企業経営に役立つ情報を紹介する「企業経営の名サポート」。今回は、今後予定されている法改正の中から労働基準法、電子帳簿保存法、インボイス制度の3つに着目し、その対応状況や課題について紹介します。
今年23年以降に改正される法律は多数ありますが、その中でも特に企業経営に大きな影響を与える以下の3つに着目し、その対応状況や課題について調査しました(昨年11月ビジネス環境・意識調査)。
1・労働基準法(月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げ)
2・電子帳簿保存法(宥恕措置(ゆうじょそち))
3・インボイス制度
【労働基準法】中小企業でも詳細な労働時間管理が必要に…
今月4月1日から中小企業の猶予措置が撤廃され、「月60時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働の割増し賃金」の支払い義務が生じています。
具体的には、中小企業の割増賃金率が、25%から50%に引き上げとなり、中小企業も大企業と同等の労務時間管理が求められることとなりました。そこで、どのように労働時間を管理しているか人事労務従事者にお伺いしました。
「勤怠管理システム」と回答した企業が最も多く70.41%、次いで「紙、エクセル等」が23.47%、「紙の打刻式タイムレコーダー」が22.45%でした。
勤怠管理システムを利用している企業の21.74%が、「紙、エクセル等」や「紙の打刻式タイムレコーダー」も併用しています。
労働時間をしっかりと管理して可視化することで、残業が多い従業員への業務負荷を分散・調整したり、残業内容を明確化して業務の流れ・運用を見直したりするなど、残業時間削減につなげている企業もいらっしゃいます。
労働時間管理の具体的な課題として、「リモートワークになり、働き方が見えない。監視はしたくないが、怠けずに仕事に向かってもらう仕組みを作りたい」、「国が働き方改革を進める中で、労働環境以外のコンプライアンス遵守は年々厳しくなっている。業務は増加する傾向の中、労働時間は減じなければならない。物価上昇による利益減少の中で増員もできず、相反するものをどう対応していくかが課題」などが挙げられました。
【電子帳簿保存法】「事務処理規程で対応」が最多。システム導入済みの企業は約20%
正式名は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」で、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律ですが、ここでは電子帳簿保存法と表記します。
22年1月施行の改正電子帳簿保存法は、21年12月に公表された令和4年度税制改正大綱により、「電子取引における電子保存の義務化」に2年間の猶予が認められました。
関連記事 → 【改電子帳簿保存法】令和4年1月から施行。2年の猶予期間もあるが、具体的な対応策は?
22年12月に公表された、令和5年度税制改正大綱において、スキャナ保存の要件緩和や、電磁的記録の保存制度の見直しなど、更に詳細が明らかになっていますが、本調査時(22年11月)においての対応状況や方針についてまとめました。
電子帳簿保存法では、請求書・注文書・領収書・契約書等、国税関係の書類をデータで受け取った場合、以下4つの条件のいずれかを満たす必要があります。
①タイムスタンプが付与されたデータを受領
②受領後遅滞なくタイムスタンプを付与
③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用
④訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け
また、事後的な確認のため、検索できるような状態で保存することや、ディスプレイ等の備付けも必要となります。
国税関係書類のデータでの受取割合について状況をお伺いしたところ、「1割程度」が60.15%と最も多く、次いで「3割程度」が22.56%でした。
国税関係書類のデータでの受取において、電子帳簿保存法への対応状況は、「事務処理規程で対応」が42.24%、「対応はこれから」が38.79%、「電子帳簿保存法対応システム導入済み」が19.83%でした。
「事務処理規程で対応」と回答した中でも、事務処理規程をまずは策定し、運用の流れを作ってから電子帳簿保存法対応のシステム等を導入検討する企業も複数いらっしゃいました。
「対応はこれから」と回答した企業に対応時期についてお伺いしたところ、「会計事務所・税理士と相談中」、「インボイス制度と同時進行」、「同業他社と足並みをそろえる」などの回答がありました。
【インボイス制度】「適格請求書発行事業者として登録済」の企業は約65%
今年10月から適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)が導入されます。
インボイス制度においては、現行の区分記載請求書等の保存に代え、「適格請求書(いわゆるインボイス)」等の保存が仕入税額控除を行うための要件となります(令和5年度税制大綱にて、小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置等が出ています)。
対応が求められる順番に選択肢を用意し、現状の対応状況を確認しました。
「適格請求書発行事業者として登録済」の企業が64.57%で最も多く、「取引先のインボイス制度への対応状況把握済」が22.05%、「自社の納品書・請求書・領収書等インボイス制度に対応する様式への変更済」が21.26%と続きました。
OBC((株)オービックビジネスコンサルタント)の奉行クラウドシリーズや奉行i11シリーズなどは順次対応予定、弥生シリーズは春以降順次対応予定としており、既存システムのバージョンアップにより、「自社の納品書・請求書・領収書等インボイス制度に対応する様式への変更済」が増えていくことが想定されます。
自社で利用している既存システムがそのバージョンアップの対象であるかどうかは、各ベンダーやメーカーに確認しておく必要があります。
「取引先のインボイス制度への対応状況の把握」方法について、取引先へのアンケートや電話連絡で確認している企業が多くみられます。
個人事業主やフリーランスの他、内職として依頼している場合など、取引状況やインボイス制度への対応状況を把握しておくことが重要です。
経理業務従事者に、請求書発行業務についての課題をお伺いしたところ、「業務効率化を図りたい」が41.59%と半数以上が回答しており、「人的ミスが発生する」が22.12%、「郵便代を削減したい」が17.7%でした。
インボイス制度対応に伴い、請求書発行の電子化を検討する企業様も増えてきています。
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