ベテラン釣り記者の竹村勝則(たけむらかつのり)氏が「昔と今の釣り」について思うままに語る、「釣り記者の回顧録」。
今回は、昭和中期まで琵琶湖でよく釣れていた「ホンモロコ」について語ってもらいました。
春の子持ちモロコは高級魚。昭和中期までは人気の釣りだった!?
日本一の湖、琵琶湖は淡水魚の宝庫。アユ、ホンモロコ、ビワマス、フナ、コイ、ブラックバス、ブルーギルほか琵琶湖固有種がたくさんいる。
その中で釣り人の人気の魚と言えば、アユ、ホンモロコ、フナ、コイ、ブラックバス、ビワマスといったところでしょうか。
中でも琵琶湖名産というと、昔からアユ、ホンモロコでしょう。
春から夏にかけて、湖岸や川へ遡上してくる大量のコアユは昔も今もよく釣れるので、家族連れにも人気で、釣ったコアユは地元では各家庭で甘露煮にするが、その味付けは各家庭の味です。
一方、ホンモロコはコアユと違ってほぼ年中釣れるのですが、珍重されるのが春の子持ちモロコです。
子持ちモロコシーズンはまだ骨も柔らかく、甘露煮にしても頭から食べられる。また、素焼きにしても美味しく食べられる。
春の子持ちモロコは卸値でキロ3000円もする高級魚です。
冬場に深場にいたホンモロコは、水ぬるむ春になると、産卵のために岸に接近し、幾重にもはられた小糸網をすり抜けて小川や田圃の水路にまで入ってきます。
昭和の中期までは、とにく湖東でよく釣れ、京都からモロコ釣りバスが出たぐらいです。
ホンモロコ釣りは、4.5mぐらいののべ竿で、小さなモロコ針に、エサは赤虫を付け、ウキ釣りをするのがセオリー。
ウキがチョンチョン、スーッと入るホンモロコ独特のアタリで、10㎝から15㎝ぐらいのホンモロコが釣れる。春の風物詩的な味わいのある釣りです。
昭和後期からは減少したホンモロコ。近年は復活の兆しが…
そのホンモロコが、昭和の後期からしだいに釣れなくなり、釣りマスコミにも取り上げられなくなりました。
ホンモロコが釣れなくなった原因は定かではありませんが、琵琶湖の水質、環境などの変化と外来魚のせいでしょうか。
忘れられた釣りになりそうなホンモロコ釣りでしたが、水産試験場で聞いた話では、平成2年からホンモロコの稚魚を南湖へ300~500万尾放流。
平成20年からホンモロコの発眼卵も放流。最近は水田放流(昨年は1億100万尾)をメインに行っているということで、ホンモロコが増えてきたのは確かです。
湖東の大同川や長命寺川などでもよく釣れるようになり、釣り人が多くなりました。
大同川は川幅が広い場所なので、ホンモロコを釣るには似合わないリール竿を使ってのブッ込み釣りをする人が多いですが、アシの際や、川の上流ではのべ竿でのウキ釣りで釣れます。
春、地元の釣友に案内してもらって、伊庭内湖に流れ込む大同川へ行き、4.5mのハエ竿で久しぶりにホンモロコ釣りを楽しみました。
まだ、昔ほどではないにしろ、湖畔で多くの人がホンモロコ釣りをするようになっているのを見ると、琵琶湖のホンモロコ復活と言えそうです。
(了)
竹村勝則氏のプロフィール
竹村勝則(たけむらかつのり)
昭和16年生まれ。
月刊雑誌「釣の友」(釣の友社)編集長を経て、週刊「釣場速報」の編集長(名光通信社)等を歴任。
釣りの記者歴だけでも軽く50年を超え、今でも釣行回数は年間120日以上!
国内で最も古い時代から活躍する釣り記者の1人だ。