(公財)大阪府漁業振興基金栽培事業場「栽培漁業センター」の栽培事業場長・米田佳弘氏を訪問。栽培漁業の意義や現状等について伺った
今回の取材では、近年、北海道や東北をはじめ、大阪湾も含めて近年全国的な広がりを見せているキジハタ(アコウ)について、また「稚魚が手に入りにくい」と言われるクロダイ(チヌ)の生産の見通しについて等、色々な事を伺った。
釣具業界では、毎年全国各地で数多くの放流事業を行っている。(公財)日本釣振興会や、(一社)日本釣用品工業会のLOVE BLUE事業等により内水面、海水面問わず主に稚魚放流が行われている。
「釣り」は魚を釣って成立するレジャー・スポーツであり、魚族資源を利活用して成り立っている。そのため、釣具業界でも魚族資源の増殖に少しでも貢献しようと50年以上前から自主的な放流事業が行われてきた。
放流事業を行うためには様々な魚種の稚魚を入手する必要がある。その稚魚は、各都道府県の「栽培漁業センター」に依頼して稚魚を生産してもらう事が多い。栽培漁業センターから放流場所へ運ばれてきた稚魚を釣りの関係者等が海水面・内水面に放流する。
そもそも、「栽培漁業センター」とは何の施設で、「栽培漁業」とはどういった意味なのかを説明したい。
「栽培漁業」と「養殖」が決定的に違う点は…
まず、「栽培漁業」とは「卵から稚魚になるまでの一番弱い時期を人間が手をかけて守り、無事に外敵から身を守ることが出来るようになったら、その魚介類が成長するのに適した海に放流し、自然の海で成長したものを漁獲する事(出典:農水省)」である。「栽培漁業」という言葉は、農業に使われる「栽培」と「漁業」を足した造語だ。
一方で「養殖業」も魚を生産する意味では同じだが、「養殖業」の場合は魚をイケス等で出荷するサイズまで育成し出荷する。当然、育成の途中で放流はしない。この点が栽培漁業と全く異なっている点だ。
「栽培漁業センター」は水産資源の増大を目的に、種苗生産(魚の稚魚を育成する)や放流を行う施設だ。各都道府県に1つ以上は栽培漁業センターがあり、基本的には各都道府県等が運営している。漁業が盛んな県では、県以外に市単位でも栽培漁業センターを運営している。関西であれば神戸市がこれにあたる。
栽培漁業では、種苗生産を行う「栽培漁業センター」と、どういった魚種を生産するのか等、様々な計画を策定する「都道府県等の水産課」、生産技術の開発や事業の効果を検証する「水産技術センター」の3つが三位一体となって進められている。
では、生産する魚種はどのようにして決まるのか、米田事業場長に伺った。
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