日本さかな専門学校は、今年4月に開校した日本初の「さかな」を総合的に学ぶ専門学校。神奈川県の三浦半島先端に位置して目の前には海が広がり、校舎の正面にはマグロで有名な三崎港がある。そして、その向こう側には城ヶ島と、その右側には広大な相模湾が広がっている。
校舎は2階建てで、1階部分はたくさんの水槽が並び魚の飼育や観察、実験を行うための広いスペースが設けられ、2階部分には明るい教室と職員室、そして調理、解剖、制作、化学実験などを行う部屋が並んでいる。
実はこの建物は万一の津波が起きたとき、外壁が外れ津波を逃がす構造となっていて、2階部分は想定される南海トラフ級の地震に耐える階高(かいだか・建物1階分の高さ)10mに設定されている。
日本初「さかな」を総合的に学ぶ専門学校!釣りエサのスペシャリスト・長岡寛氏が訪問
今回は「釣りと魚の科学」というタイトルでの講義と、ワークショップで金型を用いたソフトルアー制作実習の依頼を賜り、初訪問となった。
もしも私が生徒だったら、魚釣りにとっての周囲の環境が良すぎて、授業が頭に入らないのではないかというのが正直な第一印象である。
出迎えてくれたのは、今回窓口となっていただいた高橋政雄先生(教育部次長)と、山田博和先生(助手)。
高橋先生はご自身も磯釣りが大好きという方で、山田先生はスキューバダイビングを得意とされている。先生方自身のこうした取り組みは生徒の育成に直結していると共に、大変明るく熱心な先生方であることが会話や実習を通して伝わってきた。到着早々、学校長の松山英一先生もご挨拶のために講義室に足を運んでいただいた。
設置されている学科は、3年制の海洋生物学科と4年制の海洋生物研究学科があり、初回の8月22日は1年生3クラスのうち1組、2組の2クラス合計50名を対象に実施し、3組の生徒さんについては翌月実施した。
対象は今年入学したばかりの1年生ということで、現段階では特に学科として分かれたクラスではない。
専門学校としての理念は魚に関する飼育、調理、漁業、観光レジャーなど魚に関する知識と実技を幅広く学ぶ場を提供し、人と魚がよりよいカタチで共生していくことを目指している。
そうした中に釣りも含まれていて、釣具メーカー、有名釣り師、漁業関係者、流通関係者、魚の専門家といった方々が講師として授業を行うだけでなく、メーカーや水族館などに訪問して見学を行う、担当者から話を聞くといった中身の濃い授業が毎日実施されている。
さらに、生徒達には1人に1つずつ魚を飼育する水槽と活きた魚が供与されていて、自らが責任をもって飼育することになっている。これも75名の生徒分となるため水槽が並んでいる様相は、ミニ水族館さながらの雰囲気となっている。
講義で魚の生態と製品開発について学ぶ。ワーム製作実習も大好評
今回私が行った講義は、本紙にも連載されている「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」の内容を基に、専門学校生ということで、魚の生態から学んだ知識を製品開発に応用していく上で、必要と思われる考え方についてなどを加えたものである。
講義の内容で、「魚の耳はどこにある?」、「魚は色を識別していますか?」といったいつもの質問に対しては、流石に魚好きな生徒さんとあってほとんどが正解の方に挙手した。また魚の歯の構造についてはとても充実した実験室があり、どこに展示しても恥ずかしくないレベルの標本が作製されていた。
その一方で、製品開発に直結する上で必要な魚の知識については大変熱心に耳を傾けていて、講義と実習が終わった後にも質問が途切れることはなかった。
講義に続いてソフトルアーの制作実習を行ったが、本物の金型を使って製作することは全員が初めてで、実習室は樹脂を溶解させるホットプレートの熱に加え、生徒たちの熱気も加わり大変な盛り上がりを見せた。
実習はクラスを半数に分けて、その間アンケート調査も実施した。魚の専門学校生ということで、講義の感想のほか、好きな釣り物等についても質問した(記事下に掲載)。
設問の中で、釣りの障害となっている要因についての回答を見て意外であったのは、すぐ目の前に釣り場が広がっているものの、釣り場の情報、釣りを教えてくれる人、交通手段の制約が思いのほか多かったということである。
こうした中に、更に釣りを普及させていく多くのヒントが隠されているように感じた。
この他、日本釣振興会で取り組んでいるネオニコチノイド系農薬の対策と、知識についても話をさせていただき、「よつば生協」さんで作成されたユーチューブ動画も放映した。
また、昨年特許を取得した「オキアミブラック」や、5月に発売を開始した摂餌促進液「クックックサイゼ」といった自身が製造元となっているMAKOTOFISHINGの商材の機能についても説明をさせていただき、強い関心があることを伺うことが出来た。
講義と実習は合計3時間で、昼食を挟み午前と午後の2回に分けて行われ、好奇心旺盛な生徒さんと先生に囲まれてあっという間に終了となった。
今回段取りをしていただいた高橋先生、山田先生は近い将来、ここにいる生徒たちが魚に関連する色々な分野に巣立っていくことを心より楽しみにしておられる様子で、猛暑の中、いい意味で更に熱い1日となった。
「釣りと魚の科学」受講者アンケート
回答者性別…男性(55名)、女性(7名)、合計(62名)
回答者年齢…18歳(33名)、19歳(22名)、20歳(6名)、29歳(1名)
1.魚釣りをしますか?
