公益財団法人日本釣振興会は、防波堤等を安全に管理し釣り施設として有効活用することで、地域経済に与える経済効果を示した「釣り開放施設の経済効果調査」を実施しましたので、ここにご報告申し上げます。
本調査では、日本各地の釣り施設より、2009年以降に開設された、これまで立入りや釣りが禁止されていた防波堤を、釣り施設として新たに開放した4地域・施設である秋田港、相馬港(福島県)、直江津港(新潟県)、熱海港(静岡県)を対象に調査を行いました。
1.釣りに伴う消費市場の規模と港湾・漁港の釣り開放施設ニーズ
我が国の釣り人口は520~670万人、釣り関連の市場規模は約2600~3400億円と推定され、釣り開放は地域振興・海業振興資源となり得ると考えられます。
また、港湾・漁港に有人で管理する釣り開放施設がある場合、釣り人の40%以上が「1度は施設を利用してみたい」と回答しており、施設利用需要は高いことが分かりました。
2.港湾・漁港施設の釣り開放の効果
秋田港、相馬港、直江津港、熱海港の釣り開放施設利用に伴う経済波及効果は全体で約5億4000万円、雇用の創出は42人であると推定されました。
防波堤100mあたりの経済効果として、地元への経済波及効果は3200万円、雇用創出は2.5人と推定されました。また、潜在的な利用者の釣り消費額増加額は現状の約28倍と推定されました。
この他に、次のような効果があると各施設の運営者から報告されています。
・危険な釣り場での釣りをする人は顕著に減少する
・ゴミの投棄、放置といった問題がほぼ解消される
・荒天時の釣りなど施設の利用ルールが守られる
・周辺地域の商業施設等への立ち寄りなど、地域の商業収益の向上につながる
・適切な料金設定により施設スタッフの雇用が確保でき、持続的な運営が可能となる
3.有料の釣り開放施設の運営可能性について
既存施設の運営実態調査から、有料の釣り施設の利用者が多い事が明らかになりました。また、釣り施設への来訪意思を確認したアンケート調査結果からは、実際の利用者数の5倍以上が利用する可能性があると推定されました。
ほか、施設利用に伴う支払可能金額は下図に示すとおりであり、主に地元・周辺地域の釣り人が来訪する釣り場(秋田港、相馬港、直江津港)では、1800円の入場料と設定した場合でも、来訪意思のある釣り人の50%は来場する可能性があることを示しています。また、熱海港のように観光客等が訪れる釣り場では、その額は3500円となっています。
4.まとめ
本調査により、港湾・漁港施設を有料の釣り場として施設開放を行うことで、港湾・漁港における釣り人利用に伴う釣り人の安全、環境やマナー問題等の多くの問題が削減されるとともに、一定の地域経済波及効果があることが明らかになりました。
また、適切な運営計画に基づいて釣り場開放をすれば、有料施設として自立的な運営も可能であると考えられます。
問い合わせ先は、日釣振水際線有効活用委員会事務局 (担当:吉野)(TEL 03-3555-3232)。
【提供:日本釣振興会・編集:釣具新聞】
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