今回は「種川の効果」について長野県水産試験場に取材を申し込んだところ、種川にて週1回ペースの新たな調査を行っていると聞き、現場を見たい思いで同行させてもらった。
今春から始まったこの調査は種川にトラップ(捕獲ネット)を仕掛けてイワナの稚魚などの下流方向への降下移動データを収集するものだ。まだその調査結果は出揃っていないが、稚魚だけでなく成魚やサンショウウオなども入っているという。今回は雨後ということで少し水位が高く、大量の落ち葉も入っていた。
試験場のスタッフにイワナの資源量を左右する要因を聞くと、雑魚川でもまだまだ分かっていないことが多いという。
春の解禁が2カ月遅く、雪代が多いこと。エサの量が豊富なこと。水温が安定し、標高差が少ないこと。意外とこの周辺は豪雨が少ないことや、何も放流していないこともプラス要因として考えられているという。
豪雨の影響に関しては、令和元年の10月に東日本を襲った超大型の台風19号のダメージの大きさとその後の回復スピードの早さが興味深いデータとして残っている。この台風は千曲川水系でも堤防が決壊するほどの大規模な水害をもたらし、イワナの産卵期を直撃した。
その後の資源密度調査では全長20㎝を超える魚が10分の1にまで激減し、関係者を不安にさせた。ただ、翌年の令和2年には釣果も釣り人も約30―35%まで落ち込んだが、イワナの稚魚が残っていたため今年には資源回復が期待される。
地球温暖化の影響か全国的に豪雨が増えてきているだけに渓流魚への影響が心配だが、自然再生産する環境が整っていれば資源量はキープできそうだ。
これからの内水面漁場管理は成魚や稚魚放流への依存度が減り、いかに効率よく漁場管理していくかがカギになる。渓流王国・長野県の内水面漁業振興において、内水面水産試験場の調査研究は漁業関係者にとって頼もしい限りだ。
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