今江克隆プロが語る「日本のバスフィッシングの現状」。JB・NBC綿井副会長と対談、社会に受け入れられるプロスポーツとは

スペシャル ニュース
今江克隆プロ
今江克隆プロ(1964年生まれ)。JBシリーズで全てのメジャータイトルを複数回にわたり獲得。圧倒的強さと人気を誇る。日本のバスフィッシングを牽引してきた1人。ルアーメーカーの(株)イマカツ代表取締役。JBの組織強化委員長も務める

日本のバストーナメントを確立し、長年にわたりバスフィッシングを支え続けてきたJB(日本バスプロ協会)、NBC(日本バスクラブ)。今回は、日本を代表するバスプロの今江克隆プロとJB・NBCの綿井良隆副会長による対談をお届けする。JB・NBCについて、日本のバスフィッシングの現状について、同協会が力を入れて取り組んでいる環境に優しい素材のルアーの普及について話を伺った(文中、敬称略)。

JB・NBCの功績、全国統一のルールを確立

綿井良隆副会長(以下、綿井)「私自身、昔からバス釣りをしてきました。昔、仕事で周辺に山とダムしかない地方に行ったのですが、そんな田舎でもバス釣りを一生懸命やっている子供達が大勢いました。将来、この子供達が、今江克隆プロを倒したいとなった時、しっかりとしたルートを作る事が必要だと感じました。そのためには、全国で統一されたルールが必要です。私がJB・NBCの組織作りに関わるようになり、出来るだけ全国で統一されたルールを作る事。そして各県にある支部の整備にも力を入れてきました。

そして、バストーナメントはアメリカが発祥ですし、今は世界に広がっています。ですから、あまりに世界から逸脱した国内独自のルールではなく、将来的に選手がアメリカや世界の舞台で戦う事になっても、戸惑いが無くトーナメントが出来るルール作りを心掛けてきました」。

今江氏と綿井氏の対談風景
JB・NBCの綿井副会長(写真左)と今江克隆プロ(写真右)

プロが公共性を持った職業として社会から認められているか

今江克隆プロ(以下、今江)「JBの一番の功績は間違いなくバストーナメントの全国共通の基準を作った事。そして、その共通基準に合わせたバスプロを作り出し、バスフィッシングに公共性を持たせ、拡げていった事だと思います。今後、バスフィッシングでこれだけの規模の全国的な組織が作られる事はないと思います。

どのジャンルでもそうですが、プロというのは、公共性を持った職業として認められている事が大事だと思います。アンダーグラウンドの世界では、有名であっても公共性を持ったプロとして社会から認められるのは難しい部分があります。

例えばボクシングの井上尚弥や中谷潤人、そして那須川天心は、世間からも広く認知され認められているプロボクサーです。ボクシングは、実際に行っているのは殴り合いですから、ある意味では非社会的行為です。しかし、そこにきちんとしたルールや歴史、団体があるからこそ、ボクシングのプロ選手は公共性を持った職業、つまりプロとして広く社会に受け入れられています。

競技に明確なルールと歴史があり、試合に出場できる資格があり、統一された規格がある事で、そのスポーツ自体にも公共性がもたらされます。その中で社会からリスペクトされるプロ選手も生まれるのだと思います」。

JBトップ50の試合の風景
全国的に見ても巨大な釣り団体であるJB・NBC。今後どういった運営が求められていくのか(出典:JB公式ホームページ)

綿井「私もプロは絶対に必要だと思います。特に人から尊敬されるようなカッコ良いプロです。野球で言えば大谷翔平のような憧れの選手がいるからこそ、高校野球、リトルリーグ、親子のキャッチボールまで繋がるのだと思っています」。

プロスポーツはスター選手の存在が重要

今江「バスフィッシングの場合、特に外来生物法以降はアンダーグラウンドな面が強くなってきたと感じています。例えば琵琶湖でのバストーナメントはエンタメ性が高いので多くの人の関心は引きますが、公共性という意味で言えば、微妙な部分があるかもしれません。

一方でプロスポーツは、スター選手が不在では盛り上がりません。ルールも確立されているため、真面目過ぎて面白くないと感じられてしまうのです。

逆に井上尚弥や中谷潤人のような桁違いに強くカリスマ性を持ったスター選手が出てくると、『やはりプロスポーツは面白い』という事になります。世の中に広く受け入れられながら、人々からも尊敬され、しっかりと生計を立てられるプロも出てくるのです。

全身に入れ墨を入れて、喧嘩まがいの派手なパフォーマンスで視聴数を稼ぎ、財を成す格闘技選手もいるでしょう。これもプロと言えばプロです。

今のバスフィッシングも、これと同じような二面性を持った競技になってきている微妙な状況というのが私の印象です」。

藤川温人プロ
今年からトップ50に参戦している藤川温人選手。各試合で良い戦績を残している有望なバスプロだ。父は阪神の藤川監督だ

JBはバスフィッシングが歓迎されている地域で大会を開催。地域振興にも貢献

綿井「今でこそJB・NBCは統一ルールを持った全国組織ですが、統一ルールを作っていく過程は大変でした。大げさに言えば戦国時代のように、それぞれの地域で一国一城の主がおり、まさに群雄割拠の状態です。各地に出向いて交渉し、なんとか統一した組織を作ってきました。こういった組織やルールもいったん破綻すれば、二度と作る事は出来ないのではないかと思います」。

今江「JBは筋を通している団体だと思います。各地方組織があり、各市町村に受け入れられている場所で大会を開きます。バストーナメントは悪者ではなく、地域振興などに貢献し歓迎されている地域で行う事を大切にしています。トーナメントが行われれば、当然、その地域経済にも貢献できます。バスという資源の有効利用を根底に置いている事は、もっと世の中から評価されて良いと思います。

今江克隆プロ
JB・NBCは今後、スター選手の存在が重要になると語る今江プロ

これからのJB・NBCですが、スター選手の存在が重要だと思います。先ほどのボクシングの話でも井上尚弥、中谷潤人、那須川天心など強力なスター選手がいる事で、世間からそのスポーツがクローズアップされ規模も大きくなっていく事は明らかです。歴史あるボクシングですら今ほど誰もがスター選手の名前を知っている時代はありませんでした。

今のバストーナメントは昔に比べるとスター選手が少なく感じます。それでも、青木大介や藤田京弥といった世界に通用する選手も輩出しています。アメリカで活躍し、日本のバストーナメントの空洞化も懸念されますが、青木選手も帰ってきましたし、私も瀕死ながら(笑)今も第一線の舞台で戦い続けています。

もし、この団体が無くなれば、日本のバスフィッシングは、一層アンダーグラウンドなものになり、社会に受け入れられるような職業(プロ)を生み出せるスポーツでは無くなってしまうのではないかと思っています」。

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