「すでに釣りの楽しさが分かっていて、さらに長く釣りを続けていくためには夢や希望、目標があると良いです」という人が結構います。
例えば渓流なら尺ヤマメを釣りたいという人は多いでしょう。湖なら60㎝オーバーのブラウントラウトを釣りたいという方もいます。
この連載でもお話ししましたが、釣りを始めると、願望はどんどん変わっていって、とにかく釣れれば良いから、たくさん釣りたいとか、大型を釣りたいなどに変化していきます。
それを煽るようにマスコミやSNS、そして釣具店でも様々な情報を発信します。以前なら釣具店に貼ってある魚拓が良い例でしょうか?
私ぐらいの年齢ですと、今でも魚拓を見ると大物釣りへの意欲が湧いてきます。魚拓は釣り自慢でもありますが記録として残り、また一種の芸術として印象が強く残ります。そういう意味では剥製も芸術です。
今では魚を殺さないという人もいて、そういう人は写真を撮ってリリースです。私も殺さないことを推奨していますからここでいうのもナンですが、釣果には芸術になるか単なる釣り自慢になるかの違いがあります。
魚拓や剥製になると原寸でのイメージがあることで、釣った人の思い出も蘇るでしょうし、釣った本人でなくても、それを見た人がたとえ釣りをしない人であっても「おお、デカい」とか「綺麗ですね」という目で見てくれるでしょう。
現物を見なくたって、あの「釣りキチ三平」に出てきたタキタロウの魚拓にときめいた人も多いのではないでしょうか?
肝心なのは、自分の部屋ではなく、人が見てくれる場所に飾ることです。昔は釣具店で「大きいの釣ったら魚拓貼ってあげるから頑張れ」と言われたこともあったほどです。自分の魚拓を貼ってくれた釣具店にはずっと行きたくなりますしね。
釣果記録は魚拓からSNSへ。適切な情報発信を心がけて…
現在ではSNSが主体ですが、たくさん写真が出ていても釣った場所はもちろん、詳細も隠すほどになっています。
メーカー絡みの釣り人なら宣伝も兼ねているので、どこでどんなルアーで釣ったと詳しく書いてあるので良いのですが、あまりにも情報が少なすぎると、出した本人の自己満足だけで、見た人の釣り欲は煽られません。
釣果は自慢?自己満足?でも評価されれば嬉しいものです。
また、釣りにもよりますが、大量に釣って魚を並べて「こんなに釣りました」という写真は、それを見た人が「すごい!」と褒めてくれるでしょうか?未だにSNSはもちろん、マスコミでもたまにそういった写真が見られるのが残念です。
マスコミなら投稿者がそういう写真を送ってきたら、写真の撮り方を指導してあげるべきだと思います。
そうしないと、それを見た初心者が、「いつかあんなたくさん釣って写真を撮って、私も投稿しよう」と安易に考えてしまうからです。冷静な方達からは「カッコ悪い、品がない」とメディアの信頼性を疑われることもあるでしょう。
食べるためだとしても、魚をキープするのは家族の分だけで十分です。例えそれがアジやサバのように、多獲できる魚であったとしてもです。
誰でも自由に参加できるSNSと、マスコミはきちんと差別化し自らの品格を持って世間に訴えていくべきだと強く思います。
近場の小物釣りにも商機アリ!「釣りの楽しみを伝えられるか?」が大事
さて、大物を釣った時の記録の一部として魚拓の話からSNSにまで言及しましたが、その他に釣りを長く続けてもらうための手段としては、楽しい釣り、面白い釣り、難しい釣りをどんどん提案していくことです。
大物ならば、昨今の水産資源に関わる問題にもなっていますが、マグロ釣りです。特に若い人を煽るには最高の釣りです。行けば必ず釣れるわけではありませんが、暖流の流れが変わり、ここ10余年は相模湾にもキハダが回遊しています。
キハダは沖縄に行けば簡単に掛かる魚ですが、それを日帰りで釣るというお手軽さも加わり、多くの若者を魅了しています。私が海のルアーを始めた頃、マグロは遠洋漁業で獲った食糧であり、釣りの対象としては考え辛かったです。
しかし、相模湾が漁場となれば話は別。トビウオなどを追いかけて跳ねる姿を一度でも見たら病みつきになります。これは魚の回遊ありきでのお話ですが、近場にもオススメできる釣りがたくさんあると思います。
私がやっているユーチューブはまだ登録者が1万人余ですが、地元多摩川の動画を流すと、遠征大物釣りよりもアクセス数が増えるのが常です。
近場の小物釣りでは商売にならないとお考えの方、それは間違いです。
ヘラブナ、タナゴの釣具は伝統工芸として当たり前、近年ではワカサギ釣りがビジネスチャンスを作っていますね。
要するに、その楽しみを伝えられるかどうかが重要なのです。
少ない予算で楽しもうとする方々は個人の努力にお任せして、マニアックな道具(高額品)を持っているだけで満足できる釣りも提案し、売っていくべきです。釣りに行かなくてもワクワク出来る、楽しい釣りがあるはずです。
買えば1尾1000円しない魚を10万円以上の道具を使って、何万円もお金をかけて釣るということを平気でする人たちがお客様であることを、我々は忘れてはなりません。