部標識と呼ばれる標識がある。
まず、例として、耳石蛍光標識を紹介する。
この方法は、放流魚の飼育水に特殊な蛍光物質を溶かし込み、蛍光物質を放流魚の骨組織に取りこませる方法だ。放流魚の全標識が24時程度の処理時間で可能。標識時に魚のハンドリングが不要のため、仔稚魚でも標識可能だ。
極端な場合、骨組織の一種である耳石が形成されている卵(発眼卵)の時点で標識ができる。欠点は、蛍光物質の人への安全性が未知であり、実験や研究レベルの標識も自粛されている。
また、耳石の蛍光を確認するために、小さな耳石を取り出す必要があるほか、蛍光を確認するために耳石を薄く研磨したり、特殊な顕微鏡が必要になる。現在では、高額な蛍光物質の代わりに、安全な天然色素を用いた標識方法が確立されつつある。
次に、遺伝(DNA)標識がある。放流魚は、決まった親魚から卵をとり、生産されている。そのため、親魚と放流魚には、親子関係が成立する。実際には、放流魚の親魚のDNA型をあらかじめ調べ、放流後に採集された魚のDNA型と照合する。親子関係が成立すると放流魚ということになる。
この遺伝標識は、生産された放流魚の全標識が可能で、標識放流魚の大きさ制限や標識の脱落もない。
欠点は、DNAを抽出したり、検出するのに時間と費用がかるほか、DNA鑑定技術が必要だ。これまで、放流魚への遺伝標識例は非常に少ない。
標識放流魚を釣りあげたら最寄りの水産研究機関に連絡を
以上、放流魚の標識方法について概括しみた。今のところ、放流魚の生残や移動に関するデータは十分とは言えない。
研究機関の研究者は、朝早くから市場調査に赴き、標識魚を調べている。外部標識は、漁業者も見つけやすく、標識魚を漁獲した場合は最寄りの研究機関に連絡するなど、協力態勢が出来上がっている。
放流魚の知見を蓄積し、放流効果を今以上に向上するために、釣り人の皆様も標識放流魚を釣りあげたら、最寄りの水産研究機関に連絡してほしい。
(了)
関連記事 → 【海野徹也】魚に愛、自然に感謝、釣り人に幸。放流の問題、放流直後の生存 | 釣具新聞 (tsurigu-np.jp)
関連記事 → 「年なしのチヌ」って本当は何歳?クロダイ(チヌ)の全ての解明を目指す、広島大学の海野徹也教授を取材 | 釣具新聞 (tsurigu-np.jp)
関連記事 → 【海野徹也】魚に愛、自然に感謝、釣り人に幸。「初期減耗と種苗放流」~魚たちは実に厳しい世界を生き抜いている~
関連記事 → 【海野徹也】魚に愛、自然に感謝、釣り人に幸。~放流先進国の日本。原動力は世界に誇る種苗生産技術!~
関連記事 → だからキジハタ(アコウ)はよく釣れる?大阪栽培漁業センターを取材