内水面の釣り人口336万人、潜在的釣りファンは119万人
ウエブセミナーの最後はパネルディスカッションで締め括られた。その話題提供として水産技術研究所沿岸生態システム部副部長の中村智幸氏がこれまでのアンケート調査などで集計した数々のデータが紹介された。
見出しの内水面の釣り人口と、潜在的釣りファンの人数も中村氏が推計したものだ。海面と内水面の両方で釣りを楽しむ人もいるが、釣り界がイメージしているよりも内水面の釣り人口は多いのではないだろうか。
さらに内水面で釣りをしてみたい(実際はしていない)釣りファン予備軍が119万人いることに驚いてしまう。
中村氏曰く、内水面の釣りの潜在需要は思いのほか高いという。釣りをしたいという人がいなければ策を講じても好結果が得られないだけに、将来に希望が持てるデータである。
今回のセミナーでは漁協が直面している問題として組合員の減少と高齢化が取り上げられた。
斜陽産業の真っ只中にいる内水面漁協の仕事に興味を持ってもらえるのは、現実的に釣り人以外に考えづらい。釣り人を増やすことは遊漁料収入につながり、組合員候補も増えることになる。
「釣り人は簡単に増えない」というのは重々承知のことだが、釣りファン育成は釣り界が積極的に動くべき事業ではないだろうか。
漁協と釣り界が連携してどのようなことができるのか。
最近は釣り体験を目的とした初心者・ファミリーイベントも多いが、きっちりとサポートしてもらえる釣り教室が、参加者を募集してすぐに定員オーバーになったりもする。
また、個人レッスンを兼ねたガイドサービスや、レンタルタックルなども充実しているとはいえない。ワカサギ釣りのドーム船や、淡水小物釣りなどのように手軽に楽しめる釣り場環境整備も欠かせない施策ではないだろうか。
釣り業界・釣り人と連携した和歌山県の取り組み
漁協経営ウエブセミナーで各都道府県の内水面漁業協同組合連合会に期待する声が多かった。
記者の地元である和歌山県はアユの天然遡上には恵まれているものの、内水面漁場管理は遅れている。
ただ、同県内水面漁連は積極的に釣具業界や釣り人と連携し、釣りファン育成事業や釣り場環境整備、海外からの釣り人誘致にも取り組んでいる。
和歌山県内水面漁連主催の「わかやま友釣り塾」は、未経験者や初心者で真剣に友釣りを学びたいという人を対象にしたスパルタな釣り教室。大手釣具メーカーや地元の友釣り名手による全面バックアップで実施されている。
「やるぞ内水面漁業活性化事業」に採択された和歌山県のアマゴゾーニング管理では、令和になって貴志川、古座川、日置川、紀伊丹生川の4河川でルアー&フライ専用区(キャッチ&リリース区間)が設けられた。
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また、2~3年前からは、釣り人参加型のアマゴ発眼卵放流や親魚放流が行われるようになった。写真は昨年の秋、日釣振和歌山県支部と漁協の共催で有田川と紀伊丹生川で行われたアマゴの発眼卵放流と親魚放流の様子。