釣り業界が未来のビジネスを作れ。釣りの魅力アップのために出来ることは?【奧山文弥・理想的な釣り環境】

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これまで理想的な釣り場のあり方、人間の接し方についてお話ししてきましたが、最後に釣り業界の方々へのお願いというか、提案をしたいと思います。

先日、静岡県足柄の鮎沢川に鬼アマゴ釣りに行ってきました。鬼アマゴとは婚姻色が残って鼻が曲がったままの尺アマゴです。

鮎沢川は冬季にニジマスキャッチ&リリース区間を設けており、解禁と同時にそのルールが解除され殺して持ち帰ることができます。なんともったいないことでしょう。昨年10月に放流され、年越しして銀ピカになっている魚もいるのにです。

今回は私もニジマスを4尾(48~58‌㎝)釣りましたがとてもいい魚でした。リリースしましたが、この先エサ釣りで釣られて殺されてしまうのが見えていますからとても残念です。

奥山氏と58㎝の銀ピカニジマス
年越しのニジマスは58cmで銀ピカ。こういう魚を維持できる環境の鮎沢川。敵は人間だけ

鬼アマゴも全部放流魚ですが、1回釣られただけで殺してしまうにはあまりにも惜しい魚です。

どうしたらお客さんが来る?魅力ある釣り場にするために

今回は、ここで地域振興ボランティアをしている私の友人、杉山和己さんに紹介いただいた漁業組合長の中村浩之さんから相談を受けました。色々と是非教えて欲しいというので昼食時にお話しました。

他にこれといった観光資源がないので釣りに力を入れたいけれど、どうしたらお客さんが来るようになるのか、また漁協の資金繰りや経済力の話にもなりました。

来場する釣り人が非常に少ないので、その対策として解禁から4月中旬までは年券のみの発売。大人1人5000円(中学生以下無料)、4月中旬から日釣り券1500円を販売するという特殊な売り方です。

鮎沢川には富士山の湧水が入っていると思われますが、周りは全て護岸され、魚の再生産は見込めないと私は判断したので、キャッチ&リリース区間を冬のニジマスだけではなく、鬼アマゴも周年適用したらどうかと提案しました。

鮎沢川(静岡県)で釣れた鬼アマゴ
鮎沢川(静岡県)で釣れた鬼アマゴ。すべて放流魚だがキャッチ&リリースルールにすることで野生化が期待できる

解禁して一週間で魚がいなくなるという川では魅力がありません。もちろんこれまでの文化もありますから全域ではなく、区域分け(ゾーニング)するのです。

組合長は、超弱小組合で内水面漁業として成立していないため、ボランティアに助けられていると言っていましたから、お客さん(遊漁者)が集まり、日当を出せるぐらい売り上げが出るようになればいいと思います。

付近には御殿場アウトレットモールもあるので、やり方次第では観光客の誘致には利があるとも思います。キャッチ&リリース区間が導入されたら、釣り業界でも助けてあげられればいいのではと思います。

釣り具が使える場所を増やそう

さて本題です。

釣り業界は釣り具を販売して利益を得るのですから、いい釣り人、いいお客様が増えることを理想とすべきです。

そのためには買っていただいた釣り具が使える場所を増やしていかなければなりません。また流行を追求するだけではなく、釣り場や釣りスタイルの啓蒙も行うべきです。混み合う有名釣り場をよそに、ガラガラな釣り場はたくさんあります。

海釣りなら遊漁船というプロの案内業がありますから、魚たちが釣れているうちは衰退することはないでしょう。メバルやアジをルアーで釣ることが流行ったように、ほぼ天然魚の海釣りは魅力です。

しかし、淡水魚は放流に頼らなくては釣りが成り立たない釣種がたくさんあります。

釣り堀への誘致もお手軽でいいのですが、その釣り堀でさえ経営破綻、跡取りがいないなどで廃業してしまったところがあります。そういうところを受け継いで経営し、魅力的な釣り場に作り替えてはいかがでしょうか?

ゴルフ場のように金額で差別化し高級釣り場を誕生させ、それを維持するために様々な営業戦略を練るのです。

管理釣り場はサービス業です。しかしながら魚を買うということでは水産業です。近年の温暖化による平均水温の上昇で厳しくなっている夏場をいかに乗り切るか、養魚場が廃業に追い込まれているために魚の仕入れ自体をどうするかなど、工夫も必要です。

ブームに便乗して釣り具を売るより難しいですが、やる価値はあると思います。

客層の線引きも必要?漁協や釣り堀が目指すべき経営とは

これからの管釣りはどうしたらいいのでしょうか?

健全な管釣り経営を学ぶなら群馬県の宮城アングラーズビレッジへ一度見学に行くことをお勧めします。

ここは夏営業、冬営業と2期に分け運営されており、非常に経営が上手くいっているからです。

「新規に来たお客さんには絶対満足して帰っていただく」という井上荘志郎社長の指示のもと、スタッフ一同が見事な接客をします。最近では客層の線引きも行い、いいお客様に来てもらえるようにしているとのこと。

バス釣り客で賑わう宮城アングラーズビレッジ
バス釣り客で賑わう宮城アングラーズビレッジ(群馬県前橋市)。新規客、家族客には絶対釣らせるというポリシーで経営している。「お客様は釣りたいから来るのです」と井上社長は語る

内水面の漁協はどうでしょう。

大河川水系に第5種共同漁業権を持つなど経営が上手くいっている漁協では幹部の方々が元々釣り名人で、川や魚のことをよく理解していたり、さらにメーカーのテスターもやっていて元々釣り業界とつながっていたり、彼ら自身が魚類学者であったりして、放流魚や自然繁殖魚などの差別化等に詳しいです。

しかし、名誉職で就任している小さな漁協の組合長の場合ですと、これまでのことを繰り返すだけで、新しいことはなかなか考える余裕がありません。そういうところで経営に困っているところには、協力の手を差し伸べてあげてはいかがでしょうか?

前回の記事で書いた通り、アユの友釣りが不振でアユルアーを解禁したらお客さんが増えたということもあり、これから時代や環境が変わる中で、漁協や釣り堀も儲かるような仕組み作りが必要です。

お客さんが増えたら次はどうするかということも考える必要があります。

前回の記事はコチラ → キャッチ&リリースについて考える。時代と環境の変化に対応を…【奧山文弥・理想的な釣り環境】

これからの淡水釣りは野釣りでも管釣りでも、しっかりお金を使って満足度の高い釣りを求めるお客様を受け入れ、あるいは育て、低価格購買層と線引きをすることも確かに必要です。それは釣り業界以外では当たり前に行われていることです。

最後に、野釣りにおいては特定外来生物指定魚とどう向き合っていくかも改めて考えるべきでしょう。ネットではかなり拡散しているので、釣り業界だけで抑えられるものではありません。法律の中で漁協を説得することも未来を作ります。

そのためにも、釣りの社会的地位の向上を目指す事、そして業界人自体もそういう高級意識への向上心を持つべきでしょう。

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