一般社団法人南紀串本観光協会の宇井晋介氏の連載「釣りで町おこし」。ここでは、釣りを通じた地域振興などについて話して頂きます。
連載第1回の記事はコチラ → 観光客10人に1人が釣り人!?串本町が行う「釣りを通じた地域振興」【釣りで町おこし】
連載第2回の記事はコチラ → 「釣り大会」で町おこし。串本で30年続く釣り大会、地域活性化に貢献【釣りで町おこし】
【第3回】プロジェクトのスタートは「釣りの学校」!
フィッシングタウン串本プロジェクトのスタートは、実は串本に「釣りの学校」を作りたいという夢から始まった。なぜそんな夢を持ったかという理由は全て当時作製した趣意書の中にある。
【趣意書(抜粋)】
「我が国における釣りはレジャー白書によれば1000万人以上もの人口をもつアウトドアスポーツの雄であり、日本は世界でも有数の釣り大国である。
バブル崩壊以降日本経済は低迷期に入り、それに伴って余暇を楽しむアウトドアスポーツなどの人口も減少を続けている。特にバブル期に絶頂を誇ったスキーなどは最盛期の3分の1以下にまで人口が減少している。
釣りは不況に強いレジャーと言われ好不況にあまり影響されない遊びと思われていたが、この釣りでさえも減少を続けている。しかしながらその減少幅はスキーなどと比べると緩やかで、現在は約1000万人前後の愛好者がいると考えられる。これは同じマリンスポーツであるダイビングなどと比較すると人口で約7倍以上であり、減少傾向にあるとはいえ裾野の広い遊び&スポーツであると言える」。
黒潮洗う串本町は昔から釣りのメッカとして全国に知られ、磯釣りや船釣り、防波堤の釣りなどあらゆる釣りが四季を通じて楽しめる場所である。
しかしながら、現在この釣りで潤っているのは渡船業者、沖釣り業者など船を使った遊漁を行う業者と餌屋、宿泊業、飲食店、コンビニなど一部の事業者であり、一般市民がこうした恩恵に直接預かっていると感じる事は少なく、「釣り人=ゴミ問題・マナーが悪い」などの印象がこの地でも先行しているのが現状である。
しかしながら、現状においても串本町への経済効果は決して小さくはない。
現在、串本町へ来町している釣り人は先に述べたように、多くが特定の釣りの愛好者であり、ある意味「玄人」である。
しかし、全国1000万人の釣り人全てが磯釣りや船釣りなどを愛好する玄人ではない。
ファミリーフィッシングを楽しむ家族連れなどの愛好家も多く、一方では彼らが釣りを楽しむ防波堤などは、規制がかかって立ち入り禁止となっている所が少なくない。こうした場所では転落事故なども起きており、それがさらに規制を強める結果となっている。
しかしながら、全国ではこうした場所を逆に釣り公園として整備し、観光資源として活かして成功している事例もあり、これが事故の防止やゴミの軽減などに繋がっているという好例もある。
釣り人口の減少は深刻。釣り場保全や釣り文化の継承が課題
一方、釣具業界は深刻な釣り人口の減少に直面している。釣り人口の減少の大きな原因は、他のレジャーと同じく景気の低迷や遊びの多様化、少子高齢化に伴う若者層の減少に起因するものであるが、釣り場の減少や釣り文化の世代間の途絶も大きな原因となっている。
すなわち、気軽に行ける防波堤などの規制が厳しくなり、家族で安心して楽しめる場所が少ないこと、また親から子、子から孫へという釣りの楽しみの継承がなされていない事である。
また、釣具業界では若者層はブラックバス釣りにその多くが流れ、長い間大きな収入の柱となっていたが、外来魚撲滅の流れの中でリリース禁止条例ができ、キャッチ&リリースを前提とするブラックバス釣り愛好者は大きく減少する事となった。このこともあり現在こうした釣り愛好者は海へ進出している。
今後も益々この傾向は強まると考えられ、こうした人たちに末永く楽しんでもらえるレジャーとして、基盤整備や釣り場保全に取り組む必要がある。
釣りは趣味の王様というほど愛好者が多く年齢層も広い。また、子供達の情操教育や環境教育、あるいは食育といった分野で釣りが果たせる役割は大きい。