全九州釣ライター協会の会長・小野山康彦氏の連載です。公益財団法人日本釣振興会九州地区支部の活動ほか、九州の様々な情報を紹介します。
第2回の今回は、当協会が関わってきた釣りイベントについてご紹介します。当協会では各地の観光協会などに協力して、地域の活性化のために釣りを通したイベントの提案や後援を行ってきました。
まずご紹介するのは、熊本県水俣市の海辺の温泉地「湯の児(ゆのこ)温泉」のタチウオ釣りです。
「これからは女性が釣りを楽しむ時代」女性に釣りをPR、観光客増加狙う
30年ほど前、しばしば取材で湯の児温泉を訪れていた当時の事務局長小路隆(ペンネーム・弾涛竿)が、湯の児観光協会長から観光客の増加を目的としたイベントの相談を受けました。
そこで小路事務局長は、「これからは女性が釣りを楽しむ時代だ」として、毎年の水質検査で日本最高レベルの水質基準をクリアしている水俣市の八代海(不知火海)で釣れる、タチウオ釣りを女性にPRしてはどうだろうかと提案。
水俣市商工観光課と湯の児観光協会が中心となり、湯の児旅館組合、湯の児釣り船組合などが共催、当協会や公益財団法人日本釣振興会などが後援して、1991年秋に「第1回湯の児・女だけのタチウオ釣り大会」が開催される運びとなりました。
参加資格は4名以上の女性だけのグループで、前日から湯の児温泉に宿泊することを参加条件にしました。
参加グループや同行家族は温泉旅館に宿泊して美味しい不知火海の恵みを堪能します。翌朝は大会に参加する女性たちがグループごとに個性豊かな衣装をまとって集合。今までの釣り大会にはない華やかな雰囲気で、大いに盛り上がりました。
女性たちが10数隻の湯の児釣り船組合の遊漁 船に分乗して旅館街の岸壁から出港し、それを見送ったパートナーの男性諸氏や男児は、旅館街からほど近い釣り施設の「湯の児フィッシングパーク」で釣りを楽しみます。
タチウオは、初心者でも比較的釣りやすい魚です。船に用意された手釣り仕掛け(餌のキビナゴを巻いたタチウオテンヤ仕掛け)を使用し、船長が指示するタナまで落として巻き上げます。
掛かれば手元がグッと一気に重くなり、緩めることなく巻き上げると海面に銀色に輝くタチウオが登場。船上は歓声に包まれます。取り込みから針外しまで船長たちがお世話してくれますので、ビギナーや女性たちには最適な釣りなのです。
釣りの後は食事と温泉。釣りイベントの潮流は大会から「体験型」へ…
釣りは約3時間で終了し、帰港後に検量です。大物や最多尾数を競いますが、参加者たちの目的は検量よりもお昼の食事です。湯の児名産のワインやパエリアなどの地中海料理、タチウオのみりん干し、おにぎりなどがふるまわれ、食事の後にはまた温泉を満喫して帰途に着きます。
こうして、女性を中心として家族全員が楽しめる釣りイベントが実現しました。当協会が紙上でPRするとともに、各メディアでも大きく取り上げられ、募集すると定員が即座に埋まるほどの人気となりました。
当初10回大会を目標にしていましたが、節目の20回大会まで続き、番外編でペア大会も開催。老若男女問わず誰もが「釣って楽しい、食べて美味しいタチウオ釣り」を満喫するイベントとして周知を図ることができました。
官民一体となって取り組んだ釣り大会が20年以上続いた例のひとつです。
現在、子どもたちやファミリーを対象とした釣りのイベントの潮流は、「大会」から「体験型」へとシフトしつつあります。
コロナ禍が収束しつつある中、タチウオ釣りをしてみたいと思われる方は、湯の児釣り船組合(田村辰紀男組合長)(☎0966・62・4210)までお問い合わせください。