する(54)
しない(8)
2.1で「魚釣りをする」と答えた方、釣りを始めたキッカケは何ですか?
家族(15)、父(10)、祖父(6)、親戚(2)、その他(5)
3.1で「魚釣りをする」と答えた方は、何を釣りますか?
カサゴ・根魚(7)、シーバス(6)、トラウト(4)、全魚種(4)、青物(3)、渓流(3)、その他(20)
4.1で「魚釣りをしたことがない」と答えた方は、釣りをしてみたいですか?
はい(6)
いいえ(0)
無回答(2)
5.1で「魚釣りをする」と答えた方、普段愛用しているメーカー・ブランドを教えてください
【竿】
ダイワ(23)、シマノ(13)、メジャークラフト(4)、ジャッカル(2)、ダイソー(2)、その他(9)
【リール】
ダイワ(25)、シマノ(14)、ダイソー(2)、その他(5)
【ルアー・エギ】
ダイワ(9)、シマノ(6)、DUO(4)、ジャッカル(4)、メジャークラフト(3)、ヤマシタ(3)、ヴァルケイン(2)、エコギア(2)、ダイソー(2)、その他(10)
【エサ】
マルキユー(12)、活きエサ(3)、ダイワ(1)、ヒロキュー(1)
【糸】
シマノ(6)、デュエル(4)、サンライン(4)、ダイワ(3)、ダイソー(3)、バリバス(3)、ヤマトヨ(2)、その他(4)
6.1で「魚釣りをする」と答えた方、誰と行きますか?(複数回答OK)
友人(44)、家族(22)、1人(16)、その他(2)
7.1で「魚釣りをする」と答えた方、どれくらいの頻度で行きますか?
月3回以上(25)、月1~2回(12)、年3~6回(9)、年1~2回(5)
8.魚釣りに行くとき何が障害になりますか?(複数回答OK)
道具や仕掛けが高い(32)、交通手段の問題(31)、釣り場がない・場所が分からない(22)、釣り方が分からない・教えてくれる人がいない(14)、部活や習い事で時間がない(13)、手洗いなどの問題(10)、その他(8)
9.今回の講義はいかがでしたか。講義の感想を教えてください
知らない事がたくさんあった(13)、今までの常識を覆す講義でした(7)、魚の餌の見え方、色の違いなどが参考になった(7)、話も内容も面白かった(6)、ネットとは全く違う話やデータが聞けてとても興味深かった(5)、今後のルアーの参考にしたい(4)、魚の生態を活かした釣りの話が面白かった(4)、今後の釣りに参考になることをたくさん聞けた(3)、餌やルアーに魚の習性を活かしていく事が参考になった(3)、違った視点で釣りに向き合えそうでワクワクした(2)、データやグラフが分かりやすかった(2)、他(回答は一部抜粋)
10.今回聞けなかった事で聞きたい事はありますか?
マダイイエローが黄色になった理由、日常生活の中でアイディアが出た事はありますか?、サーフのルアーでオススメのカラーを教えてください、環境問題について聞きたい、大型魚類の養殖について、業界における就職について、他(回答は一部抜粋)
11.講義は楽しかったですか?
はい(55)
いいえ(0)
無回答(5)
12.実習は参考になりましたか?
はい(55)
いいえ(0)
無回答(5)
13.実習の感想を教えてください
初めてのワームづくりが楽しかった(12)、上手く出来て良かった(6)、ワームの製造工程が理解できた(5)、簡単に製作出来ることに驚いた(5)、高熱の液体が金型に入れるとすぐに固まったので驚いた(3)、製作したワームを使ってみたい(3)、他(回答は一部抜粋)
14.あなたの釣りに対するイメージを教えてください
楽しい(14)、かっこいいアウトドアスポーツ(13)、お金がかかる(4)、マナーが悪い(3)、辛抱強さが身につく(3)、その他(30)
【提供:長岡寛・編集:釣具新聞】
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