内水面漁業の画期的な取り組みを連載で紹介するこのコーナー。今回も前回に引き続き、テーマは近い将来が楽しみな淀川水系の河川環境整備だ。
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前回は淀川河川事務所(国交省近畿地方整備局)を取材したが、今回は淀川環境委員会の委員であり、「京の川の恵みを活かす会」(以後、活かす会と表記)の代表を務める京都大学防災研究所の竹門康弘准教授に話を伺った。
河川環境を改善。自然の恵みを豊かにし、それを活かす
淀川本流は古代湖の琵琶湖を水源とし、固有種が多い水系である。京都の市街地を流れて本流に合流する桂川水系、三重県・奈良県から合流する木津川水系の2つの大支流を含め、流域にはたくさんのダムや堰堤で流れが分断されている。
竹門先生が率いる活かす会は生き物が棲みづらくなったその河川環境を改善すべく、数々の活動を行っている。会の名称が端的に活動内容をあらわし、大学の研究機関や行政、自治体、環境NPO、漁業関係者、釣り人、淡水魚の食文化を継承する料理研究家たち等、活動趣旨に賛同する団体、個人がメンバーとして集まっている。
環境保全や調査研究、希少種を守るだけでなく、「淀川流域の自然の恵みを豊かにし、それを活かす」という楽しみが共有されているからこそ、立場が異なるメンバーであっても活動目的(ベクトル)が同方向に定まるのだろう。
その活動内容は別枠の通りだ。その一つひとつに明確な目的があるので、同会のホームページにてぜひ詳細をチェックしていただきたい。
上流域から河口沿岸までの繋がりのある環境改善策が必要
河川の環境を語るうえで「森・川・海」が繋がっていることは多くの方が承知のことだろう。
ただ、前述したように淀川水系は多くのダムや堰堤で分断されている。活かす会が取り組む自然再生事業は、医療に例えるなら川のバイパス手術といえるかもしれない。施術を必要とする箇所が全身に点在するのが今の河川環境だ。豊かな自然の恵み(天然もん)を享受するには、繋がりのある河川環境を取り戻すことが必須であることは疑う余地もない。
竹門先生が釣り界や漁業関係者から注目されるのは、魚類生態学と河川工学の両面から広い視野で河川環境整備のグランドデザインを描ける研究者であるからだ。
天然アユ等の遡上を促すためには魚道の設置や整備は不可欠だが、「繋がり」はそれだけではない。ダムに堆積した土砂をいかに自然なカタチで下流へ運ぶかも大きな課題になっている。土砂還元の取り組みは進められているが、竹門先生はまだまだ土砂の流量は足りないという。
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