ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は世界経済にも大きな影響を与えている。もちろん、釣り具のビジネスも例外ではない。ロシアやウクライナでは日本の釣り具が人気で、貿易も盛んに行われてきた。
今回は以前から欧州各国との貿易を行っている(株)ささめ針(兵庫県丹波市)の営業部海外販売課の織田貴己課長に、ウクライナへの侵攻の影響について伺った。
首都キーウでフィッシングショー開催期間中、ロシアの侵攻開始
2022年2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した。ウクライナの各都市が戦場となり、多くの市民が犠牲になり、建物も破壊されるなど現地の凄惨な光景は、今も連日報道されている。
ウクライナの首都キーウ(キエフ)では、2月23~25日まで「フィッシング&ハンティングショー」が開催されていた。
このショーは毎年春と秋に開催されており、ウクライナで開催される主要なフィッシングショーという位置付けだ。日本の釣り具メーカーも代理店を通じて数多く出展している。来場者は主にウクライナ国内の業者や消費者(釣り人)で、展示だけでなく即売も行われるなど、非常に活気のあるショーだ。
ささめ針も懇意にしている代理店を通じて、このショーに出展していた。今年は日本から現地に行く事は見送ったが、毎年春の展示会にはささめ針の織田氏も現地を訪れ参加していたという。
ささめ針ではこの展示会に合わせて2月上旬に商品を現地の代理店に送っている。その代理店は織田氏が今年もウクライナに来ると思っており、2月中旬には「迎えに行くのでフライトナンバーを教えて欲しい」といったやりとりも行われていた。戦争になるかもしれないという危機感は全く感じられず、織田氏の方が驚いたという。
23日は通常通りショーが開催されて、お客さんも例年通りで盛況だったそうだ。そして24日の早朝にロシアの軍事侵攻が始まった。
当然、現地ではフィッシングショーどころではない。多くの出展社は、ブースの撤収作業等もまともに行えない状態で、急きょ自宅のある地域や避難先に向かったと思われる。
多くのウクライナ人にとって、ロシアによる侵攻が現実に起こるとは夢にも思っていなかったことが伺える。
「ウクライナの人々からすれば、ロシアの侵攻は日本人以上に『まさか』という事態だったようです。我々日本人の方が『戦争になるかもしれない』と危機感を感じていたようです。
ウクライナの代理店とは今も連絡は取れるのですが、本人や家族の安否確認を行うことしか出来ません。地下シェルターに避難しており、戦争に参加する事を考えていると話しています。とてもビジネスの話が出来る状況ではありません」と織田氏は語る。
釣りが盛んなウクライナ。日本製品も人気、今後も期待の市場だったが…
ウクライナの人口は約4400万人と欧州では人口の多い国だ。今でもソ連製の車が往来するなど、平均所得が高い国ではない。釣りは盛んな国で数多くの釣具が流通している。
同国には「FAVORITE」という世界的な釣竿のメーカーもあり、ウクライナ国内でも人気のあるメーカーだ。
日本の釣り具は高級品となる場合が多いが、人気は高い。キーウなど都市部にある釣具店には、日本製の釣り具が数多く陳列されている。釣針等もショーケースに入っている事が多い。
地方に行くと個人経営の小規模な店舗も多く、釣針もバラ売りがされているなど、昔の日本の釣具店の雰囲気を感じさせるそうだ。どこの国でも釣りはお金を掛けて楽しむ方法もあるが、あまりお金を掛けなくても楽しめるレジャーだ。
ささめ針では、ウクライナへは淡水の小物釣り関係の商品を多く輸出している。現地では淡水の小物釣りや、ジグヘッドを使った釣りやカープフィッシングも盛んだそうだ。