9月5日、東京湾の羽田沖と若洲沖でカサゴの放流が実施された。
前日の雨とはうって変わり、残暑が厳しい晴天の下行われた。
今年も集合場所は通称「まる八」桟橋で京浜急行、平和島駅から車で約5分の場所。
今回の放流事業は公益財団法人日本釣振興会東京都支部と、8月より東京湾遊漁船業協同組合の理事長に就任された中山賢(まさる)氏を中心に準備された。
開会式の前には、カサゴの稚魚を載せたトラックが到着して放流の準備が始まっていた。
理事長の中山氏によると、ここの船宿では現在、キス、アジ、タチウオが良く釣れているという話をされていた。都心近くのアクセスの良い釣り場のため、これからの季節、出かけるのにも良い釣り場だ。
放流前には生徒達が稚魚を観察。タグ打ちの様子も見学
放流は今年も東京都大田区立大森第一中学校の1年生3クラス、74名と引率の先生6名と一緒に行われた。
9時を過ぎると生徒たちが徒歩で集合場所に到着。生徒たちは「地元の海・羽田沖」を知ってもらうための総合学習の一環として参加した。
皆が整列すると、放流事業の説明が行われた。
日本釣振興会東京都支部の常見支部長より挨拶があり、日本釣振興会が設立されて今年で53年目になること。魚がいないと釣りが出来ないので、海、川、湖での魚の放流事業を継続していること。ゴミの持ち帰りや釣り場清掃、釣りマナーの説明が行われた。
話の途中で常見支部長が「この中で釣りをしたことのある人は挙手してください」と話しかけると、半数近くの生徒たちが手を上げていた。思いのほか釣りの経験がある生徒が多いと感じた。
さらに、支部長からは各所で釣りの体験教室も実施しているので、是非参加してはどうかということも伝えられた。
それに続いて、6名のスタッフ紹介があり、クラスごとに①活魚輸送のトラックの見学、②放流魚へのタグ打ち、③水槽に入れたカサゴの稚魚を見ながらカサゴの習性についての説明を順次ローテーションしながら受けた。
生徒たちは活きの良いカサゴの稚魚に驚いたり感心したり、愛嬌を感じたりと反応は様々だったが、その中でもタグ打ちの説明に対しては強い興味を持ち、自らも行いたいと言う生徒が複数見られた。
見学と説明が終わると、生徒たちは横2列に広がり、バケツに入れられたカサゴの稚魚を、リレーで桟橋を経由して船に積み込む作業が行われた。
この日放流するカサゴの稚魚は3万尾で、そのうち1割に相当する3000尾にタグ打ちが施された。
カサゴのサイズは7~8㎝ほどで、愛知県から輸送されたものである。既に2万5000尾のカサゴは組合によって船に積み込まれていて、生徒たちは残りの5000尾を手際よく運び込んでいた。
いよいよ放流開始!願いの込められたカサゴが大海原へ…
積み込みが終了すると、説明を受けた生徒全員が救命道具を装着し、3クラスが3隻の釣り船にそれぞれ乗船。
予定時刻の10時に出港し羽田沖へと向かった。南の海上に発生した台風の影響で南風が強かったが、湾内とあって波はそれほど高くなく、そのお陰で陸よりも涼しく感じた。
走り出して約20分。生徒たちを載せた船は、我々報道陣を載せた船に続いて羽田国際空港の沖に到着すると、カサゴの稚魚は小型のバケツに移され、一斉に放流が開始された。願いの込められたカサゴたちが、次々と大海原に放たれていった。
生徒達の放流が終了すると、我々を載せた船は若洲沖を目指して移動。今度は日本釣振興会東京都支部のスタッフによるカサゴの放流が行われた。
場所は同支部でも釣り教室を開催している若洲海浜公園の正面で、その上には東京ゲートブリッヂがそびえている。
到着して間もなく、合図とともに報道陣がカメラを向けると手際よく放流が開始され、この日予定されていた全ての放流が無事終了となった。
若洲海浜公園ではあまりにも残暑が厳しいためか、釣り人の姿もちらほら見られたが、昨年よりもまばらな印象を受けた。
生徒たちが放流する光景は、まさに総合学習の目指すところであり、上空に次々と旅客機が飛びかう中で魚を放つということは、生徒たちを取り巻く海や自然に対する意識を高める上で、とても貴重な経験になったと感じた。