魚に味覚はあるのか?コイを使った実験で検証!気になる結果は…?

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釣りエサのスペシャリスト・長岡寛さんの連載「お魚さんッ、私のエサに食いついて!」です。釣りエサに関する事以外にも魚の生態や環境など様々な内容を紹介します。

今回は、お魚さんにの味覚について解説して頂きました。

味を感じるプロセスとは?

私たちは、口に入れた食べ物が舌に触れたとき初めてその味覚を感じることが出来ます。

味覚はその食べ物が美味しいのかそうでないのか、あるいは食べても大丈夫なのかそうでないのかといった、生きていくうえで大変重要な情報を体に取り込む(嚥下する)直前の最終判断を下す重要なプロセスとなっています。

味覚によって美味しい食べ物であると感じれば唾液が多く出て、食べるという行為が促進されますが、不味いものであれば分泌される唾液の量は少なくなり食べる量は少なくなります。

さらに、強い苦みや酸味を感じると場合によっては吐き出してしまうことがあります。その行動は、それを体に取り込むことによって健康を害する危険性があるということを、味覚によって判断することにより起こります。

ところで、私たちが感じる味覚は食べ物が舌に触れた時に初めて感じることができます。それは、味を感じさせる成分すなわち呈味(ていみ)物質の多くは水溶性であるため、唾液を帯びた舌に触れることにより伝わってくるためです。

一方、匂いについては前回お話ししましたように、直接触れなくても空気中を伝わってきた匂い物質を鼻で感じることが出来ます。

人は味覚と嗅覚をそれぞれ別の感覚器官で感じているイメージ
人は味覚と嗅覚をそれぞれ別の感覚器官で感じている

お魚さんは匂いと味の区別が出来ないって本当?

では、水中で食事をしているお魚さん達の味覚は、どのような仕組みになっているのでしょうか?

水の中では匂い物質も呈味物質も水中を伝わってきますから、匂いと味の区別はしていない、あるいは出来ないのではないかと考えて良さそうです。

実は、1969年に出版された書籍「釣りの科学」(岩波書店)によれば、お魚さんは匂いと味の区別は出来ないということが明記されています。

魚は味覚と嗅覚を区別していないというイメージ
かつてお魚さんの味覚と嗅覚は区別していないという説があった

それに付随して、魚の口の周囲に生えているヒゲも味覚を感知することはなく、物体に触れたことを感知するための触覚であるという説明も付け加えられています。

ところが後の研究によって、お魚さんにも人の舌にあるものと同じ役割をする、「味蕾(みらい)」という味覚を感知する器官が存在していることが解明されたのです。

コイに味覚はあるのかな?実験で検証!

もう20年近く前の話になりますが、「所さんの目が点」というテレビ番組の収録依頼を受けたことがあります。当時のマルキユーにはお魚さんを飼育している専用の部屋がありましたので収録が可能でした。

タイトルは「コイに味覚があるのかな?」というものです。

コイの動きがテレビカメラに映りやすいように透明のアクリル水槽を設置し、雰囲気を出すために水槽の底面に砂利を敷き詰めました。

撮影本番の日にいきなりライトアップしてしまうと、コイが驚いて実験の収録が上手くいかなくなる心配があるため、数日前には設置した水槽に数尾のコイを入れて、普段通りに餌を与え、当日の収録時に近い状態にライトアップして準備完了です。

さて、本番当日ですが、実験の詳細はサイの目に切った寒天のうち、1つは何も味付けをしないもの、2つ目は砂糖を添加して甘くしたもの、3つ目は化学調味料(アミノ酸が主体)のものの3種類を用意しました。

寒天もそれぞれの添加物も色彩を持っていないため、何も添加していない寒天には青色、砂糖を添加した寒天には赤色、そして化学調味料を添加した寒天には黄色に食用色素を用いて着色した状態で、収録開始直後に水槽に投入しました。

実験に使用した寒天の説明
味付けと着色を施した寒天の切片

お腹を空かしたコイは、それらの寒天が投入されると、すぐに水槽の底面に敷かれた砂利と一緒に吸い込みました。

コイと3種の寒天のイメージ
それぞれに味付けと着色を施した寒天の切片を水槽に投入するとコイは砂利と一緒にすぐに吸い込んだ

さあ、ここからが実験の見せ所。

コイは吸い込んだ後しばらくすると、砂利と青色に着色した寒天を吐き出し、赤色と黄色の寒天を吐き出すことはありませんでした。

味の付いていない寒天を吐き出すコイのイメージ
暫くするとコイは砂利と味付けしていない寒天だけを吐き出した

収録は成功し、この実験によりコイは口腔内に取り入れた寒天に、味があるものと無いものを区別していることが分かりました。

釣果を上げるためにはどんな工夫が必要?

先ほどの続きになりますが、お魚さんにも味蕾細胞があり、餌が持っている味を鋭敏に感知しているのです。

そして、私たち人の味蕾は舌にだけ存在していますが、お魚さんの味蕾はそうではありません。種類によって様々ではありますが、口腔内だけでなくヒゲや口の周囲、そして咽頭、食道にまで広く分布しています。

ヒトとお魚さんの味蕾細胞の分布
ヒトとお魚さんの味蕾細胞の分布

そのためコイだけでなく多くのお魚さんは餌に触れて、さらに口腔内や食道を通過することにより、餌の味を感知し美味しいと感じればそのまま嚥下しますし、味が無く不味いと感じれば吐き出してしまいます。

そして、食べた餌が美味しいと感じれば、消化液が大量に分泌されることになるでしょうから、さらに餌を探して食べようとするはずです。

お魚さんが釣り針に付いた餌の一部だけを噛みちぎっていくと、掛け損じた気分になってしまうことがありますが、飲み込まれた餌が美味しければお魚さんの食欲が高まって、再び釣り針に装着した餌を食べに来ることでしょう。

また、撒き餌と刺し餌を同じものにすることにより釣果が上がるのも、このようなお魚さんが味覚を感知する仕組みと深い関係があります。

ただし、美味しいと感じるのかそうでないと感じるのかは、空腹の度合いや体調、周囲の環境によって大きく変わります。どんなに美味しそうなご馳走が目の前に置かれていたとしても、体調がすぐれなければ食欲は起きませんし、ましてや身に危険を感じる状況であれば食事どころではありません。

お魚さんに、恐怖感や違和感を与えずに釣り餌を美味しく食べてもらうように工夫をすることが、釣果を上げるための大きな要件であることは言うまでありません。

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