JB・NBCは環境に優しいルアー拡大に本腰。今江プロはどう考えているか

―JB・NBCでは、環境に優しい素材を使ったルアーの普及のため新しいトーナメントを今年から立ち上げている。2030年にはトーナメントで使用するルアーは、全て環境に配慮した素材が使われたものに移行する計画もある。この取り組みについて、トッププロでもあり、ルアーメーカーの代表も努める今江プロはどのように感じているのだろうか。
生分解素材への取り組みは20年以上前に遡る
今江「私はもともと総合商社で樹脂原料を扱う部門に17年間いた人間です。20年以上前になりますが、東レが生分解性ポリマーを使った『フィールドメイト』という釣り糸を発売しました。生分解する釣り糸です。その勢いで生分解ワームも作りました。私もその企画の中心にいましたので、メーカーの実情や素材の特徴等も良く理解しています。
あれから20年以上経ちましたが、釣具だけでなく、世の中を見ても当時思われていたほど生分解素材を使った商品は広がっていないのではないでしょうか。
その大きな要因はコストが合わない事や、生分解樹脂を作るプラントが大量の需要に対応できないといった事が大きな理由だと思います。こういった事情は20年前とそれほど変わっていません。
さらに、強度も従来のプラスチックに及ばないものが多いはずです。ですから、今も生分解素材が使われているのは、使い捨てのスプーンやフォーク、ストローといったすぐに廃棄される物で、テレビやエアコン等の大型の耐久財にはあまり使われていません。コンビニも本気で取り組むなら、スプーンやフォークだけでなく、食品パッケージやペットボトルも全て生分解素材にすれば良いのですが、それは出来ていません。何故なら、分解してしまうからです。それでいて原料単価は遥かに高いのです。

多くの企業の実態としては、現状で全面的に生分解素材を使う事は出来ないと分かっているものの、環境に配慮した素材を使う事で、海洋ゴミの削減など社会貢献にも繋がり、未来への投資や企業のイメージアップにも繋がる事から、生分解素材を一部の商品で使っているというケースが多いのではないでしょうか」。
環境に配慮した釣り具の普及活動はJB・NBCが行っていくべき仕事
綿井「JB・NBCは、釣りの団体としてみると、国内ではダントツに大きな組織ですし、世界的に見ても大きな釣り団体です。環境に配慮した釣り具の普及は、将来を考えた時に、どこかがやらないといけません。もちろん、簡単な事ではありませんが、一番大きな釣りの団体であるJB・NBCが行ってくべき仕事だと思っています」。
今江「生分解という言葉の問題もあります。『生分解性プラスチック』と表記するには様々な認証や審査が必要です。JBでは『バイオマス含有ルアー』といった表記にしています。以前よりこういった樹脂の精度はすごく高くなっていると思います」。

綿井「JB・NBCも2004年にFecoマークを作りました。この時に鉛の使用等も中止しました。以前より環境に優しくなっていると思います。全てが解決することはないにせよ、少しずつでも昔に比べると環境に優しい状態にしていく事が大事だと思います」。
今江「JBの山下会長は先のビジョンがある人です。昔から釣りもされませんので釣り人にありがちな私利私欲もなく、ある意味では非常にドライな選択が出来る人です。ですから誤解される部分もあるでしょう。私も釣り人の目線からだけではなく一般社会人の目線で会長を見ると、先見の明がある鋭い人だと思わされる事が多いです。会長の言っていた事が5年後ぐらいには、その通りの状況になっているからです。
現状は多くのバスメーカーが経営的に厳しい状況に置かれていると思われますし、その中で環境に優しい素材を使ったルアーを拡げていく事は難しい部分もあります。ただ、会長がされようとしている事は意味のある重要な事だと思います。プラグは強度やカビなどの問題がありますが、ワームは広がっていく可能性が十分にあるかもしれません」。
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