和歌山県有田市は海岸線エリアにある5つの地域資源に磨きをかけ、観光振興に取り組んでいる。
その「西海岸5つ星プロジェクト」の中の一つが紀伊水道に浮かぶ無人島・地ノ島のレジャー開発だ。
無人島といっても初島漁港(和歌山県有田市)から渡船を利用して片道7分。しかもJR紀勢本線「初島駅」から徒歩圏内に港と渡船店がある好立地だ。
地ノ島の沖側にはもう一つ沖ノ島という無人島があり、この2つの島周辺は磯釣り、投げ釣り、船釣り場として関西の釣り人から親しまれてきた。
また、地ノ島にある長さ400mの砂浜は海水浴場として夏場に賑わいを見せる。
そしてここ数年、釣りと海水浴客以外にも、手軽な無人島キャンプ場として脚光を浴び始めた。
自治体が推し進める無人島開発計画に合致したのが地ノ島を中心に無人島で楽しめるレジャーを企画&サポートする「無人島プロジェクト」だ。
離島の環境を活かして地域活性化、自治体、渡船店、運営企画会社がタッグ
この事業母体は東京に本社がある(株)ジョブライブという企業で、「やりたい!」と思える働き方を提案している。
「仕事と生きること」、社名がストレートに業務内容を表し、初島では無人島を活用したツアーを企画し、SNSやユーチューブで情報を発信している。
無人島といえばサバイバルや釣りを含めた海のレジャーというイメージが強いが、それだけにこだわらない柔軟な発想も新たな利用者の参加を促している。
ここ数年のキャンプブームで団体予約ができなかったり、大音量の音楽を禁止にしているキャンプ場が増えている中で、地ノ島では離島の環境を活かして音楽フェスを企画したり、まだそれほど多くはないが社内研修として利用する企業もある。
2020年11月に開催されたローソンフェス「星降る無人島CAMP FESTA」は出演したアーティストとファンの双方から好評を得た。
無人島プロジェクトが地ノ島のレジャー開発に参加して今年で4年目。その利用者の推移は順調で、令和元年、2年は1シーズン(4―11月)の利用が約7000人となった。
ハイシーズンには1日200人以上が上陸!
2020年のGWを挟んだ春の行楽シーズンは新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言で営業できなかったが、秋のシルバーウイークには1日200人を超える利用者も記録した。
地ノ島のキャンプ場は船着き場がある広い砂浜がメインフィールドになるが、地ノ島と沖ノ島にある数カ所の小さな浜もプライベートゾーンとして上手く活用している。
特に昨年はコロナ禍で密を避けられるプライベートビーチを貸し切りにできるサバイバルプランの需要が高まり、大学生のサークルを中心に1シーズン74組(407名)が利用した。
これまでも人気釣り場であった初島が自治体のバックアップとキャンプブームでさらに盛り上がりを見せている。
自治体と渡船店、そしてキャンプ場&イベント運営企画会社の3者がそれぞれの役割を果たし、地域活性化に貢献している。
無人島は釣りファン予備軍の宝島
無人島プロジェクトのメンバーは釣りを大切な観光資源の一つとして捉えている。
昨年、今年と(公財)日本釣振興会和歌山県支部のヒラメ稚魚放流にも積極的に参加してくれた。
島を訪れるキャンパーが釣りを楽しむ割合を聞くと、ほとんどのグループが釣りを楽しみ、レンタル釣り竿を利用する人も多いという。ただ、総体的にはビギナーが多く、思うように釣果を上げている人が少ないというのが現状だ。
日本釣振興会和歌山県支部の役員を務め、釣りを普及させていく立場にある記者の目には、地ノ島は釣りファン予備軍が大挙として訪れる宝島のように映る。
と同時に、無人島プロジェクトのスタッフに釣りインストラクターとしてのスキルを高めてもらい、ビギナーに釣りの楽しさを伝える存在になってほしいと感じた。
地元の日釣振支部としてもこの無人島で多くの方が楽しめる釣り体験企画を考えていきたい。
無人島プロジェクトのリーダー浅見さん。有田市の魅力に惹かれIターン移住
無人島で非日常のドラマをプロデュースする「無人島プロジェクト」のリーダー、浅見梓さん。
10年間勤めてきた東京都内のアクセサリー販売会社を退職。知人の紹介でこの仕事(ジョブライブ)を知り、昨年9月のシルバーウィークに職業体験として有田市(地ノ島)を訪れた。
そして浅見さんはこの仕事に就こうと自分の意志で有田市民となった。業務内容だけでなく、ふれあった地域の方々の人の好さ、温暖な気候、美しい海と夕日を目の当たりにしてのIターン移住だ。
浅見さんに地ノ島のアクティビティとしての釣りへの思いを聞くと、「釣りは命をいただく、ということを身近に感じられます。装備をグレードアップすることで狙える相手も変わり、RPG(ロールプレイングゲーム)をリアルに体験できるアクティビティですよね。島を訪れたお客様は釣りを楽しまれる方が多く、魚を釣り上げることで満足度が高まると思います。だから私も釣りにどんどんのめり込んで、説得力のある案内ができるようになりたいです。海辺ならではの浴衣で金魚すくいならぬ魚釣りなども企画したいです」と、釣りへの熱い思いを語ってくれた。
・無人島プロジェクト地ノ島 現地スタッフ直通ダイアル (TEL:080-9655-9443) ※対応9時~18時まで
詳細はホームページにて https://jinoshima.mujinto.jp/
地ノ島、沖ノ島の渡し船は「南村渡船」
地ノ島、沖ノ島への渡し船の船長は、南村渡船の若旦那、南村貴富さん。
父の篤さんも現役船頭で、船宿として磯釣り、投げ釣り、仕立て船、レンタル船の窓口になっている。釣りエサも販売し、初島の釣りのことなら何でもおまかせの案内所となっている。
貴富さんに初島周辺の釣りの傾向を聞くと、エギングやタイラバなども含めて、ルアーフィッシングスタイルの釣り人が半数近くまで増えてきたそうだ。
キャスティングでは青物が狙え、磯釣りや投げ釣りで通う人もまだまだ多いという。
無人島のキャンプは年々人気が高まり、昨年は北海道から沖縄まで、全国各地からたくさんの方が初島を訪れた。自然の中の遊びは危険と隣り合わせ。海のことを知り尽くした南村渡船があるからこそ、無人島プロジェクトも安心して運営できているといえるだろう。
釣りだけではない渡船店の新しいビジネスモデルとして、初島の取り組みは今後注目されそうだ。
南村渡船 (TEL:0737-83-3730)
渡船料金(往復):釣り・4000円/宿泊キャンプ・3000円/海水浴・日帰りキャンプ・2000円(※小学生以下は半額) https://minnaga.com/minamimura/
【提供:日釣振和歌山県支部・岸裕之、編集:釣具新聞】
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