1月19日、釣りフェスティバルが開催されていたパシフィコ横浜のアネックスホールで、公益財団法人日本釣振興会環境委員会のシンポジウム「淡水魚はなぜ減った?」が午後1時より開催された。シンポジウムの会場には130人を超える参加者が集まり、関心の高さが伺えた。
冒頭、公益財団法人日本釣振興会環境委員会の鈴木康友委員長より開会の挨拶が行われた。挨拶では、このシンポジウム開催までの経緯等が紹介された。
このシンポジウムには4名が登壇し、それぞれ講演を行った後、パネルディスカッションや質疑応答が行われた。
釣りは資源の社会的センサー。個人で行われた調査も重要に
最初に山口大学国際総合科学部の杉野弘明氏より、「『つり人』がみつめる淡水魚のこれまでとこれから」という題目で話題提供が行われた。
主な内容としては、「釣りは資源の社会的センサーである」という話が行われた。
その中で、国交省の河川水辺国勢調査の結果では、1994年から2000年頃までは全国の多くの河川でオイカワやウグイの個体数が多くなっているが、それ以降は減少している事などが紹介された。一方でオイカワやカワムツは回復している河川もある事が紹介された。
ただ、こういった調査は個人で行われた調査も重要で、公的な調査と釣り人、個人、研究所などで調査結果を共有していくと良いデータとなる事等が報告された。
魚の減少原因は「生物」、「化学」、「物理」に分けられる
次に講演1として、国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所主任研究員の坪井潤一氏が「淡水魚の生息環境を考える」という演題の講演を行った。
講演内容としては、魚が減った理由はいろいろあり、生物、化学、物理と分けて考えてみたい。生物はカワウや外来魚など、化学はマイクロプラスチックやネオニコ等、物理はダムや川の単調化等があり、今回は生物と物理に絞って紹介する。
例えば那珂川では鮎を獲っているのは、釣りと投網でほとんどを占める。そのため、産卵時期、産卵場所の漁獲規制は必要であると思われる。
ただ、通年川に生息するウグイやオイカワ、ハヤ、ヤマベにとってはカワウも相当に脅威と思われるため、調査をしてみた。すると、アユの放流場所とカワウの生息域が重なっており、アユの放流でカワウを育てている状況もあるのではないかといった事も分かってきた。
ほか、鳥取県ではカワウ対策というより、アユが上りやすい川作りを行い、天然の魚を増やしていく取り組みが行われている。川の上下流が行き来できる状況が大切といった話も行われた。
埼玉の河川の9割はアユが住める環境
次に埼玉県環境科学国際センター研究推進室水環境担当部長の木持謙氏が「埼玉県内河川における魚類相と水質の編成」というテーマで講演を行った。
埼玉地域の概況、環境DNA分析による魚類相調査、埼玉県内河川における魚類相と水質の変遷、今後の課題と展望という流れで話が行われた。
まず埼玉県の内水面漁獲量はピーク時(1986年)の約4%まで激減している。いろいろな理由もあるが、川に行く人がいなければ川や生物相に関心を持っている人も減ってしまい良くない状態になる。
では、水質はどうなっているのかいうと、河川の9割以上がアユが住めるようになるほど改善されているなど様々なデータも紹介された。
また、釣果と水質のデータを組み合わせる事で、より質の高いデータとなる。釣り文化とともに、豊かな里山、里川、里海を未来につないでいきたいという話が行われた。
水田での農薬使用削減が釣り場の環境を良くする
最後に東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の山室真澄氏が「田んぼの農薬で魚が減った?私たちにできる事」という演題で講演を行った。
宍道湖でワカサギやウナギが減った原因はネオニコチノイド系農薬である事、淡水湖沼で起きているワカサギの減少もネオニコが原因と証明出来るか?、川で魚が減っているのはネオニコ等が原因か?、私たちに出来る事、という4つの項目に分けて説明が行われた。
ネオニコチノイド系農薬について様々な説明が行われたが、水田での農薬を無くす、あるいは減らす事で釣り場の環境も良くなるはずという話が行われた。
その後、休憩をはさみパネルディスカッションや質疑応答が行われた。
ここでは、ネオニコチノイドに関する話題が多くなったが、活発な質疑が行われた。淡水魚の減少やネオニコチノイド系農薬に関して、関心を高める良いシンポジウムとなっていた。
↓ シンポジウムの模様は、日本釣振興会公式YouTubeチャンネルから視聴できる ↓
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